祝・北海道新幹線開通!~井門、奥津軽いまべつへ行く~|旅人:井門宗之
2016-04-15
♪うぇるかむばっくとぅ~まいほーむたうん~
♪うぇるかむばっくとぅ~まいほーむたうん~
脳内でGLAYの新曲が何度も何度もループする。
エメラルドグリーンの車体が残雪の北国を疾走する映像が脳内に映される。
2010年12月4日に東北新幹線は八戸から新青森まで延伸された。
翌年には東日本大震災もあり新幹線の営業が止まった時期もあったが、およそ5年3カ月後。
ついに、ついに、新幹線が青函トンネルを抜けて北海道まで走る日がやってきたのだ。
――2016年3月26日北海道新幹線開業。
今回はこの晴れの日にFM青森の新幹線開業特番にも呼んで頂きつつ、
折角なのでKIKI-TABIでも新幹線開業で盛り上がろう、と(笑)
そもそもこの番組はかつて「3人の鉄っちゃん」が始めたもの。
最近は鉄分が随分と薄めだったので、
ここは原点に立ち返って新幹線開業を取材しようと、そうなったのであります。
思い返せば5年前の2011年、
同じ様に新青森まで伸びた新幹線の取材で青森を訪れた我々。
あの時の高揚感よ、再び!!という事で…、
なんと、
なんと、
なんと(うるさいって)、開業当日の新幹線にまで乗っちゃいました!!
(FM青森の特番に乗っちゃって!←いや、だから)
我々が乗ったのは「はやぶさ1号」。
そうです、東京発⇒新函館北斗駅行きの第1便なのです。
チケットはわずか30秒で売り切れたという話題のアレですね。
そのチケットが指し示す行き先は「奥津軽いまべつ駅」、新幹線の新駅です。
開業当日という事もあり、新幹線のホームは多くの撮り鉄、乗り鉄で溢れています。
今まではこの駅が終点だった新幹線が、今日初めてここから北へと向かうのです。
行き先を示す電光掲示板も良いじゃないですか。
輝くその行く先は「新函館北斗」。その文字を見て道産子井門は胸が熱くなります。
1988年に完成した青函トンネル。
しかしその事業の最初に当たる地質調査は、何と1946年に始まったと言います。
津軽海峡に海底トンネルを通す…。
昭和を代表する難工事がここに着手されました。
当然、いつか新幹線を通すという計画はありましたが、
その想いが青函トンネル開通から28年後についに結実したのです!
新青森の駅にスーッと到着する「北海道」新幹線。
ホームに溢れる人とマスコミは、その車体がここで終わらない事を知っています。
目の前に開け放たれたドア。
“今日から、ここから先へと向かうんだ。さぁ、乗って!”と新幹線が語りかける。
指定席に座り、いざ奥津軽いまべつ駅へ、出発!
車内はもう、カメラを抱えた鉄道ファンが通路を行ったり来たりで落ち着かない(笑)
速度を感じさせない安定した車内で、静かに車掌のアナウンスが流れます。
そのアナウンスはまるで「作家でも付いているのか!?」という程に情感たっぷり。
BGMにミスターロンリーを流せば、さながら新幹線版のジェットストリームではないか!
確かに“何かの開業日”に電車に乗った事がないから分からなかったけど、
“はじまりの日”にその1番電車に乗れているのって、よく考えたら凄い。
横を見ると特に鉄っちゃんでも無いゴルッチが感動している…。
まさに人の熱量が周りの心を動かす瞬間だった。
車掌「間もなく、奥津軽いまべつ~」
えっ!?
もう着いたの??
そうなのです。車で行けば新青森から今別までは大体1時間~1時間半はかかりますが、
新幹線で行けばわずか約15分で着いてしまうのです!
奥津軽いまべつ駅のホームはそれこそ大人が2人すれ違える位のサイズ感。
新幹線のホームとしてはかなり狭いと思います。
ところが流石は新幹線開業日。ここに地元の子供達や町の方々が並んで、
小旗を新幹線に向かってフリフリしている。
そりゃそうだ、地元の方にとっては新幹線の駅が出来た事も喜ばしいと思いますが、
ここが本州最北端の新幹線の駅になるわけですから。特別な気持ちもあるでしょう。
駅の改札付近では伝統芸能の荒馬の演舞が行われ、
駅前では地元の特産品を使った振舞いの食べ物やよさこい踊り等も披露されている。
役場の方が冗談交じりに「今別にこんなに人が集まったのは初めて(笑)」と仰る程。
新幹線の新駅が出来たこの今別町(いまべつちょうじゃなくて、いまべつまちね)には、
一体どんな特産品があるのか??
まず我々は「道の駅いまべつ 半島プラザ アスクル」へとお邪魔しました。
お話しは、道の駅いまべつ 半島プラザ アスクルの駅長:山田基さん。
新幹線の駅の開業日だけあって相当な混雑ぶり、
山田さんも道の駅の駅長ながら、先頭に立ってお客さんの対応をされている。
山田「いやぁ、今日は朝からこんな感じですよ(笑)
今別の特産ですか??海産物は特にそうですね。
この辺は昆布の産地ですから、昆布、布海苔、ワカメも良いですね。
魚介ならヤリイカやサクラマスも美味しいですよ!
あとね、この辺りは山菜の宝庫!
タケノコもそろそろでしょうし、フキなんかも美味しいですよね。
海の幸と山の幸の両方が楽しめるのが今別の良い所です。」
自然と共生しながら、その恵みを頂く。
今別ではそんな自然の恩恵をお腹一杯に受ける事が出来るのです!
山田「お祭だと荒馬(あらま)も今別を代表するものですね。
地元の三地区で行われるんですけど、 それぞれ特徴があります。」
ちょうど改札前でも行われていたのだが、
男女がペアになって女性が馬を操る側、男性が馬側になり一緒に踊るというもの。
荒馬は神事として町では古くから親しまれているのです。
この荒馬に関しては後ほど別の場所に向かうとして…。
流石は新幹線開業日、アスクルの外では美味しそうな特産品のブースが並んでいました。
そのいくつかで、ちょっとだけ買い食い(うしししし)
◎麺にももずくが練り込んである「もずくうどん」!
なんせ食感がちゅるんちゅるんで、喉越しが良くて美味しい!!
地元で飼育しているという猪を使った、
「イノシシの串焼き」と「イノシシのフランクフルト」。
これもイノシシ特有の臭みも無く、非常に美味しいのです!
フランクフルトなんかは齧りついた瞬間に「ぱーん!」と肉汁が溢れだす始末。
今別町の特産品ですっかりお腹も満たした我々が次に向かったのは、
青函トンネル入口広場。
展望台も完備されたこちらは開業日という事もあり、
本当に多くの鉄ちゃん達が集まってきていた。
青函トンネル入口広場とはまさに読んで字のごとく、
青森側に設けられた青函トンネルの入口前の広場の事であります。
割と広いスペースで(「広場」なんだから当たり前か)、遠くは海も見渡せる場所。
鉄ちゃんもそうなんですが、上空にはヘリも飛んでいて、開業日である事を改めて納得です。
ゴル「ここで待っていれば、
函館に向かう新幹線や北海道から来る新幹線が目の前を通るんですね。」
親分「これだけ近いから随分な迫力だろうね。」
井門P「だって多分、この柵から新幹線の線路まで20m位しかないんじゃない?
迫力って言うか、音もそうだけど風も凄そう…。ほら、ビューンでしょ!?」
橋本「これは映像もしっかり撮らなきゃですね…。
えっと、これから来るのは青森側からですか?それとも北海道側からですか?(キリッ)」
我らが映像班のチーフカメラマン(実質一人)橋本君が、
いつになくキリッとした表情でそんな事を聞いてくる…。
僕らは心の中で「橋本君、成長したねぇ…。」と呟いていた。
橋本「えっとあっちから来るから、こうカメラをパンッとすぐに向けないと…。
北海道側から来るって事は、えっと…。ぶつぶつぶつ。」
そんなこんなで間も無く北海道側から新幹線がトンネルを抜けてくる時間。
チーフはまず線路を背に、反対側にいる僕にカメラを向け、キューを出す。
井門P「いま僕は青函トンネル広場の前にいるんですが、
まさにこれから北海道新幹線が目の前を通過する時刻となりました。
この広場から線路までの距離はおよそ20mくらいでしょうか?
この距離で北海道新幹線が目の前を通過するのですから、
かな…あっ!」
ゴル「きたっ!」
チーフ「えっ?あっ!(急いでカメラを反対に向ry
シューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!
ちょっ!あーー!!!!!」
チーフカメラマン橋本。
痛 恨 の 撮 影 ミ ス ! !
ゴル「だからさ、なんでそんな直前に撮影始めちゃうの?
俺なんて来た瞬間に分かったから、すぐにマイク向けたもん。」
親分「橋本君、練習してた意味ねぇじゃん!」
井門P「ちゃんと動画にお詫びのテロップ入れなさいよ!」
チーフ「ちっきしょーーーーー!!!!!」
それにしても目の前を新幹線が通過するにしてはあまり音もしなかったなぁ…。
ひょっとするとこの区間は速度制限がかかっているのかもしれません。
もしくはたまたま僕らが居た時がそうだったのか…。
とにもかくにも、目の前を北海道新幹線が通過するのは拝めたわけで(笑)
北海道から青函トンネルを通ってきた新幹線が、、、 | 奥津軽いまべつ駅へと向かいます! |
続いては津軽半島で最も歴史のある浄土宗のお寺、始覚山本覚寺へ。
御住職:工藤貞導さんのお話しがまた面白くて(笑)
かつて太宰治が訪れた時のエピソードや、新幹線への想いをお話しして頂きました。
津軽半島でもっとも古いといわれる浄土宗のお寺、本覚寺 |
第五世住職貞伝上人は、地域の産業振興にも尽くした人物 |
太宰治の自伝的小説『津軽』に登場します |
旅の最後は荒馬(あらま)の里資料館へ。
館長で大平川荒馬保存会の会長嶋中卓爾さんに、
荒馬に関する色々を教えて頂きました。
こちらの荒馬の里資料館は閉校になってしまった小学校を使用して、
荒馬に関する様々な資料を展示する場所。
中には喫茶スペースもあり、地元の方々の憩いの場にもなっています。
嶋中「そもそも荒馬って言うのは農耕馬の事を指します。
荒馬の踊りはその三つの姿を表していて、
馬屋から田畑に向かう姿、田畑を耕す姿、最後は田畑から馬屋に帰る姿の三つです。
男女が一組になって踊るので、ここから結婚していったのも数多くいますよ(笑)」
どうやら西の出雲に東の荒馬と言って、縁結びの神事とも呼ばれているとか…。
しかも毎年この荒馬に各地から大学生が参加しにやってきて、
その学生の中からもこれまでに12~13組が結ばれていったとか…。
嶋中「この踊りは男性が馬の役、女性が手綱を引く役だから、
今別の男はずっと女性に手綱を握られっぱなしなんだわ(笑)」
朗らかに笑う嶋中さんも荒馬がきっかけで結婚されたんですか?と聞くと、
私は笛を吹く役だから違うけどね、と仰る。
この取材ではその嶋中さんの見事な笛も聞く事が出来ました!
ちょうど荒馬の練習があるという事で、練習場にお邪魔。
男女のペアとなり、太鼓と笛のリズムに合わせて激しく踊ります |
奥津軽いまべつ駅で出迎えてくれた「荒馬踊り」 |
踊り手の男性のお子さんでしょうね、まだウチの子と変わらない位の大きさで、
既に自分用の踊りの飾りを持って大人の輪の中で一生懸命踊ってるの(笑)
それがとっても可愛くて、あぁ、こうやって幼い内から伝統が身体に入っていくんだなぁと。
そう言えばちょっと気になっていたのですが、
荒馬の組ってどうやって決めるんですか??
嶋中「地元の青年団がいるんだけどさ、
そこの青年達が気にいった女の子を選んで、申し込むのさ(笑)」
その申し込み方を聞くのを失念した事が悔やまれる…。
「俺、お前に手綱を握って欲しいんだ!」とか、
「お前じゃなくちゃ、俺を操れないからさ…。」とか、
8月のお祭の前はある意味、色んな熱気で包まれるんだろうなぁ。良いなぁ(違うだろ)。
毎年8月4日~7日にかけて行われる「荒馬まつり」。
新幹線の駅開業で行き易くなった今別町で、伝統のお祭に触れてみてはいかがでしょう?
人口およそ2800人「日本一小さい新幹線の町」として、
2016年3月26日から今別町の新たな歴史が始まりました。
ここは本州最北端の駅でもあり、北海道からの玄関口でもあります。
北海道から新幹線に乗ってきた人たちが、初めて目にする本州。
その場所が豊かな自然に恵まれた今別町というのも、何か必然を感じてしまいます。
自分も北海道の人間ですが、
北海道の自然と青森の自然は全く違うものに感じました。
あっ、勿論専門家では無いので“ここが違う!”と断言出来ないのですが、
なにか…少しだけ違うんです。上手く説明出来ないけど。
でもその“何か”が旅情を増してくれました。
北海道とは違う豊かな自然に囲まれた今別町。
新幹線の駅が出来た、まさに“これからの町”です。
確かに新幹線は移動速度を早くし、時間を短縮してくれました。
だからこそ、その分の時間を「町を知る時間」にしてみてはいかがでしょう?
全長およそ53.85kmの青函トンネル。
その先にも手前にも、きっと今まで見た事も感じた事も無いものが広がっている筈です。