ぷらっと、夏の筑波山登山…。|旅人:松田悟志
2016-08-17
みなさん、こんにちは。
今回はじめて旅をさせていただきました、松田悟志です。
旅の行き先は茨城県、筑波山。関東地方に住む僕らにとってはとても耳馴染みのある、でもなかなか登ったことまではないかもしれないねという、東京都で言えば高尾山と居並ぶほどシティ型の名山です。
高尾山とちがうところといえば、なんと言っても「日本百名山」にその名を連ねているところ。そして、その日本百名山の中でもっとも標高が低い山としても知られる筑波山に、今回僕は「旅」をしてきました。
スタートは秋葉原駅。スタッフのみなさんともここで待ち合わせ。はじめて一緒に仕事をさせていただく時というのは「どんなスタッフの方たちなんだろうか」「どんな雰囲気で進行して行くんだろうか」とね、何かと不安がつきまとうものですが、そんなものは会って2秒で吹き飛びました笑
「あ、この人たちと一緒に作ってくならきっと大丈夫だな♪」
照れくさそうに頭をかき「僕たち文化系なんです」と笑うスタッフのみなさんと軽く打ち合わせをしつつオープニングを録り終え、早速つくばエクスプレスに乗り込みました。
「何分くらい乗るんですか?」
「つくばまでなんで、45分くらいですかね」
「え、本当に近いんですね」
秋葉原駅から約45分かけてつくば駅に到着。そこからさらに40分ほどバスに揺られて、着いたのは筑波山神社。バスを降りて振り返ると、もうすでに少し標高が高い。聞くと約300メートルということでした。
「標高877メートルで、登山口がすでに300メートルの高さにあるってことは、そんなには登らないんですね」と僕。 話しかけた先には筑波山観光ボランティアガイドの宮本通代さん。今回の旅で筑波山のことを根掘り葉掘り教えてくださる、もと教師の凄腕ガイドさんです。
「そうなの。しかもここからケーブルカーですからね、今日はぜ~んぜん登らなくて大丈夫♪」
「えっ!そうなんですか笑」
ということで、「登山」というよりも、もっと「筑波山を知ること」に重きを置いた今回のキキタビが本格的にスタートするのです。
境内に入ると、何やら橋がかかっている。
「この橋は徳川某が1630年に~」と、さっそく宮本さんのご解説がはじまります。
「復元された部分もありますが、これなんかはほとんど作られた当時のまま残されているんですよ。年に一度、お祭りの時にはこの柵が取り払われて私たちも渡ることができるんです。それでね~」
朗々と、まさに水の流るるが如く展開して行く宮本さんの解説を「現物を見ながら聴く」という、とても厚みのある時間。
そろそろ本殿の方に行こうということで階段を登ると、そこには印象的なイデタチのおじさんたちがたくさんいらっしゃいました。新手のアイドルグループに違いないと近づいてみると、なんと「陣中膏 ガマの油」と書いた幟が。そうなんです。「ガマの油口上」の保存会のみなさんが実際に演技を見せてくださる催しだったんですよ。
「ちょっと聴いて行きますか」と宮本さん。
「ぜひお願いします」と僕。
都合15分くらいの口上だったのですが、見事にと言いますか、終わった時にはみんな「ガマの油」を買いたくなっておりました笑
「すごいことですよね笑。 僕、すぐ買おうと思って100文って今だったら一体いくらにあたるんだろってめっちゃ考えてましたもん!」というのは本当のことで、まさにこれさえ塗れば何でも治りそうだなぁと言う気持ちになったままその場を後にしました笑。
続いては拝殿。そしてその周りのいくつかの建物を見て周りながら宮本さんに解説をいただく。本当に物知りというか博識というか、細かな年号から同じような人名(8割くらい徳川家の方でしたので笑)まで、ほんとに緻密な知識に裏付けされた解説で、内容ももちろん興味深かったのですが、それより先に、
「よく知ってますねー!笑」
と感嘆の言葉が出てしまったくらい、本当に素晴らしいご解説でした。
ということでいよいよケーブルカーに乗り込み、御幸ヶ原へ。到着すると広いテーブル状の広場にお土産屋さんや食べ物屋さんがずらりと並んでいました。
「あ、ハイヒールの人がいる」
「そうなの。ここまでは街場の格好のままで来れちゃうのよね、階段とケーブルカーだから。でもここから2つの峰、男体山、女体山への各道のりは、しっかり登山道ですから」
この御幸ヶ原で標高800メートル。なので、残すは77メートルです。本当に気軽に来られる山というか、赤ちゃんを抱っこしたお母さんや、幼い子供やおじいちゃんやおばあちゃん。普段、険しい登山道ではなかなか出会う機会の少ない世代の人たちがみんな笑顔で和気藹々と登っている姿を見て、
「きっとこれが筑波山の一番の魅力なんだろうなぁ」
と、なんとなくそんな風に思いました。
僕は日頃から登山を楽しんでいますのでいろいろな山を見ていますし、それこそ厳寒期の氷ガチガチの山に「アイゼン履いてピッケル持って」なんてこともしてきましたが、そういう山の魅力とはまた全然ちがうところにある楽しみというか、少なくとも今まで登って来たすべての山の中で、もっともたくさんの「笑顔に出会った山」だったんですよね。そのことは本当に印象的でした。
ランチタイムは御幸ヶ原にずらりと並ぶお店の中の一軒で名物「つくばうどん」をいただき、食後は「見せたいものがあるの」という宮本さんに連れられて、とある脇道へ。
「この奥に男女川(みなのがわ)の源流っていうのがあるんだけど、本当に見せたいのはそれじゃなくてね…あ、見てみて!これ何かわかる?ブナよ、ブナ!」
「おぉ、これが見せたかったものですか(遠い目)」
「これじゃ、ないんだけどね」
「あ、ちがうんですか笑」
「でもこれもすごいでしょ。ふつうは標高1000メートルくらいから生え出す野生のブナが、このあたりは ~中略~ だからみんなで守って行こうっていう取り組みをしていて、でも不思議なことにね、若木がつかないんですよ。なぜだかわかる?それは ~中略~ だからかたくりのね、時期に来なさい!」
「はい!」
少し歩くと…
「うわ!なんですかこれ~!!」
「驚いたでしょ笑」
「驚きますよねこれは、唐突ですし」
「これは『紫峰杉』というんだけど、そもそも『紫峰』とは時間によって刻々とその姿を変える筑波山の ~中略~ でもあの枝なんて本当に『トトロがいるんじゃないかしら♪』っておも ~中略~ だからガイドのお客さんにもいつもこれを観てもらうようにしてるのよ」
「たしかに」
と、完全に宮本さんのパワーに押され気味の僕ですが笑、この紫峰杉は本当に感激しましたよ。僕らの声でどこまでお伝えできたかわからないですが、実際の姿はもう本当に言葉に尽くしがたい不思議なものでした。
そして、筑波山にふたつある峰のひとつ、女体山の山頂へ。まさに関東平野を一望できるその絶景に驚きの声を上げながら、登山は無事終了。
帰りは女体山の峰から少し下りた地点にあるロープウェイ乗り場から、麓のバス停へと降りました。そこでエンディングを収録したら、打ち合わせたようにバスがやって来ました。
「混むと降りられなくなっちゃうからね笑」
と、途中の筑波山神社前のバス停で降りる宮本さんとはここでお別れすることに。最後に一旦バスを降りて一緒に写真を撮っていただきました。
パシャり。
「またプライベートでも来てくださいね」
「はい、本当に」
「ここは山にはじめて登る人でも受け入れてくれるし、1年中どんな季節でも来られますから。紅葉の時期なんていうのも本当に素敵で、その頃にはあそこの売店さんの前の楓が綺麗に色づいてそれはもう!それに春は春でね、カタクリがもう斜面一面を~」
と、最後のおわかれの瞬間まで本当に筑波山の魅力を語り尽くしてくださった宮本通代さんでした笑
「山」と構えることなく取り組める優しさを持ち、関東平野にそびえる単独峰としてのパノラマ眺望も楽しむことができる。都心からこんなにも近くて、来る人を笑顔で迎えてくれる。そんな今回の筑波山の旅、本当に思い出深いものになりました。お聴きいただいたみなさん、ありがとうございました!
ということで、お送りしたのは松田悟志でした。 またまた!