ウルトラマンがいる商店街、東京・祖師ヶ谷大蔵|旅人:井門宗之

2016-10-13

 

ウルトラマンシリーズの放送が始まってから50年。

子供の頃の写真を見ると、1枚くらいはありませんか?

そうです!スペシウム光線ポーズの写真が、です!()

僕の記憶のウルトラヒーローは「ウルトラマンタロウ」が最も鮮明なんだけど、

息子がハマったウルトラマンギンガに ウルトラマンタロウ が出てきた時は

感動で打ち震えたもんです。

何よりも今でも子供の心を掴むウルトラマンの底知れぬ凄さ!

3分しか地球にいられないのに、そのインパクトは何十年も続くんだから!

 

実は東京にウルトラマンの街、いや、ここは「町」と呼びたい、

ウルトラマンの町が存在します。

その町の名は…祖師谷大蔵…えぇ、えぇ、私の地元でございます。

今回のロケは井門の地元感も多めに味わって頂きつつ()

ウルトラマンの町をしっかり堪能していただきましょう~!!シュワッチ!!






©円谷プロ

 

 



まずは祖師谷大蔵という場所のお話から。

小田急線の千歳船橋駅と成城学園前駅に挟まれた住宅街が祖師谷大蔵であり、

日大商学部キャンパスや東宝スタジオ、またTMCなどのスタジオもほど近く。

また環八と世田谷通りも近いエリアなのでちょっとすると交通量も多そう…。

しかし、しかしであります!!

文字面だけで見ると確かに都会な感じもするのですが、

駅を降りてみると何とも言えないのんびりした空気が流れているのです。

実際に暮らしていても意外と知らない祖師谷のあれやこれや。

まずは「祖師谷商店街振興組合」の理事長にお話を伺いに!

あっ、この呉服屋さん知ってる!!えっ!?この看板の顔写真の方が理事長!?

という心の声もダダ漏れしそうな程の地元感を携えて()

お話しは石川征男さんです。

 

石川さんはまず僕らに長~い商店街の地図を見せてくださいました。

僕もよく商店街を抜けてランニングするのですが、祖師谷の商店街は何せ長い。

聞けば平成17年に3つの商店街が1つになり「ウルトラマン商店街」を名乗る様になったとか。

 

 

石川「もともとは世田谷区の持ちかけなんですけどね。

何か商店街の目玉となる事はないだろうかって。」

 

そこで考え出されたのが「ウルトラマンで町興し」なのであります。

元々円谷プロが砧にあった事、そして円谷英二さんの自宅も祖師谷にあった事にちなみ、

この町を「ウルトラマンの町」として広めていこうと。

駅前の広場にウルトラマン像を建立(もうね、建立って言っちゃう)、

カラータイマー部分を押すとウルトラマンの歌が流れるオブジェも建立(もう建立って言う)、

商店街の街路灯もどうせならってんでウルトラマンのデザインで建立(もう建立っry)!

 




 

©円谷プロ

 

 



町のあちこちにウルトラマンを配し、とにかく話題作りを続けてきたのです。

するといつの間にか全国各地からウルトラマンファンが続々と…。

 

 

石川「駅前でよくウルトラマンが来てイベントをやるんですが、

地元の方が3割で後は違う町から来る方ばかりなんですよ!」

 

 

え~~!!!!

知らなかった…てっきり地元民の為のイベントかと思いきや…って、そりゃそうです。

世界中で人気のウルトラマンのイベントですもの。そりゃ人、集まるって()

でもだからこそウルトラマンには感謝しかないと。

ウルトラマンのお陰で「一地方の商店街」だったのがこれだけ有名になったわけで。

沢山の見所があるんですが、やっぱり見て欲しいのは「遊び心」かなと。

石川さんのお話を伺いながら、

沢山の方の「情熱」と「遊び心」が今のこの町を作っていったんだと改めて実感。

商店街の歴史をお伺いして、改めて町との距離が近くなった井門Pでありました。





 

 



井門P「いやぁ、地元をブラりするってのは…なんか違うねぇ。」

 

ゴル「やっぱりこうした商店街は個人のお店とチェーン店のバランスだと思うんですよ。」

(ゴルちゃん力説)

 

井門P「それはなんで??」

 

ゴル「チェーン店ばかりでもいけませんけど、

それが無いと夜が真っ暗になっちゃうじゃないですか。

この町の商店街を歩いていると、個人のお店とチェーン系のお店のバランスが良いんですよね。」





©円谷プロ

 

 



それは確かにそうかもしれない。

駅前には何店かチェーン店もあるのだけど、この町には個人商店もかなり多い。

しかもそのどれもがちゃんと地域に根差していて元気に営業を続けているのだ。

そして地域の皆さんが元気を保てる理由の一つがここにあるのかもしれない。

祖師谷民の憩いの場…温泉であります!





 

 



スーパーオオゼキのすぐ近く、路地を入って見えてくるのが…

そしがや温泉21という天然温泉の銭湯。

創業昭和30年と言うから地元民に愛され続けて60年以上になるんですね。

常に多くの方で賑わっている印象なのですが、

今回は営業前のお忙しい時間帯に取材に応えて頂きました。(有り難うございました!)

お話をお伺いしたのは御主人の福田亨輔さん

2人の娘ちゃんも我々の取材に興味津津といった感じで可愛かったなぁ)

カウンターのすぐ近くには休憩スペースやマッサージチェア、本の貸し出しコーナーまで。

 

 

福田「先代の頃からなんですけど、

こういったスーパー銭湯っぽい事をやり出したのはウチが最初みたいです。」

 

 

営業時間は14時~深夜2時まで。

昼の時間帯は年配のお客さん、夜中は仕事帰りのサラリーマン、

当然時間帯によって客層は異なるのだが、皆さん明日への活力を求めてここを訪れるのだ。

黒湯の天然温泉をはじめ、電気風呂やジャグジー、サウナにミニプールと、

まさにお子さんからお年寄りまでが楽しめる場所がこちらなのです。

因みに東京で湧き出る温泉のほとんどが「黒湯」なんですって!

その名の通り黒い湯なんですが、福田さん曰く「美肌効果と関節痛にいい」そうで。

となれば、祖師谷のお年寄りを健康に美しく保っているのは「黒湯」なのですなぁ。

折角なので営業前のお風呂を見せていただくことに。





 

 

 



中に入ると吹き抜けのミニプールの影響もあってか非常に開放的!

造りに西洋っぽさもあって、なんとなくテルマエロマエの世界なのであります。

実はまだ僕はお伺いした事がなかったんですが、今度息子を連れてお邪魔しよう。

福田さんの娘ちゃんも言ってくれましたしね「そしがや温泉、好き!」って()

取材を終えてみれば、まだ営業時間前なのに(更に雨も降っていたのに)、

入口には沢山のお客さんが待っていました。福田さん曰く、毎日いらっしゃるお客さん達だとか。





 

 

 

 

生まれも育ちも祖師谷っ子、福田さんにこの町の良さを伺うと…。

 

 

福田「商店街が賑わっていますよね。

だからかも知れませんが縦も横も繋がりが強いんです。

外から来た人にも親切なのは、商店街がしっかりしているからなのかも知れません。」

 

 

地元の方の強い絆があるからこそ、町は強くなる。

そしてその強い絆を生み出しているのは、憩いの場でもあるそしがや温泉なのかもしれません。

「福の湯」として始まってから60年以上、これからも地域の元気の源であり続けてください!





 

 



祖師谷温泉を再び商店街の方に戻り、

テクテクと北の方へと歩いていきます。

すると右側に見えてくるのが有名な「木梨サイクル」!

そうです、木梨憲武さんの御実家も祖師谷大蔵にあるんですね。

木梨サイクルは1階が自転車屋さんで2階がカフェと雑貨屋さんになっております。

実はKIKI-TABI一行も2階のカフェでちょいと休憩させてもらったのですが、

ウルトラマン商店街と木梨サイクルのコラボTシャツやらキャップやらが一杯!

祖師谷にいらした際は木梨サイクル2階のカフェでお土産などいかがでしょう??

因みに井門PもTシャツを購入、後日息子の運動会に着ていきました()





 

 



さてさて商店街をテクテク進み、今度は路地を住宅街へ。

この住宅街を進んでいったところに、井門Pが行ってみたかったお店NO.1があります。

そのお店が「馬来西亜マレー」。

マレーシアとアジア料理を心から愛する御主人と奥さまが二人で守るお店。

この“2人で”ってのがポイントで、

本当に何から何まで“2人”で作り上げていらっしゃるんです。

人気になっても話題になってもスタッフは雇いません。

御夫婦2人で納得のいく料理を提供するという、お2人にとっての大切なお城なのです。

お店の内装から調味料までほとんどが手作り。

お店と料理、そしてマレーシアにかける愛と情熱は、一歩店に入るとたちどころに分かります。

全てが行き届いていて、そしてその全てが居心地を良くしてくれる。

御主人の稲葉正夫さんと奥さまの捷子さんにお話を伺いました。





 

 



お二人がお店をオープンさせたのは16年ほど前のこと。

元々はデザインのお仕事をされていた御主人がそれまでの仕事を辞め、

60歳でこの道に入られたとか…。

って…えー!!御主人、75歳を超えていらっしゃる!!?

奥さまも(女性に年齢は失礼なので秘密)…えーーーーっ!!!?

お二人とも本当にお若くて、なんとも素敵な空気を醸していらっしゃいます…。

 

 

稲葉「ここ(店内)は元々僕のアトリエだったんです。

金属のオブジェなんかを造っていたんですが、例えばそのイルカなんかも僕の作品です。

デザインの仕事を辞めて、このアトリエで作品を販売していたんですが、それも売れてしまって。

それからは他のアーティストの作品を展示販売していたんです。」

 

 

元々はアジア料理がお好きで、家でもよく作っていらっしゃったお二人。

中でもマレーシアを訪れた時に本場の「バクテー」にハマったそうな。

 

 

稲葉「バクテーってのは“肉骨茶”と書くんです。

マレーシアに行けばどこの屋台でも出している定番の料理。

豚肉を煮込んだスープと御飯の、まぁ、早い話がぶっかけ飯です。これにハマった。

それを何とか日本でも出せないかと考えて、いまはウチの看板メニューになってます。」





 

 

 


仲間やご近所の憩いの場にもなっていたアトリエ。

いつしかそこがスパイスの香り漂う創作料理の場に変わっていった。

 

 

稲葉「元々海外にはよく行っていたんですけど、

特にマレーシアが大好きで…そうですね、もう150回は行ってるかな()

でもウチの料理は本場の味とはだいぶ違うと思います。

やっぱり現地の風土、気候、雰囲気の中で食べる物と、

この東京の祖師谷で食べる物は印象も変わってきますからね。

同じ物を出しても美味しいとは思わないでしょう。

ですからウチのアジア料理は日本に合う様にアレンジされた料理なんです。」





 

 



とは言うものの、こちらでバクテーを食べたマレーシア人の方もその味に太鼓判を捺すという。

更には本場のマレーシアで食べてきたというお客さんが、

馬来西亜マレーのバクテーの方が美味しいと言ってくれるという。

 

 

稲葉「ウチはボスが二人いるんです。僕と妻の二人。

この店のメニューの半分は彼女が作ったもので、後の半分は僕です。

そして僕は彼女の料理のレシピを知りません。知ろうとも思いません。

それぞれがお互いの作品なんです。気合いを入れて作っている作品。

ですから、ウチは修行したいと言われても弟子は取りませんし、

子供達もウチの料理のレシピを知りません。僕らの作品なんです。」

 

 

お二人の雰囲気、料理への気持ち。

いや、何よりもお互いがお互いを尊敬する気持ちに圧倒される。

この気持ちがあれば、例えどんな商売だって二人でなら繁盛させられるだろう。

事実、飲食業の経験が全くなかったお二人の店は、約16で東京でも評判の店になった。

 

稲葉「飲食の経験がゼロですから、何もかも手探りで始めました。

店の内装も数カ月で二人で手作りで作り上げました。

僕らは手間が掛っても納得のいく物じゃないと自分達で手作りをします。

よく税理士の方にも言われるんです、原価がかかり過ぎですって()

“そうですか…”なんて言うんですけど、

陰でこっそり“でも二人でやってるんだから良いよねぇ”なんて言ってます()

 

 

お店のあちこちにお二人のこだわりが見え隠れする。

旅行が御好きなお二人の写真、手作りだからこそ丁寧に書かれたメニュー表。

メニューには美味しそうな写真が付いていて、ひと言コメントも添えられている。

うん、もうこのお二人が作った物が美味しくない訳がありません!!()

沢山あるメニューの中でも僕らが選んだのは…

 

バクテー・バビ・ライス(¥1,030

プタイ・ライス(¥1,085

カチャン・カレー(¥1085

サンバル・ゴレン(¥925)の4品。

注文をしてしばらく…、お二人自慢の料理の数々がこちらです!

 




 

 

 



バクテー・バビ・ライスはお店の看板メニュー。

なんとも言えない旨味の詰まったスープの中に、ホロホロの柔らかい豚肉が…。

スープをひと口啜ると…口の中全体が旨味に包まれる、

その旨味の中にホロホロの豚肉が…もうたまらなく旨い!!

 

更にプタイ・ライス。

このプタイとは木の実の事で、マレーシアの方々は食べないそうです()

ところが稲葉さんがこのプタイがお好きで、これを料理にアレンジしたのがこちら。

スパイシーなスープの中に鮮やかな緑の木の実が抜群のコントラストを描いています。

バクテーのスープと違い、スパイスの効いたスープと野趣溢れるプタイ。

それがもう絶妙のマッチングで、別皿のライスが進む進む!ワシワシ食べてしまいます。

 

そしてお店のメニューの中でもカレーらしいカレーがカチャン・カレー。

メニューには『クミンを表舞台で長時間煮込んだパキスタン風カレー』とあり、

こちらも紅茶煮の豚肉の柔らかさとクミンの爽やかな香りが颯爽と駆け抜けていきます。

頼んだ4品の中では一番スパイシーですが、それがじんわりと身体に沁み渡っていくのです。

 

そして自家製サンバルソースを使ったサンバル・ゴレン。

『自家製サンバルソースと台湾産干し海老の絶妙なコラボレーション』

中に入った干し海老と御飯に絡みまくっているサンバルソースのコク、

ひと口食べたら「すぐ海老!海老の風味の嵐!」に襲われます!

口の中で海老の嵐が吹き荒れているにも関わらず、スプーンは次のひと匙を掬っている!

待ちきれない、早くまたシュリンプストームを起こせ!と身体が欲しているのです!()

 

KIKI-TABI一行「旨い、旨い」と食べ進めていく内に、あっと言う間に完食。

お二人がお話ししてくださった『作品』という言葉が胸に沁みました。





 

 



インタビューの中で稲葉さんは「真心」と「本気」という言葉を口にされました。

「正直にやれば大丈夫。」とも。

この店の料理にはその全てが詰まっています。

 

「真心」と「本気」と「正直さ」。

 

なのにお店には一つも堅苦しさがない。

ひょっとしたら「旨い旨い」と食べている我々の姿も、お二人にとっては作品の一つなのかも?

日本で食べて美味しい本気のアジア料理に出会いたければ、ぜひ祖師谷大蔵へ!





 

 



橋本「いやぁ、物凄く美味しかったですね。

なのにレシピは誰にも教えないって…勿体ない気もするけどなぁ。」

 

井門P「確かにねぇ、でもそれがお二人の作品へのこだわりなんだよ。」

 

 

馬来西亜マレーを出て路地を歩いていても、しばらくはお店の話をしてしまう。

それほどに強い衝撃を受けた我々は、そうだった、

今回はウルトラマンの町を取材しているんだった!という事を思い出しながら最後の場所へ()

最後はそのウルトラマンの町を店全体で体現するカフェ・メロディへ。





©円谷プロ

 




こちらは僕も息子を連れて何度も来た事があるお店なのですが、

店内にウルトラマングッズを扱う「SHOT M78」を併設しているのです。

ですので一歩店内に入ると、目に飛び込んでくるウルトラマングッズの数々!

もちろん祖師谷大蔵ならではの商品も展開しているとの事で、

スタッフの末森未絵さんにお話しを伺いました。






©円谷プロ

 

 



様々なグッズが置いてありましたが、中でも人気なのは指人形()

でも物凄い数のいや、物凄い種類の指人形があって、またそれが楽しい!

 

 

末森「敢えてごちゃっと置いてあるんです()

宝物を探す気分になるので、お子さんは喜んでますよ。」

 

 

わーかーるー!!()

なんか「あるかどうか分からない場所」からレアな物が出てきた時の喜びって凄いもんね。

がちゃがちゃからレアなキン消しが出てきたり、ビックリマンシールでヘッドが出たり。

お店の棚の中には他にも素敵ウルトラマングッズの数々。

しかも祖師谷っぽくエコバッグは商店街のフラッグを再利用したもの!





 

©円谷プロ

 

 



ここにいると必ず聞こえてくるのは、お母さんの「ほら、もう帰るよ!」の声()

それほど子供の心をウルトラマンは鷲掴みにするんですよねぇ。

祖師谷にはあちこちにウルトラマンが隠れています。

かなり歩けば商店街の出口に「ウルトラマンゲート」もあり、

ウルトラマン、ウルトラマンジャック、ゾフィーが飛んでたりする()

歩き疲れたらカフェ・メロディーでちょっとお茶でもいかがですか?

 

 

 


 

 

 

この町は本当にのんびりとした空気に包まれている。

朝になれば学生さんが、夕方になれば子連れのお母さん達が笑顔で駅前を行き交う。

町を流れるのはいつだって穏やかな空気と時間。

きっとこの空気と時間は、あのヒーロー達に守られているのだ。

そう、「光の国から僕らの為に」やってきたあのヒーロー達に。

 






©円谷プロ