第89回 宮本亜門さん①

2017-06-11

ゲストは、演出家の宮本亜門さん。


宮本さんは、1958年、東京都銀座生まれ。
1987年、ミュージカル『アイ・ガット・マーマン』で演出家として
デビューし、文化庁芸術祭賞を受賞されました。
現在でも、国内外でミュージカル、オペラ、など
ジャンルを超えた作品を数多く手がけていらっしゃいます。

今年2017年4月11日で、演出家デビュー30周年を迎えられました。
「実は演出家になりたくて、
その前に10年ぐらい出演者なんかをやっていて。
だから、こういう舞台に関わったのは40年ぐらいなんです。
本当に、演出させていただけている事が、嬉しいですよね!」

宮本さんは劇団を持たず、事務所などにも所属しないという、
演出家としては、とても珍しいケースです。
そのため、毎回違う役者とスタッフと関わりながら
舞台を演出しつづけていらっしゃいます。
「30年やってるだけでも不思議ですし、十分です。
なぜ劇団を持たないか聞かれたり、お誘いを受けることも
もちろんあったんですけど。僕はどうも、毎回新鮮で
崖っぷちの状態で自分を活性化していくのが好きみたいで(笑)
毎日ドキドキで、安定した未来も何もないんですけどね!」
演出作品は現在100作品を超え、多くの方々と出会ってこられました。
” その方々をつないでいく役目が演出家にはある"というのが
宮本さんの考えで、その役割が趣味のようになっているそう。

「毎回僕も、勉強します。歌舞伎の時も、
本当は演出家はいらないんですけど(笑)
オペラの時は、セリフが全部苦手な譜面だったので、
全曲覚えるためにずっとCDを聞いて、そこで初めて
演出が始められたり。毎回違うジャンル行くと面白いですよ」
演出の仕事をあえて、"仕事と思わない" ようにしているそうで、
どの出会いも大事にし、アンテナを広げ、固定概念に縛られたり、
人を決めつけたりしない、と心で決めているのだとか。

苦手な事が長所になることも多くあり、
その人自身や他人が、勝手な決めつけをしないのは
大切なのかもしれません。

今回は、宮本さんが元気になれる1曲、
ゆずで『終わらない歌』を選んでいただきました!

国内外で活躍する宮本さんの、海外デビューはNY。
911とぶつかり、心に大きな傷を負いました。
「公演は4〜5日くらい遅れたんですけど、みんなボロボロで。
NYが戦場の中心のような悲しみと恐怖だったんです。
そこから立ち上がり、舞台をやったものの、
僕自身も心がダメになっちゃったんですよね。
でも、辛い事は事実なんだけど、この事にも
意味がある事だと思うんです。」
21歳の時、出演者として舞台に立っていた時、
初日の朝にお母様が亡くなっています。
これも、意味がある事だ、と宮本さんは考え、
生きていくことをプラスに出来るようになったそう。

今年7月27日には、イギリス大英博物館で
朗読劇『画狂人 北斎』を行います。
「北斎は面白いんですよ!
北斎自身は90歳ぐらいまで生きた方で、
名前を何十回も変え、引っ越しもして、スタイルも変え。
”生き足りない!120歳になれば良い絵が描けるかもしれない”
って悶絶しながら、絵を描き続けていたんですね。
こういう人が日本人の先輩であることが嬉しいです。」

幼少期から日本文化に興味を持ち、
将来は神社仏閣の研究をしたかったという宮本亜門さん。
2020年に向け、"北斎"などを通じて、
さらに日本とは何か、世界に発信する機会を作っていきたい、とも。