新旧の個性が彩る町!台東区・蔵前さんぽ|旅人:井門宗之
2017-08-31
河合「ね!まだ雨は大丈夫でしょ??」
井門「まだ…ですけどね。」
横山「大丈夫、終わるころには土砂降りだから。うふふふ~♪」
河合「大丈夫ってなんですか!?
さぁ、今日はスピーディーにいきますよ!
雨が降る前に…(・ω・;)(;・ω・)」
金曜の朝早く、場所は都営大江戸線蔵前駅のほど近く。
春日通りと江戸通りが交差する厩橋が今回のロケスタート地点であります。
天気予報は曇りのち雨…はっきり言ってぶらりロケで雨は絶対に嫌!!(笑)
でも今回は割とギュっとエリアを狭くした取材ですし、
ここ蔵前という場所はエリアをギュっと搾っても面白いスポットが沢山。
最近では若い個性がこの地にお店を構える事も多く、
新旧の彩りが相まって蔵前をよりキラキラとさせているのだとか…。
今回は雨が降る前に、そして雨粒で街がキラキラする前に、
そんな新旧の個性を探りに行ってまいりました!
都営大江戸線蔵前駅のほぼ真裏、
マンションなどが建ち並ぶ場所に凛とした空気を湛えた建物が現れます。
それが藏前神社。
元々は石清水八幡宮として建立されたこちらの神社、
現在は鳥居から社殿まで10mほどと都会の神社の佇まいなのですが、
かつてはこの6倍、1800坪もの敷地を持つ大きな神社だったとか。
阿部宮司「かつては参道も江戸通りまでありました。
明治維新の頃は今の6倍の敷地面積があったんですよ。」
そう教えてくださったのは宮司の阿部康久さん。
藏前神社にまつわる様々なお話しを聞かせてくださいました。
藏前神社が石清水八幡宮として建立された江戸時代。
江戸の街を守る為に北極星と北斗七星の形の上に寺社を配した、
いわゆる北極星信仰というものがあったのですが、
実は藏前神社もその一社だったとか。
阿部宮司「増上寺、愛宕神社、日枝神社、神田明神、
そして藏前神社、浅草寺、寛永寺を北斗七星上に配置し護国寺を北極星とした…、
という説があるんですよ。」
北極星信仰と言えば日光東照宮が有名ですけど、
(日光街道を江戸から北極星の方角に進んでいくと東照宮があって、
北極星が江戸の町を照らすかの様に家康公を祀る東照宮が江戸を守った)
江戸の町に配された寺社でも北極星信仰を表す配置が成されていたんですね。
江戸時代、それだけ重要な役割を藏前神社が担っていたという事の表われでしょう。
そして重要な…と言えば大相撲の歴史に於いてもこちらはそうだったようで。
阿部宮司「宝暦7年に勧進相撲が開かれましたが、
その時に初めて一枚刷縦番付が発行されました。
そしてその後、宝暦11年に勧進大相撲となったんです。
それ以降、現在に至るまで“大相撲”“大相撲”と呼ばれるようになるわけです。」
幾多の名勝負が実はこの藏前神社の境内で行われましたが、
その中でも相撲史に残る名勝負は、谷風と小野川の一番。
阿部宮司「当時谷風は63連勝中、そこを小野川に敗れたわけですから、
当時は江戸中が大騒ぎになったみたいですよ(笑)」
勿論、谷風も小野川も江戸時代の力士であります。
でもそんな伝説的な力士の名前がポンと出てくるんだから、
あぁ、もう、形だけでも横山Dと相撲とってくれば良かった(笑)
大相撲の他にも古典落語ゆかりの神社でもある藏前神社。
鳥居を潜るとすぐ右手には「元犬」と「阿武松」にまつわる木札も立てられていました。
色々と教えて頂いた阿部宮司。聞くとあまり最近取材は受けていないのだとか…。
にも関わらず快く取材に応じて頂き、尚且つ帰りに飴ちゃんまで頂いて(笑)
阿部宮司、貴重なお時間とお話しを本当に有り難うございました!
都会の中の由緒正しき神社でしっかりと手を合わせた後は、
こちらも相撲にまつわる『文献』を扱う古書店へ。
見た目のインパクトが凄まじい(笑)こちらのお店、
店名は浅草御蔵前書房。
本当はね、店内でインタビューする予定だったんです!
でもひと一人通るのがやっとの通路(本棚と本棚の間ね)でそれは厳しいかと、
まだ雨も降って無いって事でまずは外でお話しを伺いました。
お話しは店主の八鍬光晴さんです。
こちらのお店、元々は古書店ではなく、
周りにある数多くのお店と同じ様に問屋さんだったそうな。
何とも雰囲気のあるこちらの建物自体は、昭和23年に建てられたもの。
最初の事業が上手くいかなかったので、昭和33年に古書をやり始め、
40年前くらいから個性を出す為に相撲関係の本を集め始めたんだそうです。
八鍬「相撲関係の本を集め始めたんですけど、最初は売ってなかったんです。
だってお客さんが来ないんですもん(笑)だから奥にしまっておいた。」
とは言うものの商品をしまっておいたんじゃ商売にはならず、
色んな方のアドバイスもあり、徐々に相撲関係の本を並べ始めたんだとか。
八鍬「ここには蔵前国技館がありましたから、
近所の人達は子供の頃に裏口から入って最後の3番くらい見せて貰ったもんです(笑)」
何とも良い時代の話ではありませんか。
当時は髭の行司で有名な19代式守伊之助さんの時代だったとか。
八鍬「とは言いながら、始めはそんなにお相撲が好きではなかったんだけどね(笑)」
そんな風に笑う八鍬さんですが、
今やお店には数多くの相撲ファンが全国各地から集まる様になりました。
その中にはうるさ型の相撲好き芸能人の姿も…。
知る人ぞ知るお店とは言うものの、やはり店内には貴重な書籍や品々が並びます。
確かに看板にある様に、相撲関連の本…ではなく、
相撲関連の文献と呼んで構わないでしょう。
中には明治時代に書かれた「最初の相撲雑誌」が!
八鍬「これは一冊に一、二、三、四、五と、
ここには五巻入ってますね(無造作に数える)…50万円です。」
井門「え~~!!!!!」
八鍬さん曰く「コレクションと言うより、自然にたまったもの」だそうですが、
お宝の話はどんどん出てきます。八鍬さん、店内だと話が止まりません(笑)
八鍬「番付の一番古いのは業者で持っているのは僕だけだと思うんだけど。
一番最初の番付表は国技館にあるんですけど、僕が持っているのは3番目です。」
もうね、国技館に保管されるレベルのお宝ですよ。
更に凄いのは江戸時代の力士の手形をお持ち。
景気の良い時代であれば300万くらいの値はついたそう。
いや、どうしても値段が気になっちゃって、
その品の価値をちゃんと考えればそれくらいの値がつくのは当然なのです。
そして店内の書棚のラインナップを見れば、
まだまだ何か出てくるんじゃないかと期待せずにはいられないのです!
八鍬「お客さんは大体そんな感じですね。
書棚の本を見て“ここだったら…”と、そこで初めて声を掛けられます。」
“知る人ぞ知る”店だからこそ、本当に欲しい物があるお客さんが来る。
そして書棚を見てある意味安心するんでしょう、ここなら間違いない、と。
最後にやっぱり下世話な事を聞いてしまいました。
ここまで集めるのに、どれくらいの金額を費やしたんですか?と。
八鍬「そうですねぇ…ここにこの家を建てるくらいでしょうか(笑)
相撲関連の書籍を集めるのに“億”は使ったかもしれません。」
蔵前の町に渋さを纏わせる名店を後にした一行は、
続いて国際通りの方へと移動します。
何やらこちらにお洒落な文具店があるとか…、
おおっ、ありました、ありました!その名も「カキモリ」。
カキモリの「カ」の部分にペンの試し書きの様なぐるぐるが書かれているのが可愛い。
店内は木を中心としたナチュラルな印象の内装。
オーナーはこれまたお洒落な広瀬琢磨さんです。
…っと、広瀬さんのお話しに行く前に、
店内の文房具を眺めながらこんな一コマが。
河合「私が多分、手書きの原稿の最後の方の世代だと思います。
よく言われましたもん、お願いだからワープロで書いてって(笑)
あと私、「手」って漢字が癖字で、「牛」に見えるんです。
伊集院さんと仕事していた時はよくからかわれました(笑)」
横山「昔は全部手書きだったもんね。
俺も原稿を手書きで書いてたからなぁ。」
井門「ディレクターさんとか作家さんって、
上手な字ではないけれど、物凄く見易い字の方が多いですもんね(笑)」
河合「そうかもしれませんねぇ。」
手書きの時代、それは今よりも大変だっただろうけど、
そこにはひょっとしたら今よりも「思い入れ」は強く込められたのかもしれない。
手紙で書くのとメールで送るのでは意味合いが違いますもんね。
広瀬「若い人は完全にスマホになってますからね。
逆に“書く事”に憧れを持っている様に感じます。
今だからこそ、手紙の価値は飛躍的に高まっているんじゃないでしょうか?」
カキモリのコンセプトは『書くきっかけを作る』という事。
お店をオープンさせたのは2010年との事だけど、
その頃から既に書く事が減ってきていると広瀬さんは実感していたそうだ。
広瀬「手紙を書くのは良い事だよねと思って貰いたいです。
このままじゃ、公衆電話がなくなっていくようにポストがなくなっていくんじゃないかと。
そうならない様にするのも、小売店の指名かなと思ってます。」
書くきっかけを作る…そんなコンセプトの中でも魅力的なものが、
オリジナルノート作りでしょう!
表紙が60種類、中の紙が30種類も選べて、留め具なんかも様々にチョイス出来る。
まさに完全オリジナルの自分だけのノートを作る事が出来るんです!
しかも1冊、2000円~3000円で。
これは私も体験せねば…という事で、色々と選びながら出来上がったのがこちら!
広瀬さんから「こんなに早く決まる方もなかなかいない」と言われる即決ぶり。
もうね、頭の中にぱーんとイメージが湧いちゃって(笑)
中のノートは海外の方にも人気の『トモエリバー』の方眼と罫線のミックス。
出来上がりからすぐに愛せてしまう、オリジナルノートの完成であります!
ノートに記録した事は意外と記憶に残るもの。
このオリジナルノートに何を書こうか、それを考えるだけで楽しくなります。
ノートを書き終えたら、こちらで交換も(有料)してくださるそうなので、
是非あなたも貴重な体験をしに、カキモリへ!!
新旧の最後は「新」のお店へと向かいます。
場所で言ったら「カキモリ」のちょうど真裏に当たるのかな?
NAKAMURA TEA LIFE STORE
もう外観からおっしゃれ~!じゃないですか??
厳選された静岡茶を販売するこちらのお店は、2年半前にオープン。
若きイケメン店主の西形圭吾さんにお話しを伺いました。
西形さんは静岡県藤枝市出身。勿論、お茶どころであります。
西形「お茶の産地で育ったので、子供の頃から当たり前に急須でお茶を飲んできました。
それで何かお茶に関わる仕事をと思いまして。
実はこのお店で扱うお茶も全て自分の幼馴染が作ったお茶なんですよ!」
お店自体は築50年~60年の建物。
大家さんがタイル職人だったそうで、
その作業場と物置きだった場所を借りて営業をしています。
テイスティングが出来るカウンターには茶香炉が置かれ、
何とも香ばしいお茶の香りが店内を満たしています。
茶筒にデザインされたロゴも西形さんの手によるものだそうですが、
日本茶=古い、お年寄りの物、というイメージをグルっと覆す様な印象。
もっと多くの人に日本茶を手軽に楽しんでもらいたいという想いが強いそうで、
だからこそテイスティングも店内にある9種類全てのお茶を楽しむ事が出来るのです。
私、井門宗之。なにをおいてもお茶が好き。お茶ラバー。
朝食を家で食べる時は必ず和食で、そのお伴は八女茶でございます。
もう日本茶無しの生活は無理!MURI!MURI!MURI!
早速西形さんにオススメのお茶を淹れて頂きました。
西形「では3gの茶葉に対して80℃のお湯を100cc入れていきます。
待ってる間はこの砂時計で測りますね。」
店内にある物、全てがお茶を楽しめる様に計算されている。
西形さんのお茶への愛がビシビシ伝わってくるのであります。
まずはNO.1とNO.2と銘打たれたお茶をそれぞれ頂きました。
井門P「あぁ、これは良い香りですねぇ。
しかも飲み口も良い。」
西形「この2種類はお菓子と一緒に楽しんだり、単体で楽しむものです。
では続いて御飯に合うお茶も淹れますね。NO.3というお茶になります。」
これも同じ様に3gの茶葉に対して80℃のお湯を100cc。
この温度は飲んだ時に70℃~75℃の温度になる様に計算されているのだとか。
井門P「ではいただきます~!(gkgk)
はい、美味しい!
さらっとしていて、食事を邪魔しない感じが出てますね~!
これ、戴きます!(笑)」
西形「有り難うございます!(笑)」
お茶って本来こういうコミュニケーションなんだと思う。
どんな風に楽しみたいか、それをお店の方に聞いてみる。
向こうは当然プロなわけで、聞けば的確な答えは返ってくるんですよね。
西形さん曰く、お茶の業界も新しくお茶を飲んでくれる人を取り込もうとしているそうで、
だったら尚更、お茶の深い世界を知るべく、そして生活を楽しむべく、
お茶はスーパーで買うんじゃなくて、町のお茶屋さんでグラムで買いましょう!
きっと何気ない時間が、お茶で華やぐこと請け合いですよ♪
新旧の個性が彩る町!をテーマに蔵前をぶらりした今回の旅。
「新旧の個性」とは言ったけど、
「新の個性」の方は2店ともに「旧き」を大切にされていましたね。
カキモリさんは「書く」という文化を大切にしながら、
その想いを今の時代に伝えていたし、
西形さんは「日本茶」の文化を今の時代に重ねようとされていました。
先人達が温めてきた文化を、今の時代に伝え、その魅力を再発見する。
まさに『温故知新』が蔵前にあったような気がします。
ノートも作って、お茶も買って、神社では飴ちゃんも戴いた今回の旅(笑)
何よりも人の温かさに触れた旅でした。
東京が江戸と呼ばれていた頃の速度に近づける気がする「ぶらり」の速度。
改めて東京を巡るなら、ゆっくり歩くのが良いのかもしれませんね。