あれから7度目の春~花咲く福島を訪ねて|旅人:井門宗之

2018-03-07

 

2011年3月11日から7度目の春。

KIKI-TABIがYAJIKITAだった時代から、何度も東北をお邪魔してきました。

東北の皆さん、いかがお過ごしですか?

お変わりありませんか?見える景色はどう変わりましたか?

今回は福島です。福島も間もなく春を迎えますね。

僕らはそんな福島の春を一足早く見つけに、車を走らせました。

 

 

 

 

 

 

 

 

いまこの旅日記を書いていても思い出します。

福島駅に着いてその天気の良さに驚いたもの。

風はまだ少し冷たかったけど、日差しは既に春の予感。

河合さんが(雨降らし)喜んでたっけ(笑)

僕らがまず向かったのは桑折町。福島駅から車で20分ほどの距離で、

桑折町で作られる桃は皇室献上品となるほど、桃で有名、自然豊かな町です。

車を走らせているといつの間にか右も左も、桃の木、桃の木、桃の木!

それもその筈、看板を見ると『桑折ピーチライン』の文字が。

僕らは桃の木に囲まれながら、

桑折町役場の朽木健太朗さんにお話しを伺いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

井門「一面の桃畑ですね~!」

 

朽木「私達の後ろには桑折町のシンボル、半田山が聳えています。

その半田山に見守られる様に、桃の畑があります。」

 

井門「何本くらいの桃の木があるんですか??」

 

朽木「いや、ちょっと本数までは分からないですが…、

町内の農家さんは兼業でやられている方がほとんどで、

その中でも約94%の方が桃作りに携わっています。」

 

 

町内の9割以上の農家の方が桃作りに携わっているとは…、まさに桑折は桃の町。

もちろん桃にも沢山の種類があり、様々な味を楽しむ事が出来るのです。

 

 

朽木「はなよめ、はつひめ、あかつき、さくら…

それぞれ収獲時期が異なる桃が実をつけます。

こっちの人は割と歯ごたえがある桃を好むんですけど、

僕は熟して柔らかくなった桃が大好きですね~(笑)」

 

 

そんな風に桃の話をする朽木さんは、なんだかとても幸せそう。

それはきっとここの桃たちが、大変な時期を乗り越えているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

朽木「震災と原発事故があって、

あの時は電気も3日止まりましたし、道路も陥没しました。

もうダメなんじゃないかと思った事もありました。

更にあの時期は北西の風が吹いて、こちらに放射性物質が流れてきたんです。」

 

井門「除染作業にはどの位の時間が掛ったんですか?」

 

朽木「はい、4年ほどかけて1本1本、除染を行いました。」

 

 

こうした皆さんの苦労があって、

今では桑折町の桃も震災前の生産量に戻ってきているそうです。

そして今年も皇室献上品に選ばれれば、なんと25年連続の『献上桃』!

 

 

朽木「そうなってくれると嬉しいんですけど。。。

今はちょうど桃が実をつける前の準備ですね。

剪定があちこちで終わって、桃の木の下には沢山の枝が落ちています。」

 

井門「今はまだ春も前ですけど、桃のシーズンは夏ですもんね(笑)」

 

朽木「はい、でもそんな桑折町の桃を夏まで待てない!という方に、

実はオススメの商品があるんです!それがこちら!!

至福の桃ソルベ至福の桃グミ!

 

 

 

 

 

 

 

 

井門「朽木さん、いきなり上手になりましたね(笑)」

 

朽木「てへへ(笑)

至福の桃ソルベは献上桃の≪あかつき≫の果汁を75%も使用、

桃グミはUHA味覚糖さんとコラボした、まるで桃を食べているかの様なグミです!」

 

井門「物凄くプロモーション上手じゃないですか!(笑)

そのままにしておくと“お申し込みは、フリーダイヤル…”とか言い出しそう。」

 

朽木「今日はその2商品をお持ちしましたので、

後で皆さんで召し上がってみてください!」

 

井門「有り難うございます。あと、そうだ朽木さん!」

 

朽木「はい!」

 

井門「この先に大きなイベントが待ってるんですよね?」

 

 

このイベントが凄いんです。

4月15日の日曜日、この桃の果樹園の中でBBQフェスが行われるんです!

今年で3回目のこのイベント、県内外から1000人規模でお客さんが集まるとか。

その頃にはこの果樹園の桃の花もきっと満開。

今でさえ桃の木の数が多くて、枝で遠くの視界が遮られるほど。

これが満開になったら…一面の桃の花の中でBBQとか最高でしょうね~!

 

 

 

 

      提供:桑折町役場

 

 

 

 

朽木「物凄く綺麗ですよ!ぜひ沢山の方に楽しんで頂きたいです。」

 

井門「朽木さんにお話しをお伺いしている時に、

一足早く虫が飛んでましたよ(笑)」

 

朽木「本当ですか!?」

 

井門「春はもうすぐそこまでやって来ているんですね。」

 

 

 

 

                             提供:桑折町役場

 

 

 

 

春の使者ではないけれど、実はこのインタビューにスペシャルゲストが!

それが桑折町のゆるキャラ『ホタピー』ちゃんです。

桑折町はゲンジボタルでも有名な町。ホタルとピーチで、ホタピーなのです!!

 

 

河合「うわ~!ホタピー可愛い♪」

 

永尾「ほんとだ(笑)可愛いなぁ…。」

 

 

という訳で僕は勿論、河合さんと永尾さんもホタピーと2ショット写真を(笑)

BBQにはホタピーもやって来る…かな?

桑折の春を、皆さんにも堪能して頂きたいです!

 

 

 

 

 

 

 

 

花咲く福島を訪ねる旅、勿論まだ満開の時期には遠いけど、

その予感を探していると何だか気持ちもワクワクしてくる。

しかも次に向かう先が桃源郷だ。ワクワクするなという方が無理な話で…。

 

 

菅野「この花見山公園は写真家の故・秋山庄太郎さんが、

≪福島に桃源郷あり≫と仰られて毎年いらしていた場所なんですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな風に朗らかに教えてくださったのは、

ふくしま花案内人の菅野紀子さん

僕らは福島を代表する花の名所、花見山公園を尋ねたのであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

こちら花見山公園は「公園」とは名付けられていますが「私有地」です。

花木生産農家の伊勢次郎さんと息子の阿部一郎さんが昭和10年頃から雑木林を開墾し、

1本1本花木を植えていったのがその始まり。その美しさが自然と人を集め、

昭和34年から無料開放するようになったとか。

 

 

菅野「ですからここにある花木は出荷する物がほとんどです。

標高は180mほどありますが、いま歩いている道も仕事の為の農道ですから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

農道とは言え花木の他にも池があったり石灯籠があったり、

なんとも言えない和の風情が漂っています。

僕らが入口から登ろうとしていると、ドイツから来たという観光客の男性が、

それはもう満面の笑みで撮った写真を菅野さんに見せています(笑)

自然の美しさは言葉も国境も超える訳で、

それを作り上げた伊勢次郎さん、阿部一郎さん、

更にはそれを守り続けている現在の阿部家の皆さんの努力の賜物が花見山公園なのです。

 

 

菅野「伊勢次郎さんは風流を愛する人で、ここで句会やお茶会をしたりしました。

阿部一郎さんは“平成の花咲かじいさん”と呼ばれた人です。」

 

 

菅野さんのお話しを聞きながら道の両側にびっしりと咲く花木に目をやる。

取材の時は蝋梅が綺麗に咲いていて、梅も蕾を大きくしていました。

聞けば桜の種類は15種類もあるそうで、

初めて聞く桜の名前や植物の特徴に一同興味津津。

 

 

 

 

 

 

 

 

菅野「例えば木蓮の蕾は太陽に当たろうと皆一斉に同じ方向に傾くんです。

花が咲く前の季節の木蓮の蕾をよく見てみると面白いですよ。」

 

毎年4月15日頃が花見山公園の見頃になるそうで、

満開の時のパンフレットの写真を見せてもらうと、もう溜め息しか出ないのです(笑)

 

 

 

 

      提供:ふくしま花案内人

 

 

 

 

菅野「チラシが捨てられない様に、綺麗な写真を裏にしたんです(笑)

桜や桃の花が一斉に咲いて、綺麗なんですよ。

一郎さんは“大河も最初は谷間の一滴。

一木一草心をこめて植えていったのが、今こうなってる。”って話していました。」

 

 

 

 

                             提供:ふくしま花案内人

 

 

 

 

満開の季節を思い浮かべながら笑顔で話していた菅野さんも、

震災の頃の話を伺うと少しだけ表情が曇る。

 

 

菅野「震災の前の年の平成22年に32万人の来訪者があったんです。

5haしかない場所にそれだけの人ですから、本当に凄い人でした。

でも震災の年も9万人の人が来てくれたんです。

もっと少ないかなと思っていたんですけど、

3月に震災があって、それから1カ月後の桜の季節には多くの方がいらっしゃって。

聞くと県外の方もそうですけど、同じ福島の方で避難生活をされている方達が、

“お花を見て癒されました。”って言ってくださって。

どんな事があっても、花は綺麗に咲くんですよね。」

 

 

阿部一郎さんも≪花は無心に咲く≫という事を仰っていて、

だからこそその姿に人は惹かれ、また癒されるのでしょう。

震災の翌年には花木の養生の為、開園以来初めて1年間だけお休みをしたそうですが、

2年後には再び全面開放。

満開のシーズンにやって来た永尾Dは、あまりの人の多さに中まで来られなかったとか。

 

 

菅野「桜の季節も勿論綺麗なんですが、他の季節も綺麗なんですよ!

一郎さんも“ツツジの季節も綺麗なんだけどなぁ”なんて仰ってました(笑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

沢山の花木を丁寧に説明してくださった菅野さん。

“ガイドは隠し味!押し付けがましくならないのがモットー!”って仰っていて(笑)

本当にその通りのガイドっぷりだったんですけど、

花への愛…花見山公園への愛と福島への愛は半端なかったです!

我々スタッフ全員、

生きてる内に満開の花見山公園が見たい、と心に誓った取材。

菅野さん、本当に有り難うございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて向かったのはきっと誰もが知る桜の名所、三春町の三春滝桜です!

僕は初めて実物を見たのですが、桜が咲いてないのに物凄い存在感!

ただならぬ荘厳な雰囲気を湛えて、聳え立っています(そんな表現ぴったり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お話しは滝桜保存会・会長の小松茂行さん

生まれも育ちも三春町。幼い頃から滝桜が身近にあったと仰います。

 

 

小松「子供の頃は滝桜で遊んでいましたからね(笑)

いまは樹齢も1500年と言いますから、おばあちゃん桜かな?」

 

井門「この辺は昔は何があったんですか?」

 

小松「滝桜の周りは畑がありました。

ここ坂になっているでしょう?この坂の上にも桜の木があって、

昔は上に出店なんかもあってね。春になると上でお花見をやってたんですよ。」

 

 

滝桜、眼下に見下ろす花見かな。

って詠んでる場合じゃない(笑)なんて贅沢なお花見なんでしょう!

今は桜の木を保存する為に小松さん達が桜守となって滝桜を守っているそうですが、

いやしかしとんでもない迫力だ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

小松「近くから見ても迫力があるんですが、

遠くから見ても綺麗なんですよ。あの道路の向こう側からが一番良いかな?」

 

 

と、言う訳で少し離れた場所から撮影した滝桜がこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほど、少し離れると上の桜も見る事が出来る訳で、

これは満開の時期は物凄く美しいだろうなぁ。

 

 

 

 

      提供:三春町役場

 

 

 

 

小松「開花すると駐車場で観桜料300円頂きます。

でもやはり時期になるととても混雑するので、

観光バスでお越し頂くのが一番かもしれませんね。

高速の三春インターから3km位は並びますから(笑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

どんなに混雑していても、花見山公園同様、

生きている内に一度は見たいのが三春滝桜。

日本最古の枝垂れ桜の雄大さ、美しさ、いつか必ず見に来ます!

 

 

 

 

 

 

 

 

旅の最後は石川町にある母畑温泉。

1880年創業の老舗八幡屋さんにお邪魔して、

総支配人の酒井初雄さんにお話しをお伺いしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

井門「母畑って珍しい名前だと思うんですけど、由来は何なんですか?」

 

酒井「はい、八幡太郎義家が戦で傷を負った兵士を川の水で洗ったところ、

たちまちに傷が癒えたそうで。その時に祀った母衣(ほろ)と旗がなまって母畑、と。」

 

井門「ほろ、はた、ほろ、はた、ほはた、ほはた、ぼばた…。

全然お母さんと畑は関係無かったんですね(笑)」

 

酒井「そうですね(笑)」

 

 

八幡屋さんにお邪魔したのは金曜日だったのですが、

駐車場は満車で御部屋もほとんど埋まっている状態。

しかし震災直後はほとんどお客さんがいない状況が続いたそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

酒井「正直、震災直後は“もうダメかも”と思いました。

4月から8月まではいわきから避難されている皆さんも受け入れていましたし。

本当に旅館をどうしようと思いました。」

 

井門「そんな状況から“なんとかなるかも”と思ったのはいつだったんですか?」

 

酒井「震災の年の6月になって、観光バスが1台来てくれたんです。

その時は涙が出るほど嬉しかったですね…。」

 

 

そしてそれから5年後の2016年、

八幡屋さんは「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で見事1位に選ばれたのです。

 

 

 

 

      提供:八幡屋

 

 

 

 

酒井「いや…それまでは8位とか10位とかそれ位だったんです。

なのでその年の始めに従業員に“1位を目指そう”って話していたばかりで。

だから尚更1位に選ばれた時は驚きましたね…。」

 

井門「酒井さん、そう言いながらまた手に汗かいてますよ(笑)」

 

酒井「それだけプレッシャーを感じています(笑)」

 

井門「どうして1位に選ばれたんだと思いますか?」

 

酒井「えぇ、まずリピーターのお客様が多いという事でしょうか。

それに加えてのリーズナブルさ。私どもは様々な企画の料金をご用意しています。

例えば1泊5万円の宿は年に1度しか泊まれなくても、

1万円で1位に選ばれた旅館なら2回、3回と来てみようと思う。

それだけに我々が大切にしているのは、出来る限りのおもてなしの心です。」

 

井門「おもてなしの心。」

 

酒井「はい。ここは場所としても来にくい場所です。

車じゃないとなかなか来られません。

だからこそ、また来たいと思って貰えるおもてなしを心がけております。」

 

 

実はこの日、僕らも八幡屋さんにお世話になりました。

八幡屋自慢の温泉も堪能させて頂きましたが、

その温泉がもう最高なんです!!

 

 

 

 

 

      提供:八幡屋

 

 

 

 

大浴場の広さは勿論、巨石をくりぬいた露店風呂に、

ラドン温泉サウナや内モンゴル麦飯石を使用した天然石サウナなどなど…。

どれもがゆったり広く、なんとも優雅な時間を味わう事が出来ます。

更に食事もお魚あり、お肉あり、そこに福島の地酒を合わせたら…もう最高!

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝の朝食バイキングもなんとも贅沢な品ぞろえで、

はい、私、必ずプライベートでもまた来ます!絶対来ます!!(笑)

酒井さん、八幡屋の皆さん、本当にお世話になりました!

 

 

 

 

 

 

 

 

花咲く福島を訪ねる…いや、花咲く福島を想像する旅、しみじみ良い旅でした。

未来に想いを馳せる旅っていうのは、福島にぴったりだと思うんです。

そして僕らが来るべき春に最後に想いを馳せたのは、

八幡屋の酒井総支配人おすすめの石川町の桜の名所、あさひ公園。

川沿いにおよそ2000本の桜並木が楽しめる場所で、

川幅の狭くなった場所はまるで桜がアーチの様に、川に枝をかけていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

行く先々で小さな虫たちや膨らんだ花の蕾が、

もうすぐ福島に春が来るよと教えてくれた今回の旅。

僕らは毎年、当たり前の様に春の美しい風景を見ていますが、

東日本大震災から7度目の春を、福島の方は勿論、

被災した東北の多くの方も迎えます。

どうかその春が、少しでも幸せを感じられるものであります様に。

まだまだ前に進むには大変な地域も沢山ありますが、

どうか少しでも、前に進む事の出来る春であります様に。

 

 

震災から7年。

色んな事がありました。

色々な景色が変わっていきました。

 

震災から7年。

いま大切な事はなんでしょう。

 

「被災地の苦労を忘れないこと」「心の支援を続けること」

確かにどちらも大切なことだと思います。

でもそれはきっと普通に暮らしていると、

日常的に続ける事が難しくなってしまう事でもあると思うんです。

 

僕がいま大切だと感じている事、

それは、ふっと東北の事を想った時に、

“思い出せる場所がある”という事なんじゃないかって。

 

思い出した瞬間に、その場所があっと言う間に近くなります。

思い出した瞬間に、その顔にまた逢いたくなります。

 

でも大前提は東北に行くこと。

行かなきゃ思い出は作れません。

僕は皆さんに、想った時にすぐに思い出せる場所に、東北をして欲しい。

そんな場所を東北のどこかに一つ作って欲しいんです。

笑顔は人の笑顔を咲かせます。

これから先、何度目の春が来ても、笑顔の花が減るのではなく、

どんどん増えていくように、僕らも旅を続けます。

 

季節はこれから春です。待ちわびた、温かな季節です。

是非皆さんも、花咲く福島へ、花咲く東北へ!