天領日田、祇園に酔う夏|旅人:井門宗之

2019-07-19

井門「黒木さん、お久しぶりです!」

 

黒木「いやぁ、井門さん!お久しぶりです!」

 

橋本「わぁ、黒木さん!!またお会い出来て嬉しいです!」

 

黒木「こちらこそ!また有り難うございます!」

 

 

 

大分県日田市を訪れたのはちょうど1年前。
九州北部豪雨から1年というタイミングでした。
豪雨被害が発生した日田市が再び元気になった姿を皆さんにお伝えしたい、
日田市の魅力を改めて知る旅をしたい、そんなテーマでお届けした前回の日田の旅。
蓋を開けてみれば僕自身が日田にすっかり魅了されてしまい、
ロケから1カ月後にはプライベートで家族と豆田町をぶらりしてました(笑)
いまこれを書きながら前回の旅日記を読み返していたのですが、
「まだ見ていない場所がある、忘れ物がある」的な事を書いていて、
今回はその忘れ物を取りにいく旅でもあるのです!

 

 

 

 

 

 

 

 

それにしても日田駅前が随分と綺麗になって…。

 

 

 

橋本「本当に、前に来た時はここまで出来ていなかったですもんね。」

 

黒木「前回来て頂いた時はロータリーの屋根が出来ていなかったと思います。
今年の5月に完成したばかりなんですけど、日田杉を使ってまして。」

 

井門「あぁ、だからまだ新しい良い匂いがするんですね~。」

 

黒木「はい、日田市は林業の町ですので、シンボルの日田杉を使う事で、
地元の方にはより親しんで頂いて、外から来た方には興味を持ってもらう。
そんなコンセプトで日田杉が使われております。」

 

井門「前回お邪魔した時はお伺い出来なかった場所があって、
今回はいよいよお邪魔出来るんですよね?」

 

黒木「はい、まずは小鹿田焼の里に参りましょう!」

 

 

 

前回お邪魔した時は大雨の影響で取材が叶わなかった小鹿田焼の里。
日田駅前から車を走らせること約30分、山間に突如現れる集落が小鹿田の里です。

 

 

 

 

 

 

 

 

井門「いやぁ、この集落の風景は本当に美しいですね…。」

 

黒木「地区全体が重要文化的景観として認定されているんです。
ここに来るとなんとも気持ちが癒されるんですよね…。」

 

井門「分かります。物凄く分かります!
前回黒木さんが“小鹿田の里は絶対行った方が良い”って仰ってたのも分かりました!」

 

黒木「良かったです(笑)僕もここに来て地元の方々とお酒を飲んだりするんですけど、
時間を忘れてしまいますもん。」

 

井門「でも黒木さん、なぜに“小さい鹿の田”で“おんた”と読むんですか?」

 

黒木「この辺りはかつて焼き物だけやってたわけじゃなくて、
農業…お米も作っていたんですね。この地区は日田市の中でも北に位置していて、
かつてはなかなかお米も育ちにくい場所、
“鬼の田”で“おにた”“おんた”と呼ばれていました。」

 

井門「ふむふむ。」

 

黒木「その後、年貢から逃れる為に“隠す田”“おんた”と名前を変えて。」

 

井門「ふむふむ。」

 

黒木「それで…いつからか“小鹿田”“おんた”になった…という…。」

 

井門「黒木さんでも分からないんですね!?(笑)」

 

黒木「はっきりとした経緯が実は分からないんです(笑)
なので窯元にお邪魔して聞いてみましょうか。」

 

 

 

名前の謎も深まるばかりだけど、なんと言っても小鹿田焼の凄さですよ。
焼き物好きなら知らない人はいない小鹿田焼。
世界中に愛好家がいて、ミシュランの星付きレストランでも使われる焼き物です。
300年前からその歴史は始まったと言われていますが、
今でも工程のほとんどはかつてのまま。
唐臼で挽いた陶土を粘土にし、
その技をそれぞれの窯元が一子相伝で継承し続けている物凄い焼き物なのです!
里を歩けばどこからともなく聴こえてくる、

 

“ギィ~、ドン!ギィ~、ドン!”

 

という唐臼の音。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒木「これが日本の音風景100選に選ばれた唐臼の音です。
九州北部豪雨では甚大な被害を受けたのですが、様々な方の尽力で復旧しました。
あそこにも見えますが、あれが唐臼です。」

 

井門「上から流れてくる川の水を溜めて、
“ししおどし”の様な仕組みで土を砕いているんですね?」

 

黒木「そうです、ああやって土を砕いて小鹿田焼の原料となる陶土を作っているんです。」

 

 

 

静かな集落に響き渡る川の流れと唐臼の音。
都会では絶対に味わえない、なんとも贅沢な音風景が広がります。

 

 

 

 

 

 

 

 

小鹿田の里には全部で10軒の窯元があり、
技法は一緒なのだけど、それぞれの作品に窯元の個性が出ると言います。
我々が向かったのは黒木史人さんの工房。
作業中の工房にお邪魔しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

井門「黒木さん、小鹿田焼はその技術が一子相伝とお伺いしてますが、
もしかして隣にいらっしゃるのは息子さんですか?」

 

黒木「違う違う!(笑)」

 

隣の男性「違う違う!(笑)」

 

 

 

ごめんなさい(笑)
隣で作業していた方は自宅の工房が改修中で、
たまたま作業場を借りていただけだったそうです…。

 

 

 

井門「“小鹿田”で“おんた”と読む謎についてなのですが…。」

 

黒木「昔は鬼の田んぼで“おんた”だったみたいですけど、
何故小鹿田で“おんた”になったのかははっきり分からないですね…。」

 

 

 

やはり読み方の変遷は謎に包まれたまま。
ただしかし名前の変遷はそこまで重要な事ではないのかもしれない。
大切なのはこの技法が一子相伝で守り続けられていることで。

 

 

 

黒木「代々受け継がれてきましたけど、
土地が狭いので分家が出来なかったのも理由の一つかもしれませんね。
我々からすればこれ(小鹿田焼)は文化じゃない。
長く続けば良いとは思います、生業だから。
でも文化では無いんですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

蹴ろくろを操りながら、真剣な面持ちで皿と向き合う黒木さん。
出来上がった作品を見せて頂きましたが、どれもなんとも言えず素晴らしいのです。
*永尾Dは皿を2枚、僕も中皿を1枚購入しました。
どんな料理にも合わせ易く、重宝しております!

 

 

 

 

 

 

 

 

黒木「小鹿田焼の職人さん曰く“俺達は作家じゃない、職人だ”なんです。
なのでどの窯元の作品にも職人の名前が彫られていないんですよ。」

 

井門「なるほど…日常使いの物だから、芸術品ではないと。
作家が作るのは1点物の芸術品だけど、小鹿田焼はそうじゃないんですね。
職人は高いレベルで同じ物を何十点、何百点も作れなければいけない。
そう言う意味で日用品である小鹿田焼を作るのは職人であると。
そういう考え方なのかもしれませんね…。格好良いなぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

黒木「続いては日田市民のソウルフードを食べに行きましょう!」

 

井門「やった!日田焼きそばですね!!」

 

 

 

これを書きながら思い出しただけでお腹が鳴ります(笑)
日田市民のソウルフードと言えば日田焼きそばなんですが、
その中でも代表的なお店が「惣夫恋」です。
昭和32年創業の惣夫恋は、市内のみならず関東にもお店を出す名店。
その本店にお邪魔しました!

 

 

 

 

 

 

 

 

お邪魔したのは12時前だったんですけど、中はお客さんで賑わってます。
そしてどのお客さんも食べているのが焼きそば!

 

 

 

黒木「元々日田焼きそばってラーメン屋さんのサイドメニューから始まっているんです。
こちら惣夫恋さんは麺も自家製ですけど、もやしも自家製。
とにかくこだわって作ってるんですよ。」

 

井門「カウンターの前に陣取らせて頂きましたので、
ライブキッチンですね(笑)では焼きそばをお願いします!」

 

 

 

そうして始まった惣夫恋焼きそばのクッキングライブ!
なんと言っても特徴は麺を茹でてから焼きつけるというスタイルでしょうか。
『炒める』んじゃなくて『焼き付ける』。
そして真ん中に豚肉を乗せてまた焼き付けていく。
そうして麺をパリッパリにして仕上げていくんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒木「作り方やレシピは当然同じなんですけど、
職人さんによってやはりちょっと違いはあるみたいで、
日田の人でも惣夫恋のこの店が好きってのがあるんですよ。
今日もカウンターの中に高校生っぽい男の子が立ってますけど、
僕も高校生の頃にこの店でバイトしてました(笑)」

 

井門「マジっすか!(笑)」

 

 

 

惣夫恋はそれほどに日田の人にとって身近な存在なのでしょう。
そうこうしている内に焼きそばが出来上がりました!

 

 

 

 

 

 

 

 

井門「おぉ~、鉄板の上に熱々ですね!
かなり濃厚な香りもしますが、頂きます!!(モグモグパリパリ)
旨いっ!!
麺の食感も野菜のシャキシャキ感も濃厚な味わいも最高ですね!
麺を焼きつけてあるのでコクが凄い。これは食べ応えがあるけど、
普通盛りならペロっと食べきっちゃいますね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうなのです。
あまりの美味しさにモリモリ食べてたらあっと言う間に食べ終わっちゃって(笑)
全員『大盛りでいけた』と悔やみました。。。
次回日田に来る時は大盛りで頼もう!心にそう誓って、次の取材先です。

 

 

 

黒木「続いてはいよいよ間近に迫った日田祇園祭です!」

 

井門「まさに今度の7月27日・28日の土日に行われるんですよね。
準備で大変な時じゃないですか?」

 

黒木「まさにいま絶賛準備中の山鉾を見に行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳でやって来たのは日田祇園山鉾会館。
中では豪華絢爛な山鉾が展示されていて、
鋭意制作中の物も並んでいます。
日田祇園祭は豆田地区4基、隈・竹田地区5基の合わせて9基の山鉾が町を練り歩き、
その美しい姿が夏の夜の日田の町を彩る、日田市民にとってなくてはならないお祭り。

 

 

 

黒木「祇園祭の2日前の25日にはその山鉾が一同に会する集団顔見せも行われます。」

 

井門「日田の人にとっては特別なお祭りですよね?」

 

黒木「間違いありません。2016年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されました。
2年前の九州北部豪雨の時には集団顔見せは行われませんでしたが、
それでも祇園祭は行われたんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒木「この辺りは山鉾が通るので電柱も高くなってるんですよ!
それでも毎年どこか引っ掛かるんですけどね(笑)」

 

井門「確かに電柱も山鉾会館も高さがありますもんね!
五所川原の立佞武多みたいな感じもありますね。凄いなぁ、本番は綺麗だろうなぁ。」

 

 

 

日田の方々にとって夏の一大イベント、日田祇園祭。
約300年の伝統を誇る日田の4大祭りの一つを、ぜひ体感してみてください!
僕もこのお祭りは「今回の旅の忘れ物」として、いつか必ず見に来ます!

 

ラストはお待たせ!
おじ散歩の定番になりつつある(ない)、入浴シーンでございます(笑)
日田駅前から車で30分弱でしょうか。
ここも前回の旅の忘れ物!天ヶ瀬温泉ですよ、みなさん!

 

 

 

黒木「温泉の前に、
マツコさんの番組で取り上げられて一躍有名になった滝を見ましょう!」

 

井門「それは天ヶ瀬駅からも近いんですか?」

 

黒木「こちらになります!」

 

 

 

そうして案内された滝。
確かに駅前からだと歩いて5分ほどの距離なのだが、
その距離にして、この迫力!!

 

 

 

 

 

 

 

 

黒木「たまたま雨も降って水量もあるので…今日は見ごたえがありますね。」

 

井門「黒木さん、この滝は?」

 

黒木「はい、こちら桜滝といいます。」

 

井門「桜滝ですか?」

 

黒木「滝が上から落ちてきますよね?
今も見えますがそうすると打ちつけられた滝の飛沫が舞い上がります。
この舞い上がった飛沫が桜の花びらの様に見える所から名付けられました。」

 

井門「おぉ…確かに無数の飛沫が舞ってますもんね。
しかし駅からこんな近い場所に、この迫力の滝があるなんて…。」

 

黒木「ここまでの道も歩き易いですし、
驚かれる方も多いですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして天ケ瀬と言えば勿論、温泉であります。
おじ散歩の一行は黒木さんと共に天ヶ瀬温泉の共同浴場へ。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

一行「あああ~、
気持ちいいなぁ~~~!!!

 

黒木「大分県は“おんせん県”ですけど、
この天ヶ瀬温泉は別府、湯布院と並ぶ三大温泉の一つなんですよ!」

 

井門「となると、かなり今は穴場の温泉になりますね。」

 

黒木「まだ外国人観光客の方も少ないですし、
でも天ヶ瀬温泉はこれから確実にブレイクする温泉だと私は思ってます!」

 

 

 

おじ散歩の面々は黒木さんと共に共同浴場“薬師の湯”に浸かりました。
ここは川に面した共同浴場で、着替えは野ざらし(笑)
勿論、入浴には湯浴み着や水着を着て入りますが、着替えは基本外です。
川の向こうには男はつらいよでも使われた温泉ホテルなどが建ち並び、
ホテルの窓辺で寛ぐ人たちもおります故、ええ、丸見えです(笑)

 

 

 

井門「まぁ、でもみんなで入ればねぇ。」

 

永尾「全然大丈夫だよね。」

 

黒木「ここに昼間入るのはなかなか勇気が要りますけど、
こうしてグループで入れば大丈夫ですね(笑)」

 

井門「こうやって黒木さんとも文字通り裸の付き合いになった訳ですし、
これからも日田に遊びに来ますから!また御一緒させてください!」

 

黒木「はい!まだ日田には魅力的な場所がありますからね。
奥日田の方は自然と遊ぶには最高なので、お子さん連れにオススメですよ!」

 

井門「もう、そしたら今度は子供連れで奥日田に来ますから(笑)」

 

黒木「またお待ちしています!」

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、今回も忘れ物をしてしまったみたいです(笑)
でもこうして来る度に違う魅力を見せてくれる日田市。
そしてその魅力を余すところなく語ってくださる黒木さん。
旅って本当にいいものだなぁ…と日田に来る度に思ってしまいます。
今回お伝え出来なかったですけど、
例えば前の日の夜にお邪魔した焼き鳥屋さんの美味しかったこと…。
もみじのおじさんのエピソードもどこかで語りたいなぁ(笑)
豆田町のお蕎麦もまた食べたいし、薫長酒造さんは改めて取材したい。
今回は豆田町のぶらりが出来なかったんですけど、羊羹…食べたかったなぁ。
そうだ!駅前の餃子、これは食べにこなきゃいけない。

 

天領日田は豊かな水が流れる水郷。
そして林業が盛んな緑豊かな町。

 

この夏は皆さんも日田を訪れてみてください!
きっと僕の様にその素晴らしさに魅了されるはずです!