日本最大の海賊王!村上水軍の真実…。|旅人:井門宗之

2014-05-09

 

2014年の本屋大賞に和田竜さんの「村上海賊の娘」が選ばれた時、
ある男がニヤリと笑った。
この本が大賞を取るであろうとにらみ、かなり前から動いていた男。 


ヤジキタの海賊王と呼ばれた男(本が違う)、ミラクルである。
村上海賊の娘を読まれた方、主人公の村上景の父で、
当時最強の海賊と呼ばれた男の名を覚えていらっしゃるだろうか? 


そうです…、能島村上の主、村上武吉その人であります。 


そして何を隠そう、ミラクル氏の名字は…吉武…。

 

 

ミラクル「ほぅら、やっぱり大賞取ったでゲスよ。
和田先生には随分前からインタビューのオファー取ってたし、アタシの名前も吉武…。 


これはもう呼ばれてるとしか思えないでゲス。へへへ。」

 

 

普段ならここでミラクルのドヤ顔をスルーする所なのだが、
井門Pにもスルー出来ない理由があった。

 

 

井門「実はウチの先祖、村上水軍なんだよね…。」

 

 

いざ出陣!!
ってな訳で今回は話題沸騰中の村上海賊の真実を探る為、
瀬戸内を旅する運びとなったのであります!

 

 

 

 

 

 

 

「村上海賊の娘」は戦国時代に日本最大の海賊と呼ばれた三島村上氏の中の、
能島村上の姫:村上景を主人公にしたお話し。
実際にあった木津川合戦を描いた戦国時代小説であります。
死と隣り合わせながらも、颯爽と生きた海賊たちの姿が実に躍動感溢れ、
僕もページを捲る手が止まりませんでした。
読み進めるにつれ思ったものです。
――実際の村上海賊たちはどんな人達だったんだろう?

 

まずはその姿にしっかりとした輪郭を与えるべく、 


大島にある村上水軍博物館へと向かいました。

 

 

 

 

 

 

学芸員の田中謙さんは実際に能島の土壌調査などもされた研究者。
館内2階に案内頂くと、窓から見える瀬戸内の島の場所を確認してくださいました。

 

 

田中「瀬戸内の島々がここから見渡せますが、
あの小さな島が能島城があった能島、その隣が鯛崎島ですね。」

 

井門「いきなりっ!! 


最強の海賊王の居城があったが目の前にあるわけですね!? 


本にもありましたが…小っちゃ!!

 

田中「(笑)勿論、あそこに全てが収容されていたわけではありません。
対岸の島にも能島村上が詰めていたと考えられています。」

 

 

 

 

 

 

でもね、小さな島が沢山あるからこそ、そこを流れる潮流は激しくなるわけです。
それが他者の侵攻を阻む大きな助けとなった…と。
それに関しては後にYAJIKITA一行も身体を張って味わう事になるのですが…。

 

 

田中「まずは海賊が使用していた船の模型をご覧ください。」

 

 

 

 

 

 

井門「これは…七五三兵衛が道夢斎と操って、城門の様に閉じた…ゴニョゴニョ」

 

田中「当時は大型の安宅、中型の関船、小型の小早と3つのタイプの船がありました。
大将級が乗っていたのが一番大きな安宅になります。」

 

 

中の展示物は貴重な物が多い。
実際に舟戦に使っていた武器などもしっかりと展示してある。

 

 

井門「これは…吉継の武器…ヤガラモガラ…ゴニョゴニョ」

 

田中「井門さん、随分読みこまれていますね(笑)」

 

 

 

 

 

 

いや、実際に本を読んでからここに来るとそりゃテンションが上がりますよ!
瀬戸内海を渡る時に実際に使った船の通航手形とか、
合戦の陣計をシュミレーション出来るような大きなボードとか…。

 

 

田中「それでも実は村上海賊にまつわる資料は少ないんです。 


なので実際がどうだったのか、謎が多い存在でもあるんですよ。」

 

井門「えぇっ!!最強って言われているのに…何故ですか?」

 

田中「村上家は大名ではありません。
なので紙に記された資料的な物が圧倒的に少ないんです。」

 

井門「そうか。あくまでも武将だったから…でも陸には大名がいたわけですもんね?
どうして滅ぼされなかったんですか?」

 

田中「やはり瀬戸内の潮流が彼らを守っていたり、
その戦闘力の高さもあったりで簡単には攻められなかったんでしょう。」

 

 

あーーー!!!!
そうだそうだ、基本的なことを忘れてた!!(忘れんなよ、おれ)
「海賊」とは言っても現代に通用している「海賊」とはイメージが違うんです!
今のイメージだと、船の強盗団みたいな部分があると思うのですが、
村上海賊の時代は違った。
彼らは瀬戸内海を通る船から通行料を取りながら(それで家来を養った)、
瀬戸内海の治安をしっかりと守っていたのであります。
さながら、海の保安官といったところでしょうか。
保安集団、村上一家…みたいな感じかな(笑)

 

館内を進むと能島の立体図があったり。

 

 

 

 

 

 

地質調査をする田中さんのパネルがあったりもします(笑)

 

田中「和田竜先生もこの博物館には何度も足を運んで、
村上海賊について取材をされていたんですよ。」

 

井門「その中から村上景で物語を書こうと思ってわけですもんね。」

 

田中「実はここに家系図があるのですが…。」

 

 

 

 

 

 

これは景親の流れを記した家系図になるのだが…。
ほうほう、武吉の間に元吉と景親がいて、その下に子供がいて…って、 


おおーいっ!!!景がいねぇっすよぉ!!!

 

 

田中「そうなんです。こちらの家系図には、 


武吉に娘がいたという記録が無いんです。

 

 

一大事である。
もう全ての根っこが揺らぐ大問題である。
あれだけ綿密な取材を重ねて和田先生が書き上げた「村上海賊の娘」。
そもそも「娘」がいなかっただなんて…!!?

 

 

田中「ただし、ひとつだけ手がかりがあってですね。
山口にある村上家の家系図を記したものの中に、
ひとつだけ武吉に娘がいたという記録が残っているものがある…と。」

 

井門「えっと…名前は景ではないのですか?」

 

田中「えぇ、そこにはただ“娘”とだけ記されているんです。」

 

井門「となると和田先生はその資料だけを見て…」

 

 

上下巻に渡って描かれる壮大な物語「村上海賊の娘」。
生き生きと物語の中で躍動し、恋をし、涙し、成長を遂げていった景は、
史実の中ではただ一文字「娘」とだけで表されていたのです。
和田先生の想像力…見事というしかありません。
館内には景親の肖像画も!

 

 

 

 

 

 

村上水軍のリアルに触れると、より物語に厚みが増します。
本屋大賞の影響で訪れる方も増えるでしょうが、
ファンならば是非こちらには足を運んで戴きたい!
田中さん、貴重なお話し有り難うございました!!

 

 

 



 

 

ミラクル「続いては潮流体験でゲス。
今日は天気がギリギリ大丈夫そうなので、船が出るでゲスよ。」

 

井門「村上水軍を守っていた瀬戸内の潮流を体験できる!?
ミラクルさん、美味しいとこ押さえてるじゃないの~!いきましょ!」

 

 

 

 

 

 


能島と鯛崎島!

 

 

 

 

 

 


そして島に近付くとその潮流の凄さっ!!

 

 

 



 

 

いや実際にその流れの速さには瞠目しました。
急流がうねりを上げて渦を巻いている。
しかも同じ形の渦は2度と作られないんです。
僕も潮の流れを読もうとしてみたんですが、にわか航海士気取りにはこれは無理!
これ、ここに落ちたらひとたまりもないぜ…。
Dのゴルちゃん、波の音を録ろうと必死で船からマイクを海に向けてましたが、
落ちてしまうんじゃないかとこっちもハラハラです。

 

今はエンジンのついた船ですけど、武吉の時代は手漕ぎの船なわけですから…。
ここを手漕ぎで移動…想像するだけで恐ろしい(汗)
所要時間はおよそ40分ですが、ここも是非ぜひ体験して欲しいスポットです!

 

 

 



 

続いて訪れたのは大三島。物語にも出てくる大山祗神社を訪ねました。
ご案内頂いたのは禰宜の三島さん。

 

 

 



 

ここが凄かったんです!天然記念物の楠の迫力もそうでしたけど…。

 

 

 



 

 

スタッフ全員驚いたのが、こちらにある宝物館。 


三島さんはサラッとご紹介して頂きましたけどね、国宝が8点ですよ! 

 

重要文化財が75点ですよ!!
弁慶の薙刀、巴御前の薙刀、義経の鎧、頼朝の鎧、木曽義仲の鎧…

 

 

 

 

 

 

 

 

本編でも言いましたけどね、
あまりにも国宝に触れ過ぎて、頼朝の甲冑を見てもあまり驚かないという事態に(笑)
よくないですね、当たり前の日常の中にこそ、幸せは詰まっておる…と。

 

 

三島「展示してある刀など、本来は時代の中で紛失したり壊されたりと、
完全な形で残ることは珍しいんです。
では何故この神社にこれだけの数があるかと言うと、
戦勝祈願をした武将達が戦勝後に武具などを奉納するんですね。
神社に納められたから、時代ごとの武器や武具が完全な形で残っている、と。
これは神社ならではだと思います。」

 

 

三島村上氏も信仰したというこちら。
ここには村上武吉が詠んだ連歌も残っていると言います。
数多くの武将が祈りを捧げた地で、静かに手を合わせるYAJIKITA一行なのでした。

 

 

 

 

 

 

最後は「しまなみ海道」を愛媛県から広島県因島へ向かいます。
お話しを伺ったのは因島の郷土史研究家でもあり、 


村上水軍の歴史に詳しい、今井豊さん。 


因島水軍城で村上家のその後についてもお話しを伺いました。

 

 

 



 

 

井門「結局のところ村上武吉という人はどんな人だったんですか?」

 

今井「村上武吉は武将として大変勇猛でありました。
2回ほど毛利も裏切っています(笑)」

 

井門「では物語のその後の村上海賊たちは…?」

 

今井「能島・因島村上に関しては、
護衛船団…平和な時代の海軍軍事組織として江戸時代を過ごします。
来島村上はその後、大分県の山の中に領地を貰いますが、
明治時代には子爵の爵位を賜り八王子に住むことになるんです。」

 

井門「えぇぇっ!?
という事はそれぞれがそれぞれの道を歩んでいくんですね…。」

 

 

 

 

 

 

考えてみれば織田信長にせよ豊臣秀吉にせよ、
村上海賊には一目を置き、その機動力に頼るところも大きかった。
いや一目置くというか、その力を無視する事が出来なかった。
これは改めて考えると凄いことです。
天下人にそう思われる事こそ、最強の証ではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 


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芸予諸島を巡りながら村上海賊の真実を探ったYAJIKITA。
もうね、その真実は途中から重要じゃなくなってしまいました(笑)
だって目の前に広がる風景の全てがあの村上海賊が見ていたもので、
彼らが体感した潮流を2014年の現代に同じ様に体験出来て。
目を閉じると、燦々と太陽を浴びながら瀬戸内の海を守る、
そんな荒くれ者達の声が聞こえてきそうなんですもん。

 

きっと景は本の中に出てくるように家来を連れて、
縦横無尽にこの海で暴れていたんだと、そう思います。いやそう思いたい。

 

瀬戸内の海の様にキラキラと輝く戦国時代の海賊たち。
実際にこの場所を訪れて、恐らく当時の村上海賊たちも、
気持ちの良い男達が多かったんだろうなと、そう思いました。
この海が育んだ海賊たちだ、間違いない。

 

本屋大賞の受賞からしばらく。
既に手にとって読んだ多くのリスナーさんもいらっしゃるでしょう。
そんな皆さんには、今回のYAJIKITAの旅は間違いなくオススメです!
是非物語の登場人物になりきって、瀬戸内の海を体感してください。

 

そうすればきっと、あなたの耳にも、村上景の声が聞こえてくるはずです!