「のぼうの城」公開直前!忍城の秘密を探る!|旅人:安田美香

2012-10-19

 

 

わっしょーい!みなさん、お久しぶりでございます。隠れ歴女の、安田美香でございます。
↑社会科の教員免許を、一応持っております。使ったこと、ないけど…(笑)



みなさん、小説『のぼうの城』を、読んだことがありますか?

 

天正18年(1590)年3月、豊臣秀吉は関東平定のため、そのころ関東を支配していた北条氏の拠点である小田原へ出陣しました。忍城主の成田氏は、北条氏に属していたため、秀吉方の武将、石田三成によって攻められることになりました。
石田三成に率いられた二万を超える軍勢が忍城に迫ります。氏長の室、家臣一同は兵や領地民合わせて二千人と共に篭城を選択。三成は地形や季節を考えて水攻めを計画し、約1週間で延長28キロにもおよぶ堤を築き(石田堤)、利根川と荒川の水を引き入れるという大作戦をおこないました。?忍城を守る成田長親(のぼう様)は、水攻めにも屈せず、小田原城降伏までの間見事に耐え切ったというお話です。

 

130万部突破、2009年本屋大賞2位を受賞した大ベストセラー。
安田は、昨年の小田原ロケの際に、井門アナに薦められて読んだのがきっかけだったのですが…これがメチャメチャおもしろいんです!「早く、次のページをめくりたい!」と思わせられる、不思議な力を持った小説なんです。
以来、安田はのぼう様の熱烈なファンなのですが…その『のぼうの城』が映画化!ついに11/2公開ということで、「のぼう」ファンが多いヤジキタスタッフ一行は「…い、いてもたってもいられん!忍城へ、行ーくーぞぉー!!フォオオ~!!フォオオ~!!(←ホラ貝の音)」と、のぼうの城の舞台となった埼玉県行田市へ出かけました。

 

 

 

東京駅で駅弁やお茶を買いこみ、新幹線「Maxとき」で、熊谷へ。
安田「新幹線だー!わぁーぃ、2階建てだー!!すげー!!!速ーぃ!!!!どへっっぇー!!!!!」
スタッフ「…………。」
安田「わははは!ここでワシが皆に、"2階建て新幹線の楽しみ方を教えてしんぜよう!まず、1階に乗るのがポイントだぞ!窓の縁にアゴを乗っけて、ほら!あなたたちみんな遠慮しないでやりなさいよ!おもしろいから!発車のベルが鳴ると……ひゃっほーい!ちょうど目の高さにホームがあって、新幹線が走り出すと"ヒューン!ヒューン!ってホームが迫って来て、まさに地をはって進むかのような臨場感が味わえるのだよ!!そして…さぁ、ホームが切れた瞬間に……バーン!と、宇宙へ飛び出したぁー!!」

 

 

…往きの車中って、なんでこんなに楽しいんでしょうねぇ。

 

天むすをほおばりながら、安田のテンションはすでにMAXとき。
ヤジキタのスタッフに、「仏のY山さん」と呼ばれる、まさに仏のように優しいディレクターがいるのですが、そのY山さんですら、もう笑顔がひきつっている…。(ちなみに前回の福島の旅では、あの仏のY山さんが「…や、安田、うるせぇーっ!(笑)」と声を荒げたという伝説も作りました)
一体今回はどんな旅になるんでしょうか…。しゃべり足りないうちに、あっという間に東京から40分で熊谷に到着です。

 

熊谷駅からはレンタカーで、行田市へ向かいます。
日本で1番熱い場所といわれる熊谷は、思ったより暑くなくて、快適です。秋のさわやかな風に、旅行シーズンの到来を感じます。
30分ほど走って、忍城のある行田に到着です!

 

 

 

埼玉古墳群の入り口で、行田市シルバー観光ガイドの真尾正子さんと待ち合わせ。

 

 

 

 



 

 

 

まずは、石田三成が本陣を築いた丸墓山へ案内していただきました。
赤い彼岸花が咲く遊歩道を歩いていると、
真尾さん「今歩いているこの道も、石田堤の跡なんですよ」とな。
なんですと?さっそく、今歩いてるこの道が、石田三成が忍城攻めの際に作った、あの石田堤なの?す、すごい!言われてみると、この道は周りよりちょっと高くなっていて、なるほど堤の跡なんだなぁと感じることができます。

 

 

 

石田三成が本陣を築いた「丸墓山古墳」

 

 

 

 

目の前には、こんもりした丸い丘が見えてきました。これが丸墓山かぁ。98段の階段を上がると…おぉー!よい見晴らしで、行田の街が一望です。天気がよければ浅間山、赤城山、男泰山まで見えるそうです。石田三成がここに本陣を築いたのも、納得だわ。

 

 

 


行田市シルバー観光ガイドの真尾正子さん


「忍城」が遠くに見えます。

 

 

 



山頂からは、復元されている忍城も見ることが出来ます。近代的な建物が建ち並ぶ街の中にあるので、400年以上も前の風景とは様変わりしていますが、それでも、どんな思いで三成がこの丸墓山から忍城を眺めていたのか…ロマンがふくらみます。
映画の主人公・のぼう様(成田長親)は、この丸墓山のふもとまで船でこいで来て、決死の思いを胸に楽しげに田楽踊りをしたんだなぁ…。ここで、武将の魂のやり取りがなされていたとは…感激っす!

 

 

 

 

車に乗り込み、5分くらい走ったところで、真尾さんが車を停めます。

 

真尾さん「ここも石田堤が残っている場所です。これが、石田堤ですよ」
安田「へ?これが?えぇー!?こんな、普通の道の傍らに?」

 

 

 


一部に残る「石田堤」


水攻めの様子

 

 

 

 

高校生が自転車で行き交う道の傍らにも、石田堤が残っているではありませんか!現在は日常の風景に溶け込んでおり、堤としての高さはさほど感じませんが、当時は3.5mほどの高さで、幅が19mあったそうです。
自然の堤防を利用しながら、28kmもの長さの堤をなんと1週間という速さで築いたんだとか。農民に褒美を与えながら、夜は割り増しし手当を出して、お金にモノを言わせて作ったというから、いかにも秀吉軍らしいですな(笑)。

 

 

 



 

 

 

 

堤が決壊したといわれる場所も見ることができます。現在は橋がかかっていて、日常の風景の中に溶け込んでいます。
忍城より、こちらの方(現在の下忍や堤根方面)が土地が低かったために、持ちこたえられず決壊したと言われていますが、逃げた農民が堤を壊したという説も残っており(映画ではコチラの説をとってます)、本当のことはわからないそうです。フフフ、妄想が広がりますなぁ。

 

 

 



 

 

 

さらに少し歩くと、石田堤の地層の断面も見ることができます。
黒、グレー、茶色など、いろんな種類の土が積まれていて、バームクーヘンのようになっているんですが…これは、種類の違う土を積んだ方が堤防が強くなるということで、あえて農民にあちらこちらから運んだ、様々な土を積ませたそうです。

 

 

 

 



 

 

 

さらに進むと、石田堤に上がることもできるんです!堤にかけられた階段をあがると…おぉー。
上ってみると、やはり高さを感じます。よく見ると、水が入った堤防の右手は土地が低く、左手は高いという違いを見て取ることができます。

 

 

 

 

 

 

石田堤には緑がいっぱいで、のどかな光景が広がっています。たぬきも出没するんだとか。もしかして…のぼう様の生まれ変わりだったりして!

 

 

 

 


畑にいた…動物?のぼう様

 

 



 

では、忍城へいざゆかん!と、車を走らせていると、ふと本屋さんの店先に「幕末下級武士の絵日記、有ります」という、変わった看板が出ているのに気づきました。小説『のぼうの城』のディスプレイも並んでいます。
安田「今、変わった本屋さんがありましたよー。なんか。歴史好きなカンジ。"忍書房"だって」
ヤジキタスタッフM氏「あぁー!そこ知ってる!本当は行きたいなと思っていたんだけど、土日しか空いてない本屋さんだから取材は難しいかなと思って……って、おぉ!今日、土曜日じゃん!!」

 

ロケに訪れた日が、運良く土曜日!ということで、ドキドキしながら「忍書房」の入り口をくぐる、ヤジキタスタッフ一行。
…うぅ、偏屈なオヤジさんが出て来たらどうしよう…アポ無しで突撃取材なんて、受けてくださるかしら…。

 

出迎えてくれたのは、店主の大井達夫さん。肌着に首からタオル、眼鏡姿の出で立ちは、いかにも学者肌!というカンジで(『となりのトトロ』に出てくる、お父さんにそっくりでした!)。そして何より、優しそうな方でよかったぁー。ふう。

 

 

 


忍書房の大井さん


 

 



店内には、忍城にまつわる書籍がいっぱい。忍城を舞台にした本は、『のぼうの城』の他にもいろいろあるんですねぇ。武勇の姫と言われた甲斐姫が主人公の小説や、のぼうの城のマンガ、歴史的にも貴重な幕末下級武士の絵日記や、マニアックな古墳の本まで、半端じゃない品揃えです。

 

「たいした勉強、してないんですけどね(笑)」と言いつつ…大井さん、忍城にメチャメチャ詳しいじゃないですか!!!!(笑)
普段は出版会社にお勤めの大井さん。お父様が立ち上げたお店をなんとか継いでいこうと、土日のみ忍書房を開けていらっしゃるとのこと。
行田にきたらぜひ訪れてほしい本屋さんです。大井さんのいろんな忍城こぼれ話が聴けますよ。

 

(注)大井さんは平日東京で出版社勤めのためお店にはおりませんが、お姉さんが店を切り盛りしてくれておりますので平日も是非お店にいらしてください!

 

 

 

 

さて、いよいよ忍城に到着です。

 

関東七名城に謳われた忍城は、文明年間(1469~86年)の初め頃に築城され、上杉、北条氏との戦いにも落城せず、石田三成の水攻めにも耐え、戦国の世を生き抜いた名城です。忍城は明治維新の際に壊されましたが、忍城本丸の跡地に往時の面影を再現した忍城址が整備されています。

 

 

 

 



 

 

 

真尾さん「左手は土塁が積まれていまして、この奥が本丸になっています。右手には二の丸があったそうですが、今は近代的な中学校の校舎が建っています」
忍城の歴史を伺いながら歩いていくと…おぉ!本丸が見えてきました。昭和63年に再建されたという、三階建ての天守閣が天に向かってシューッ!とそびえたっています。青空に映える白壁の天守閣が、目にまぶしいです。

 

 

 



 

 

 

真尾さん「忍では、天守閣とは言わずに、"御三階櫓(ごさんかいやぐら)"と言うんですよ。当時、幕府の財政が圧迫し、天守閣建設の予算がなかなかおりなかったため、「櫓(やぐら)を建てるんだ」ということで許可をもらって建設したそうです。
なーるほど。名前の秘密を聞いて、笑みがこぼれます。天守閣ならぬ、天守閣というわけですな(笑)。この御三階櫓の一部は、郷土博物館の展示室となっていて、行田の歴史を語り継いでいます。

 

 

 

 

いよいよ、門をくぐって本丸に入ります。
忍城は成田下総守顕泰によって築城されたと伝えられています。湿地帯を巧みに利用した城で、お堀と橋を多用した、難攻不落の名城とうたわれました。
石田三成が水攻めを行っても、この本丸は落城しなかったため、「それは城が浮くからだ」と噂され、"浮き城"という別名が生まれたそうです。

 

真尾さん「豊臣秀吉に攻められても落ちなかった城は、この忍城だけなんですよ」
そーなんですよね。ワタクシ、知りませんでした…。あの秀吉に落とされなかった城があったなんて!歴史好きな方でも、これはなかなか、知ってる人は少ないのではないでしょうか。知る人ぞ知る隠れた名城が、ここにあったわけです。

 

真尾「のぼう様は、武芸もダメ、農作業を手伝うのが好きだったそうですが、農作業も下手で、"でくのぼう"というあだ名を農民からつけられていたそうです。でも、さすがに"でくのぼう"ではマズいということで、"でく"をとって"のぼう様'と読んでいたそうです。ですがその分、家臣や農民たちからの信頼が厚くて、いざ戦となると"俺たちがのぼう様を助けてやらなければ"といくことで、結束したそうですよ」
う~ん。のぼう様は、愛されていたんですねぇ。2万もの三成率いる大軍に、たった500人の軍勢で立ち向かった、これほどの戦意は、のぼう様への仲間の想いがあったからなんでしょうね。

 

 

 

 



 

 

 

安田「地元行田に住んでいる人は、のぼう様のことはみなさん知っていたんですか?」
真尾さん「成田長親という名前は知っていましたけど、のぼう様として、その人柄などが詳しく知られたのは、小説が出てからだと思います。映画化で、さらにたくさんの人に知っていただけたらと思います!」

 

…真尾さん、熱いです!のぼう様は現代においても、真尾さん始め、たくさんの人に愛されているんですねぇ。

 

 

 

 

 

そして忍城では、「忍城おもてなし甲冑隊」がお出迎えくれます。映画『のぼうの城』にもでてくる、成田家の勇猛果敢な武将達が、勇壮な演舞パフォーマンスをみせてくれるんです。
安田「キャッ!キャッ!丹波だぁ!和泉だぁ!靭負だあぁ!かっちょイイー!!グフフフッ!!!」
甲冑に身を包んだ男たちが、刀や槍を振り回し戦う姿に、観ている女性の皆さんの目もハートマークです…(笑)
まさに戦国時代にタイムスリップしたかのような気分を味わうことができます。

 

 

 



 

 

 

「忍城おもてなし甲冑隊」の、
「正木丹波守利英(まさきたんばのかみとしひで)」
「柴崎和泉守(しばさきいずみのかみ)」
「酒巻靭負(さかまきゆきえ)」
「足軽のだんべさん&やいちさん」
に、お話伺いました。?

 

「我々は、昨年7月に行田市の魅力を全国に伝えるべく、戦国時代より現代に蘇ってきました!忍城には見応えのある博物館もありますし、こちらの本拠地に来て、ぜひ忍城の魅力を体感してみてください。我々おもてなし甲冑隊が、心よりおもてなしさせていただきます!」

 

安田「ってゆーか、みなさん、イケメンですね?」
靭負「実際に、ぜひ見に来てください!……(ボソッと)イケメンっぷりは、成宮くん以上だからねぇ(笑)」
安田「やっぱり、映画の出演者を意識してるんですか?」
甲冑隊全員「……我々が本物じゃー!!」

 

…あわや、成敗されるかと思いましたが、一緒に写真まで撮ってもらっちゃいました。とってもフレンドリーな「忍城おもてなし甲冑隊」。11/11(日)に行われる第33回忍城時代祭では、映画『のぼうの城』にちなんだ合戦劇も行うそうですよ。この「忍城おもてなし甲冑隊」にハマっちゃう方も多いのでは!?

 

 

 

 

 



 

 

 

 

知られざる名城、忍城。行田を歩くと、そこに生きた人々のドラマに、私たちは想いをはせることができます。
映画『のぼうの城』に描かれている、潔く、剛毅に、痛快に、謙虚に、1日1日を力強く生き抜いた人物たち。
私たちは、この400年前に生きていた人たちの子孫。この人たちの血が、私にも流れているんだと思うと…誇らしいような、身の引き締まるような思いがしますっ。
みなさんもぜひ、行田を巡って、忍城のロマンにふれてみてはいかがでしょうか。
旅人は、安田美香でした!ばいなら~!!