三陸鉄道 北リアス線に乗ろう|旅人:井門宗之
2012-12-20
日本には数多くの鉄道が存在する。
YAJIKITAでも様々な鉄道の旅を皆さんにお送りしてきた。
そんな中でも今回は特に聴いて欲しい鉄道の音だ。
今回我々が向かった先は三陸鉄道、北リアス線。
そう、東日本大震災による津波で甚大な被害を被り、
現在も一部区間を運休している鉄道である。
そもそも三陸鉄道は北リアス線と南リアス線に分かれており、
北リアス線は宮古駅から久慈駅の全長71.0km。
南リアス線は盛駅から釜石駅の 全長36.6km。
2012年12月現在、南リアス線は全線で運休。
北リアス線は宮古から小本間、田野畑から久慈間で運転を再開している。
しかしこの三鉄、震災からわずか5日で一部区間を復旧させているのだ。
そこには地域の足を守る為の鉄道マン達の誇りがあった。
今回はこの三鉄北リアス線に乗って旅をする。
三陸の風景を眺めながら、
ここで生きる人たちの声を皆さんに届ける為に。
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本編では三陸鉄道株式会社の望月正彦社長とのインタビューもお聞きいただいた。
地域に根差す鉄道の必要性と大切さ、
そして三鉄を支えるファンの愛の深さを思い知った気がする。
実際に我々が三鉄に乗って取材している時も、
一つ一つの駅で切符を買って(駅名が切符に印字されるので)、
大切にしていたファンの姿を見かけたものだ。
地域の足としての存在感は勿論なのだが、
三鉄はファンに愛される鉄道なのだ。
スタートの宮古駅から小本駅へと到着。
我々は岩泉町小本地区を歩いてみる事にした。
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現在この町では漁師さんの船を使って、
「モシ竜ロマンクルーズ」なるものを行っている。
漁船に乗って海側から、この地形の入り組んだリアス式海岸を眺めよう!という企画。
さらにこの小本地区は非常に珍しい地層群がある場所で、
化石の宝庫(宝庫っておかしいか)。
日本最大級クラスのモシ竜の化石もこの地区から出土した…という事で、
海側からその出土場所を眺めたりするというのである。
太古の昔に想いを馳せるクルーズ、といったところでありましょうか。
冬の岩手の海は相当寒かったですけど、
そのロマンと漁船ならではの大迫力に僕ら全員胸が熱くなっていました。
船から降りたら今度は町のガイドである。
こちらの小本地区は明治時代…いやきっともっと古くから津波と戦ってきた町。
町の中には慰霊の碑も多く建っているのだが、
その歴史を伝えるガイドさんも実は東日本大震災前からいらっしゃった。
我々は小本の歴史を岩泉観光ガイド協会の三浦浩子さんから教えてもらった。
震災前と震災後で、この町の風景は変わってしまった。
小学校も保育園も建物が使用出来なくなり、
子供達は代わりに仮設の学校で勉強している。
(学校の新しい建て替え先が決まったそうで三浦さんもほっとされていた)
震災から1年9カ月が経過しても、何も進んでいない場所も多いのだ。
いや、何も進んでない場所の方が多いのかもしれない。
三浦さんは最後に「もう津波はしばらく来ないで欲しい」と仰った。
“絶対”とか“2度と”ではない“しばらく”なのだ。
勿論心情的には“絶対来ないで欲しい!”なのだろうけど、
これは小本で暮らす方々が先祖代々この場所で暮らす上で、
津波と向き合っていかねばならないという事を表しているように思えた。
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ここ小本からは北リアス線も一部運休区間になる為、
バスに乗り換え、一路、田野畑駅へ。
ここから再び電車に乗り換えて一路久慈を目指していく。
車両は何ともレトロな昭和…いや大正ロマン溢れる車両。
三陸鉄道は、沿岸部と山間を交互に流れる様に進む。
なのでこの路線を語るには、トンネルの存在は欠かすことが出来ない。
もうね、出たり入ったりの激しいのなんの(笑)
車両がトンネルに入る時は汽笛を鳴らすのだが、
出るとすぐに汽笛が鳴り、またトンネル。
抜けるとまた汽笛でトンネル、出てすぐにまた汽笛…。
なかなか海の風景に辿りつけないもどかしい区間もあるのだが、
でもそのせわしさが何だかとても楽しい。
そして突然視界に広がる三陸の美しい海の風景。
絶景のスポットに来ると電車はゆーっくりと速度を落としていく。
そう、“ここからの景色はじっくり見て下さいよ”という場所では電車は止まるのだ。
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流れる風景の美しさに見惚れながら、
久慈の駅から車で10分もかからないだろうか、
我々は「道の駅くじ やませ土風館」へ向かった。
ここは観光案内から物産販売まで「久慈の全てが分かる場所」と言っても過言ではない。
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久慈の色々を久慈市観光物産協会の丹野忠嗣さんにお伺いした。
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丹野「久慈は琥珀も有名ですが、
ある食べ物でいま町おこしを図っています。」
井門「食べ物って言うと…どんな?」
丹野「まめぶ汁っていうんですけどね。
これがB-1グランプリにも出品した名物の汁物なんです!」
聞けば久慈市の中でもある地域に伝わる伝統料理だそうで、
団子の汁との事なのだが…。
丹野「その団子の中にくるみと黒砂糖が練りこんであるんですよ(笑)」
井門「えっ!?スイーツ…ですか?」
丹野「いいえ、れっきとした汁物です。」
丹野さんはそう言うと驚きを隠せないYAJIKITA一行を連れ出し、
まめぶ汁を出してくれるお店へと案内してくださった。
カウンターのみの店内には確かに“まめぶ汁”の文字が。
笑顔の素敵なお母さんが出してくれたのは、
一見するとお椀に入った美味しそうな和風出汁の効いた汁物。
具材も人参やら干ぴょうやらが具だくさんに入っていて見るからに温まりそう。
問題は(問題って言うな)その団子であります。
見た目は中に甘い物が入っているとは思えないんだけど(練り込んであるから当たり前)…。
まずは冷えた身体にスープをズズっと。
井門「あぁ…旨いっすね。身体の冷えた細胞が音を立ててほぐれる感じ…。
しかも出汁の旨さがさっぱりしていて、本当に旨い。」
実は今回のロケ、取材時間の関係上昼飯抜きだったのだ(笑)
そんな中で供されたこの美味しくてあったかいスープ。
僕以外のスタッフ全員がもう仕事そっちのけ、夢中になって食べている。
一生懸命の仕事を共有した仲間とのこういう時間、
僕がYAJIKITAの旅が好きなのは、こういう時間があるからなのだ。
幸せなスープをすすりながらいざ、甘い団子へ!!
一口かじってみる…。
うん?
ん??
井門「甘い!けど、旨い!あまじょっぱい!!」
優しいスープの後にくる甘さ。
確かに黒砂糖とくるみの甘さは際立っているのだけど、
なんとも絶妙なバランスで旨味をぐーっと上げているのだから不思議だ。
日本人はこういう繊細な味を遥か昔から郷土で守ってきたんだなぁ。
心もお腹もじんわりと温かくなった“まめぶ汁”。
久慈に行かれる機会があれば是非ご賞味ください!!
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行く先々で色んな風景と出会った。
それはまだまだ元に戻っていないもの、前に進んでいるもの、
歩みを止めざるを得ないもの、様々だ。
しかしそのどれに対しても、そこで暮らす方々は尊さを抱いている。
海を憎んだ時期もあったという、それは当然だ。
しかし一方で先祖代々暮らしてきた海からの恩恵もよく分かっている。
ー恩恵を受けながら、それでも厳しい自然と向き合っていく覚悟。―
色んな話をお伺いする中で、そんな覚悟が自然と見えてきた。
強い気持ちを、感じる事が出来た。
今回取材した三陸鉄道は、全線復旧に向けて力強く進んでいる。
それは“この鉄道こそ地元の皆さんの足なのだ”、という鉄道マンの強い意志の表れなのだ。
見る方によって車窓からの風景に見え方の違いはあるだろう。
しかし是非一度乗ってみて欲しいのです。
震災から僅か5日で、一部運転を再開させた鉄道の気概を感じに。
三陸鉄道、全線の復旧は2014年。
汽笛を鳴らし、三鉄の電車が軽快に線路を走る姿を、今は楽しみに待ちたいと思う。
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