会津若松・郷土の味覚巡り|旅人:工藤彰乃

2013-01-11

 

 

今回の旅は、福島県会津若松の郷土料理、名物をお届けします!
大河ドラマ「八重の桜」の舞台として話題になっている会津若松。地名はよく耳にしますが、グルメって何があるのか全く知りません…。どんな美味しいものがあるのか楽しみに出発です。

 

始めに向かったのは、会津若松駅から車で10分ほどのところにある卸売市場。こちらに、会津の名産品を保存している会があるそうなのですが…
早速、山平会津若松青果(株)の白井芳之さんにお話を伺いました。

 

 

 

 

 


何を保存しているのか?というと、「会津の伝統野菜」です。
どういう野菜なのか?というと、「古くから親しまれ栽培されてきた伝統的な野菜。会津古来の在来種の野菜」だということです。
厳しい気候、風土、肥沃な大地の恩恵を受けて栽培されている野菜ですが、現在は生産量が激減しているため、その保存に努めているということでした。

 

例えば「会津小菊南瓜」。江戸時代からつくられはじめた南瓜で、皮が固いため長期保存ができ、冬至かぼちゃや味噌汁にも使われているそうです。「会津地葱」は、白根の部分が30cmと短めで太いネギ。薬味にするとピリッと辛く、火を通すと甘味が強いので、冬の鍋にはぴったり!「とこいろ青豆」は食物繊維が多く、タンパク質、鉄分を多く含んでいるので血行を促し、食欲増進にも効果があるといわれている、甘くて柔らかい豆。お正月に多く食されているそうです。

 

他にも、雪の中から掘り起こす「雪中あさづき」。湯がいて酢味噌で食べるのが一般的ですが、天ぷらにして食べると香りが豊かでサクサク感とジューシーさが口の中いっぱいに広がるそうです。「立川牛蒡」は、会津坂下町立川地区で多くつくられていた牛蒡で、日本に残っている唯一のアザミ葉の品種。香りが高く、肉質が柔らかいのが特徴。

 

 

 



 

 


まだまだ、たくさんあるので紹介しきれませんが、お話を聞いていると、どれも美味しそう…。ということで、味見をさせていただきました。
まずは、今から320年前からつくられているという「舘岩蕪」のお漬物(酢漬け)。漬物のカブというと、少し柔らかくなっているイメージでしたが、これは食感がしっかりしていて、カブの香りや甘味がつよく、とっても美味しい!やみつきになり、実は撮影後もスタッフ一同、あと1つ、あと1つ、と遠慮もしないで食べ、更にお土産物で売っている場所を教えていただき、買って帰りました。

 

 

 



 

 


そして、もう一つ味見をさせていただいたのは、「アザキ大根」。会津の山間地などで自生する、長さ20cmほどの大根で、根が固くて水気の少ない大根。からみ大根とも言われ、薬味に使われる大根です。おろしたてのアザキ大根を出していただいたのですが、まず見てビックリ!「本当におろしただけですか?」と聞いてしまったほど、大根おろしは、水気がなく、私が知っているモノとは大きく違っていました。「そのまま食べるには辛いですから、少しにしたほうがいいですよ。」と言われ、少しだけ口にしたのですが、思わず「辛~い!!」舌がピリピリします。なのに…


しばらくすると後味は大根の香りが広がり、あれ?美味しい…。こんなに、後にくる後味(意味わかります?)は初めての出会いでした。これが薬味に使われるというアザキ大根の美味しさなのですね。

 

 

 

 

 


用意していただいた伝統野菜の会津地葱や青豆、アザキ大根をお土産にいただきました。本当にありがとうございました。ネギはお鍋に、大根はそばの薬味に、青豆はゆでていただきました。本当に、本当にご馳走さまでした。私はアザキ大根のファンになり、まためぐり会いたいと思っています。

 

 

 



 

 


続いては、「お秀茶屋」。こちらも会津若松駅からは車で10分ほどのところにあるお店で、とても歴史のある有名店。何が食べられるのかと楽しみに向かいました。

 

お店に着くと「田楽」と大きく書いてあります。
中へ入ると、さらにワクワク。扉を開けた正面に、使い込まれているとすぐに分かる囲炉裏があります。右手はテーブル席で奥はお座敷。暖かい雰囲気のお店です。

 

 

 



 

 


ご主人の佐藤竜太郎さんにお話を伺いました。
白虎隊の隊士や土方歳三も食べたという名物の田楽がある腰掛け茶屋。このお店は創業360年もの歴史があるお店です。

 

お話をしながら、すぐに目の前の囲炉裏で焼きはじめてくれました。
白くて丸い自家製のお餅。キツネ色の四角い生揚げ。小さな四角いのが二つ刺してある身欠きニシン。秋には(残念ながら私たちが訪れたときは終わっていましたが)里芋も皮付きのまま焼いて出しているそうです。

 

 

 



 

 


それらを炭火で焼いて、自家製の味噌をつけて更に焼く。だんだんと香ばしい味噌の香りがしてきて、何ともたまりません!静かにしていると、味噌の焦げる音も聞こえます。
味の決め手ともなる自家製の味噌は甘味噌で、代々受け継がれてきた味。ですが、この味噌の作り方は、レシピなどというものは一切なく、店主のみが受け継いでいる秘伝の味なのだそうです。なんだか聞いているだけで美味しそう。

 

360年守られてきたお店と味ですが、田楽はもともと武士が持っていた食料を串に刺して田んぼや野原で焼いたのが始まり。当時、お店のあたりは河原で会津藩士専用の処刑場として使われていて、今生最後の食として田楽と清水を与えたという話は今でも語られているほど…。歴史があるというのは重いものだと知りました。
当時の清水は今もお店のそばにあって、脇には供養のお地蔵さまが何体もありました。

 

歴史といえば、こんなエピソードも。
天才画家と呼ばれている「山下清」画伯もこのお店のファン。近くのイベントで訪れていた山下清がいなくなったと思ったら、この「お秀茶屋」でお餅の田楽を食べていたとか…。本当に、映画のストーリーそのままの出来事がここで起こっていたと思ったら、なんだか嬉しくなりました。
そして、何と!手塚治虫氏も、ここで田楽を片手に仲間と語りあっていたのだと聞き、驚きました。お店の和室には、二人の色紙も飾られているので、訪れた時には見てください。

 

 

 

 



 

 


さぁ、出来上がったのでいただきましょう。
と、まずお餅をパクリ! う~ん…、何て…、美味しい!!!
焼く前は固いお餅(この固さが重要なのだそうです)が柔く伸びて、この食感と甘味噌の香ばしさがベストマッチ。何個でも食べられそうです。次に、厚みのある生揚げを…。すると、生揚げの表面の香ばしさと甘味噌の香ばしさが合わさって、お餅とは違う香ばしさに変わります。身欠ニシンの田楽は、ニシンの味を引きたたせて、また違う味わいに。

 

天才と呼ばれる人たちを虜にしたのも、よく分かりました。本当に、本当に、美味しかったです。プライベートでまた是非伺います!

 

 

 



 



 

 

さて、続いては…
会津若松駅から車で5分、七日町駅近くにある郷土料理を提供してくれる「渋川問屋」へ。

 

外観がとても素敵でした。格子が見事で、趣のある高級感のある日本料亭。と思ったのに、中へ入ってビックリ!左手に洋館の入口があり、中国製?の陶器のツボがあり、異空間。奥へ進むと日本庭園。重厚感のある不思議な造りの建物でした。

 

 

 

 



 

 


ご主人の渋川恵男さんにお話を伺いました。
「渋川問屋」は名前のとおり、元々は問屋さん。1868年創業の伝統ある海産物問屋さんで、明治から昭和にかけて海産物が手に入りにくいこの地域で大きな役割を果たしていたのです。国内だけでなく、海外からもたくさんの人たちが行き来していたので、入口ちかくの洋館は、海外の方たちの待合室で使われていたところ。館内には、アンティークの家具や骨董品がいくつも並んでいました。

 

 

 

 

 


現在は、ニシン蔵を改装して郷土料理をはじめ食事が楽しめるようになっています。昔は移動にも時間がかかり、遠方からたくさんの人たちが訪れるため宿泊も出来るようになっていた為、そのなごりで現在も宿泊もできるようになっているそうです。

 

さて、お食事ですが、私は大河ドラマ「八重の桜」を記念してつくられた「八重御前」をいただきました。代表的な郷土料理の「こづゆ」。「にしんの山椒漬」「昆布巻」「棒たら」の三点盛。会津塩川牛など。

 

 

 

※「八重御前」は特別メニューなので事前に予約が必要です。

 

 

 

代表的な郷土料理の「こづゆ」は、山の幸と海の幸を合わせた薄味仕立ての汁煮で、江戸時代後期から明治初期にかけて会津藩の武家料理や庶民のご馳走として広まった料理。
当時、招かれたところで出された膳料理には手をつけず、家庭に持ち帰り家族と一緒に食べるという習慣がありましたが、この「こづゆ」だけは何杯おかわりしてもよく、相手にも失礼にならなかったという料理。そのため、最高のおもてなしをしたいという会津の人の心づかいが詰まっています。


海の幸が手に入りにくいため、保存のきく干し貝柱を使って出汁をとり、(見たときに何だろう?と思った)焼き麩を小さく丸くした豆麸、里芋、しらたき、キクラゲなど、いろいろな具材が入っています。浅めに作られた小さい朱塗りの器に盛りつけます。予想以上に小さいと思いましたが、ご主人の渋川さんが、暖かいものを何杯でも、とおっしゃっていたのでこの小ささも心遣いの一つなのだと知りました。いただいてみると…、私が想像していたよりも薄味で、本当に素材の美味しさを生かしていると感じました。小さな器の中に、たくさんの味が楽しめるホッする味でした。

 

 

 

 

 


「にしんの山椒漬け」は、干物の身欠にしんを山椒の葉と醤油で漬け込んだもの。山椒のもつ香りでにしんの魚の臭みをとり、身をしなやかにしてくれると共に腐敗を防ぎ、保存性も高めているという、全国的にも珍しい会津独特の郷土料理です。
身の締まったニシンに山椒がピリッと効いていて、確かに魚の臭みがなく、さっぱりといただけました。私はご飯が欲しくなりましたが、きっと酒の肴にもピッタリです。

 

「棒たら煮」は身の締まった、たらの煮物。これもまた、ご飯が進む味でした。これがあれば、他におかずはいらないと思うシンプルなのに味わい深い料理でした。

 

会津塩川牛は、柔らかくて脂に甘味のある、さっぱりといただけるお肉でした。大人のためのステーキだと思います。

 

 

 



 

 


会津の郷土料理は、他にも秋の収穫時期に豊穣を祝って食べられたという、うるち米で作ったという「しんごろう」。ニシン、スルメ、まんじゅうの天ぷらなどがあるそうですが、郷土料理はただ味わうだけでなく、その料理が生まれた理由を知ることで、その土地の歴史が分かる深いものだと勉強になりました。

 

 

今回の旅は、美味しいものを味わう旅!の予定でしたが…、スペシャルなおまけもありました。
移動中に「東山温泉」の看板が目に入り、足湯だけでもと温泉街へ。足湯の看板を見つけて向かいました。ところが、目指していた観光協会の運営する足湯は冬期閉鎖…。でも、諦めきれなくて観光協会へ問い合わせをしたところ、「原瀧」をご紹介していただき、足湯に入ることができました。しかも、絶景の!!

 

 

 

※冬期間の「足湯」営業は降雪の影響により1月6日より一旦休業し、来春の再開を予定。

 

 

移動中ずっと雪が降っていたのですが、足湯へ着く頃にちょうど止みました。
そして…、青空の下、すぐ下には川が流れ、山の木々には雪が積もって枝の1本1本がわかるほど。なんとも言葉ではいい表せないほどの素晴らしい景色が広がっていました。まさに、絶景!!そんな最高の景色を楽しみながら足湯に入ることができて心身ともに癒される幸せなひとときとなりました。

 

 

 



 

 


冬の間は雪のため使えませんが、春から秋にかけて、足湯の下にひろがる川床でお食事もできると聞いて感動…。ぜひ、ここで食事をしてみたいと思いました。「原瀧」の吉田さん、突然の申し出にもかかわらず、心よく対応してくださり本当にありがとうございました。

 

 

 



 

 


たくさんの美味しいものに巡り会えたし、景色も最高!やはり、会津若松の旅をプライベートで計画しなければ!と思っています。
みなさんも、今話題の会津若松へ出かけてみてください。