復興応援SP イムア、未来へ!いわきの夏|旅人:中田美香

2013-07-19

 

本格的な夏休みシーズンに突入。全国各地での酷暑のなか、子供たちの元気な声が響き渡る。今年も真夏がやってきたのだ。
そして、東北地方では、震災から3度目の夏を迎えている。
そんな中、「海の日」に福島県いわき市の“四倉”と“勿来”の海水浴場でそれぞれ海開きが行われた。東日本大震災と福島第一原発事故の後、海開きを見送ってきたいわき市内の9カ所ある海水浴場のうち、昨年の夏に営業を再開した“勿来”に続いて、“四倉”は2カ所目だ。

 

今回の旅は、東日本大震災で甚大な被害を受け、今なお原発の脅威に晒されている福島県いわき市。その地で一歩一歩前進し、元気ないわきを発信している人々と、さまざまな観光施設を取材した。

 

まず、我々は四倉の海水浴場に向かった。
白い砂浜が延々と広がり、なんともいえない開放感のある、とても美しいビーチだ。

 

 

 

 

 

 

ただココは、福島第一原発から南に約35キロに位置する場所。
期間中は、安全性をアピールするために、海水の放射性物質濃度をホームページに掲載し、砂浜の空間放射線量も毎日2回測定しているという。
良い雰囲気で楽しめるような取り組みや配慮を地元をあげて行っているのだ。

 

このいわき市で、復興にむかう地元住民の姿を撮り続けている写真家・ジャーナリスト、髙橋智裕さんにお会いすることが出来た。
ご自身も震災当時に小名浜港で避難する地元の方々を取材している際に津波に流されるも一命をとりとめた方だ。
その時の髙橋さんの状況だが、小名浜沿岸には建物が少なく、がれきは流されていなかったということ。また津波に流されながら本流から外れていき、流れが滞っているところで立ち上がることができて、救助されたのだそうだ。

 

 

 


津波被害のあった、いわき市の薄磯地区の現状。


写真家・ジャーナリストの髙橋智裕さん

 

 

 

待ち合わせをしたのは、いわき市薄磯地区。
建物の基礎部分のみが残っていて、そこに家や建物があったことが分かる。とても辛い光景だ。
これまで何度となく足を運んだ岩手県や宮城県で津波の被害を目の当たりにしてきたけれど、いわき市でもこんなにひどい被害を受けた地区があっただなんて、知らなかった。ショックだった。
この辺りは、200世帯以上の集落で、100人以上が亡くなり、未だに行方不明となっている方もいるそうだ。
高橋さんによると、この地区はこれまで台風や水害にさらされたことはほとんどなく、大津波が来るとは殆どの方が夢にも思っていなかったという。
近くに薄磯海岸があって、かつては恋人達のデートコースだった。そして、夏のこの時期は海水浴客で賑わっていたという。
しかし、私たちが訪れた日はしとしとと雨が降り、夏だというのにひっそりと静まり返っていた。

 

「風化を防ぐには、被災地にいる人間ももっと伝える責任がある」と語る高橋さん。震災直後に地元メディアが取材に来られない中、地元の姿を残さなければという使命感にかられ、取材を続けていらっしゃる。
ファインダー越しに高橋さんが見るいわきの現状は、まだまだ問題が山積みだ。そんな高橋さんの撮られた写真を拝見すると、ごくごく普通の日常を切り取ったもので、無垢な子供たちの表情が飛び込んでくる。その自然の表情を通して、色々なことを考えさせられ、なにか強烈なメッセージのようなものが感じられる。

 

続いては、原発事故の影響で休業し、先月6月9日に営業を再開したばかりという川内村の観光施設「いわなの郷」へ向かった。
碧々とした緑が豊かな楢生川沿いの林道をガンガン上ってゆく。
すると、その緑たっぷりの中に「いわなの郷」が見えてくる。
ココでは、イワナを中心にした料理などの飲食ができる。また、広い敷地の中には釣り堀の他、和風庭園、宿泊の出来る民家風コテージ、東屋、水車小屋など、まさにピクニック気分を味わえるエリアがた〜くさん。
取材をした日は土曜日ということもあって、朝から大勢の家族連れで賑わっていた。子供たちの笑顔やはしゃぎ声が響き、あたたかい雰囲気に包まれている。

 

 

 

 

 

 

この川内村は、いわき市内からクルマで1時間半ほど。
原発事故後は全村民の避難を余儀なくされた。
オープン以来18年間イワナを養殖する渡辺秀朗さんは、家族と共に千葉県に避難。でも「魚が全滅したようだ」と、役場の職員からの連絡を受け、慌てて村に戻ったそうだ。
幸い10万匹ほどいたイワナのうち、3万匹ほどは生きていた。
「どうしても続けたい」との思いで渡辺さんは単身で川内村に戻り、イワナの面倒を見続け、先月ようやく再オープン。
放射線量を毎日チェックして安全・安心への努力は決して怠らない。
実は私は普段あまり川魚を好んで頂くことがない。
でも渡辺さんは、「きれいな水で育ったイワナは臭みがないんだよ」とおっしゃる。

 

 

 

 

 

目の前では、釣ったイワナを炭火で塩焼きにしてくださっている。
そう、焼きたてをご馳走になった。
これが、いままで味わったことのない、とんでもないほどの美味しさで感動だ。
身がホロホロとほぐれる柔らかさがあって、骨までムシャムシャと食べられる。
キメも細やかで、臭みは全くない。
美味しさに思わず笑みがこぼれる私たち。そんな中、渡辺さんの「魚を守ってきてよかった」という言葉が胸を打った。

 

 

 



 

 

 


 

 

「いわなの郷」を後にし、我々は、福島第一原発から20キロメートル圏内の「警戒区域」の指定が解除され、行き来が自由になっている地域を通り、次の目的地へと向かった。
すれ違う対向車を見ると、防護服を着た重装備のドライバーの姿がある。
やがて、富岡町に入るとそこには想像しがたい町の姿が現れた。
原発事故から2年以上が過ぎた今も、町の時間は止まったままだった。津波の被害に遭い、逆さになったままの自動車がいまだに放置されていたり、学生服を販売している店のショーウィンドーには学生服がそのまま飾られていたりする。
販売用の衣類が当時のまま残されている店。洗濯物が干したままになっている住宅。コンクリートの地面はひび割れ、そこから生えた草が1メートルくらいの高さにまでなっていた。まさしく、あの日一瞬で時間の流れが無理矢理止められてしまった姿がそこにはあった。
かつては活気に満ちていた町が、人々の営みが一瞬にして消えてしまったのだ。
我々一行は無言のまま、それぞれに思いを抱え、町を通り過ぎることしか出来なかった。

 

 


 

 

ラストに取材したのは、総合レジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」だ。
個人的には映画「フラガール」を見て感動!その舞台となった東北のハワイを一度訪れてみたいとずっと思っていた。

 

 

 



 

 

 

今やいわき復興のシンボル的存在ともなっている「スパリゾートハワイアンズ」。
東日本大震災の影響で施設の一部が損壊。2012年2月に新しいコンセプト「きづなリゾート」として今まで以上にパワーアップしてグランドオープンした。

 

 

 



 

 

 

東京ドーム6個分の敷地面積を誇っていて、いわき湯本温泉の豊富なお湯を使った5つの温泉テーマパークで構成される。
一年中常に気温28度に保たれた常夏のドーム「ウォーターパーク」は、汗ばむほどの陽気で、絞りたての100%パイナップルジュースの甘みがカラダに沁み渡る。

 

 

 

 

 

 

 

そのほか、ギネスにも認定された巨大な露天風呂などもある。
水着姿、館内着のアロハやムームー姿の方など、場内はゆるゆるリラックスモード。
まさに、一歩入るとそこは、夢のような南国の楽園なのだ・・・。
一日では決して足りないほどの魅力溢れる施設。
「スパリゾートハワイアンズ」支配人の鷺隆一さん曰く、「三世代の方々がそれぞれに楽しめるという点が一番の魅力」と。
たしかに、お孫さんを含めた三世代でワイワイ楽しんでいる方が多い。

 

 


支配人の鷺隆一さんと…。

 

 

 

宿泊施設は、4つのタイプにわかれている。
私たちは、昨年2月にオープンした新ホテル棟の「モノリス・タワー」に宿泊。「ハワイアン&スパ」をコンセプトとし、旅行者が住人のように気ままに過ごすことのできる空間と時間をデザインしたという新ホテルだ。

 

 

 

 

 

 

広々とした部屋は綺麗で清潔感に満ちている。ベッドと琉球畳の和洋折衷部屋タイプで、まるでスイートのような雰囲気。贅沢ですわ~。思いっきりリラーックス♪
また、「モノリス・タワー」専用のアロハもあり、可愛くて、着心地が良い!
ディナー・ビュッフェも素晴らしすぎ!
ロビー階に位置する「Nesia(ネシア)」というレストラン。フレンチ・ポリネシアン・ビュッフェとなっている。
スタイリッシュな雰囲気で、ポリネシア~~ンな雰囲気を残しながらも、とても繊細な味とお洒落な盛りつけはまさにフレンチな要素たっぷり。ワクワクしちゃう。

 

 

 

 

 

 

 

せっかくだから、ハワイ感溢れるカクテルを注文してみちゃったりしました。
すっかり夕食を堪能したあとは、ホテル内の大浴場へ。
源泉掛け流しの優しいお湯にこれまた癒され、気分はすっかり「夢のワイハ」です・・・。

 

 

 


こちらはギネスに認定された露天風呂「江戸情話 与市」

 

 

 

さらに、「スパリゾートハワイアンズ」の目玉ともいえる、フラガール達によるハワイやタヒチなどの島々の踊りが披露される、夜の「グランドポリネシアンショー」も堪能。
実は、フラガールたちは震災後、全国キャラバンを行い、青森から宮崎までの124カ所を訪れ、踊りを通して前向きな気持ちを伝えてきた。
合言葉は、「イムア・未来へ」。
後ろを振り返らずに希望を捨てずに前へ進むという意味を持つ。
ステージの前に、フラガールたちにその想いを伺った。
美しいメークと素敵な舞台衣装を纏っているのは、40期生・工藤むつみさんと42期生・小林苑未さん。
ウエストがキュキュッと引き締まっていて、笑顔がキラキラしていて、二人ともステキ。

 

 

 


40期生・工藤むつみさんと42期生・小林苑未さん

 

 

 

 

そんなお二人の話をお伺いしていると、二人ともども発せられる共通の言葉は、“感謝”だった。
不安いっぱいの中、全国キャラバンに出かけ、逆に多くの方から沢山のパワーをもらったそうだ。そして、多くの笑顔を届けるために精一杯踊り続けるという強い決意を新たにしたそうだ。
この二人を含めた夜の「グランドポリネシアンショー」は、満席。
伝統的なフラダンスの他に、情熱的なタヒチアンダンス、燃えるバトンをたくみに扱うファイヤーナイフダンスなどが行われる。

 

 

 

 

 

 

 

ゆったりとした美しいハワイアンダンスあり、そのセクシーな動きにはうっとり。時折、動きの激しいタヒチアンダンスがあり、カラダや腰のキレに翻弄される。
リズムのよいビートにのせて、観客からは掛け声も上がり、会場内はまさにノリノリな雰囲気だ♪
見終わると会場は大きな拍手に包まれた。どのお客様も笑顔でいっぱい。
華やかで素敵なステージ、そして彼女たちの美しい笑顔から、生きるパワーと勇気をいただき、思わず胸が熱くなった。

 

写真やダンスといった様々な手段で「いわきの今」を発信し続けている姿を間近で拝見し、お話をさせて頂くことで、あらためてココロ/思いを被災地に寄せ続ける大切さを実感した。震災は決して終わっていない、終わらない。まだまだ私たちに出来ること、しなければいけないことが沢山あるということを再認識した旅となった。