復興応援SP 茨城…あの日から今日までの軌跡|旅人:中田美香

2013-07-25

 

旅の最大の楽しみは“出会い”だと思う。
実は今回、出発の一週間前に素敵な出会いに恵まれ、この旅がとても素敵なものになることを確信していた。

 

その出会いとは、とあるイベントの打ち上げパーティだった。
たまたま、ご縁があって名刺交換をさせて頂いたのが、茨城県高萩市の市長である草間吉夫さん。和やかな草間さんにすっかり魅了され、夢中で話し込み、うかがったところによると、毎年多くのお客さんで賑わっていた高萩市の海水浴客が東日本大震災によって約92%も減少してしまったという。

 

そこまでとは・・・。
殆ど報道されていない。それもまた私にはショックだった。
一週間後に「復興応援SP」と題した茨城県への取材が決定していた。
この絶妙なタイミングでの出会いに、勝手ながら何やら運命的なものを感じ、早速草間さんに高萩市への取材を依頼した。

 

東北3県に比べると、震災の報道が少ない茨城県。
でも甚大な被害を受けた県であることに違いはない。
そこで今回のヤジキタは、茨城県においてのあの日からこんにちまでの軌跡を探った。

 

さらに、東京からも程近く、太平洋に面し、豊かな自然に囲まれた茨城県の
魅力も、存分に味わってきたゾー。

 

まずは、多くの芸術家を魅了した五浦海岸がある北茨城から旅はスタート!
目的は、震災後に見事に復興を果たした日本美術界のシンボルでもある
「五浦六角堂」を拝むためだ。

 

 

 

 

 

 

 

現在の東京藝術大学の設立に携わるなど、現代日本美術の礎を築いた岡倉天心が、晩年の住まいとした北茨城市。海沿いの敷地内には、天心が思索にふけるためにみずから設計したお堂「六角堂」がある。

 

東日本大震災の津波によって消失したが、管理をしている茨城大学が中心となり、復興プロジェクトが立ち上がった。

 

4度に渡る海底調査を行い、柱、梁、出窓や六角形の炉に至るまで、明治38年の創建当時の形に出来る限り近づけさせ、屋根瓦や塗料なども特注。
震災後1年経った2012年4月に再建された。
高台にある「六角堂」に立つと、切り立った崖が連なり、美しい海が広がる。まさに絶景だ。

 

そこで静かに目を閉じて波の音に耳を傾けると・・・天心が思索にふけった時代に、まるでタイムトリップしたかのような錯覚に陥る。
これまで多くの芸術家や思想家を魅了してきているこの場所は、いま新たに茨城県民にとっての「誇り」として復活している。

 

北茨城からビューンと車で南へ30分。高萩市に到着した。
県外を飛び回っていらっしゃる草間さんに代わって高萩市をご案内して下さったのは、これまた穏やかで笑顔が素敵な副市長の小島隆史さんだ。

 

 

 



 

 

 

まずは、日本の岬・百選に選ばれた景勝地である高戸小浜に向かう。
切り立った崖に挟まれ、2つの入り江を持つこの景勝地は、磯遊びなどを楽しむことが出来るスポットだ。東日本大震災による影響をお訊きすると、やはり地形の微妙な変位などはあったようだ。
取材した日は快晴で突如気温がグーンと上昇↑ 家族連れも含めてたくさんの人々で賑わっていた。その光景に少しホッとする。

 

海岸から車で西に10分ほど走ると、今度は海から一気に碧々とした山の景色へとヘンシンっ!
太平洋に面していて、阿武隈山脈が連なる高萩市は、海と山の両方をコンパクトに楽しむことが出来る。これって本当にスゴい!

 

 

 


秋の紅葉も見事な「汐見滝吊り橋」


小島隆史高萩副市長と…。

 

 

 

ご案内頂いたのは、花貫渓谷にかかる吊り橋、汐見滝吊り橋。
約60メートルの高さがある汐見滝橋の眼下には汐見滝の姿が映る。
川のせせらぎが聞こえ、木々が生い茂り、まさにマイナスイオンがたっぷりと降り注いでいるのだ。東京ではなかなか見つけることが難しい、こうした空間。た〜くさんマイナスイオン浴びなきゃね。
山間部は気温も海岸よりも幾分低くて心地良い。
この吊り橋、しっかりとした杉の木の丸太が使用されている。
これなら、高所恐怖症の私が渡っても安心感を得られるし、何よりも杉の木が周りの緑と見頃に調和している。素敵♪
紅葉の時期には真っ赤な色みに覆われて、それはそれは見事なのだそうだ。紅葉の頃に再び訪れてみたいなぁ。

 

最後にご案内頂いたのは、かつての豪農の住宅で、貴重な文化遺産となっている「穂積家住宅」だ。
100坪の広さを持つ庭園の中、主屋は重厚な茅屋根で出来ている。
東日本大震災によって蔵の一部が壊れたため、お邪魔した際も修復作業が続けられていたが、主屋は震災の影響を一切受けなかったそうだ。まさに先人の知恵と技術の賜物とでもいうのでしょうか。

 

 

 


重厚な佇まいの穂積家住宅

 

 

 

この空間を使用して、これまで古民家スウィーツ&カフェや地元の食材を使用した期間限定レストランなどをオープンしたことがあるそうだ。
趣きのある雰囲気の中、ゆったりとした憩いのひとときを持てるというのも、これまた乙なり。良いなぁ。
ちなみに「穂積家住宅」は、映画『桜田門外の変』のロケ地にも使われたそうだ。オオ~!かつてヤジキタでこの映画のロケ地めぐりの際の旅人を担当した私にとっては、さらにグイグイ気分が盛り上がった。

 

 

ガラッと変わってお次は、水戸にある専門学校「文化デザイナー学院」にて、20代のフレッシュな学生へのインタビューを行う。
この学院では震災後、講師と生徒が一緒になって、クリエイターとして出来ることを模索。そんな中、茨城の復興を応援するサイト「がんばれ! 茨城」を立ち上げた。他の県に比べても被害の状況があまり報道されていない中、まずはtwitterでの情報や被災地の写真を集めてアップ。その後もクリエイターたちが作ったポスターの販売や、復興イベントの情報などの掲載をはじめる。
さらにこのサイトは“茨城県のちょっといいところ”をコンセプトに、日常生活の片隅にある様々な楽しみを取り上げて発信していくウェブマガジン「みっけ」へと発展していった。
現在はフリーペーパーというカタチで、「みっけ」は県内の様々な場所で配布されているそうだ。
立ち上げたメンバーたちは卒業してしまったものの、そのDNAを受け継ぐ後輩たちを代表して、田村あかねさんと佐藤雅美さんにお話を伺った。

 

 

 


田村あかねさん 佐藤雅美さん

 

 

 

フリーペーパーの作成を通して、水戸の良さをどんどん再発見しているお二人は、ラジオのインタビューに思いっきり照れながらも、瞳をキラキラさせて水戸の魅力を語ってくれた。初々しくてカワイイー♪
そして、お二人がお薦めしてくれた雑貨店「lollipop cowboy」にもGO!
「文化デザイナー学院」のOBが営むこちらのお店は、水戸をはじめとする全国のクリエイタ―たちが作るオリジナル雑貨がダーーーーっとところ狭しと並ぶ。

 

 

 


「lollipop cowboy」の店長の平真仁さん

 

 

 

摩訶不思議なキャラクターもの、布製品、革製品と様々なラインナップとなっているのだが、不思議と統一感がある。何よりも見ているだけでテンションがアガる! ポップで楽しい!

 

色々と物色し、迷いに迷った結果、柄と色が絶妙なカワイイ布地のティッシュケースに思わず目が止まり、一目惚れ。即買いいたしました!

 

そのまま水戸に一泊し、翌朝早起きして「那珂湊」へ!
ここは以前にプライベートでも訪れたことがある場所で、その楽しさをスタッフに自ら大アピール。そんな私のリクエストが叶って取材を敢行した!
雄大な大海原、太平洋を望みながらのショッピングや食事ができるこの市場は、
目の前の太平洋で捕れたピッチピチの魚が、毎日の午前中と午後に水揚げされる。そして競り落とされてすぐにお店に並ぶのだ。♪フレッシュ、フレッシュ、フレーッシュ♪なのだー。

 

 

 

 

 

 

 

獲れたての、まさに他にはない鮮度の良さで、それぞれの店がそれぞれの特徴で勝負しているのも魅力なのだ。
以前訪れたときは駆け足で回ったためか、いくつかやり残したコトがあった。今回はそのリベンジの意味も込めて、実践したい項目が3つあった。
ひとーつ、お店の方と値段の交渉をしながらトークを楽しむ!
ふたーつ、その場で試食をさせてもらう!
みーっつ、買いそびれた海草類を大量にオトナ買いする!
まずは、丸喜水産の宝田信治店長にお話をお伺いし、早速鮭の味見をさせて頂く。これがも〜〜〜、脂が乗っていてムチャムチャまいう〜。白いご飯が食べたくなるぞー。

 

実はこの日、丸善水産ではこの鮭を含めたいくつかの種類の魚をドーンと並べて、ビニール袋に幾ら詰めてもワンコイン、500円にしていた。マジ?
あ〜、近所にこーゆー市場があったらなぁ。
さらに殻に入ったままのウニも頂いちゃった。フフフ。
クチに入れた瞬間にトロ~リと溶けるその味はまさに初体験。素晴らしく美味!

 

 

 

 

 

 

さらに、漁港に隣接する那珂湊おさかな市場の食事処にて朝食をとることに。
刺身定食に加えて、店内の炭火で焼いたイカや、海鮮丼などなど、スタッフ全員でお互い注文したものをツッつきあいながら大迫力のお魚たちをしっかりとじゅうぶんに堪能。

 

さらに、3つ目の目的であるショッピングももちろん達成した。
昆布やらヒジキやらわかめやら、東京とは比較出来ないほどにリーズナブルなお値段に惹かれて大量買い。帰りの電車の中で、スタッフから白い目でからかわれ続けたのでした・・・トホホ。

 

この「那珂湊」から北に足をのばすと、花の楽園「国営ひたち海浜公園」がある。そう!ご存知、夏を熱くする音楽フェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」が開催される場所だ。2000年から開催されている日本屈指の野外フェスは、いまや茨城を代表する夏の一大行事となっている。
最後は派手な花火で締めくくられるこの夏フェスは、私自身も参戦したことがある。
でも今回は、フェスだけでは決して体験できない魅力を再発見。癒しのスポットがふんだんに存在しているのだ。

 

 

 



 


国営ひたち海浜公園の広報、服部哲郎さん


取材時は「ラベンダー」が見頃

 

 

ご案内いただいたのは、国営ひたち海浜公園の広報、服部哲郎さん。
『国営ひたち海浜公園』は、広さが350ヘクタールもあるのだ。ナント、東京ドーム70個分の広さ!

 

7つのエリアに分かれ、春には一面がブルーに染まるネモフィラの花に包まれ、秋にはやわらかくて丸くってまとまった姿が愛らしいコキアなどなど、四季折々に花畑が彩られる。
そのほか、海抜100メートルからの眺望が楽しめる大観覧車、25種類以上のアトラクションが揃うプレジャーガーデンやサイクリングコースなどもある。
さらにはアスレチック、バーベキュー、パターゴルフを楽しむことも出来て、一日ではとてもとても遊びきれない。
私たちは駆け足だったが、まさに旬を迎えたラベンダー畑で行われたイベントでハーブティーをご馳走になり、さらに“みはらしエリア”から海を眺め、久しぶりにジェットコースターにも乗っちゃったりして。
すっかり童心に返ったひとときを過ごした。
「国営ひたち海浜公園」までなら東京から電車で90分ほど。

 

 

 


大はしゃぎなYAJIKITAスタッフと服部さん

 

 

 

ちょっと足をのばせば、山もあって海もある、そんな自然豊かな茨城県に到着だ。改めて海浜公園辺りを調べてみると、他にも水族館があったり、笠間焼という焼き物の工房巡りが出来たり、新鮮魚介も頂けるし、アウトレットにだって行けちゃうのだ。

 

一年を通して楽しめる様々なスポットに、またちょくちょくお出かけしたいなと思える、それほどに素敵すぎる土地だ、茨城!
今回も再発見の多い、じつに楽しい旅だった♪