東京発どこ行くツアー~谷根千編~|旅人:井門宗之

2014-02-13

 

「ほう・れん・そう」という言葉はご存知だろうか?
これは新社会人のルールの一つであり、最近はCMでも登場する言葉。
新社会人はとにかくこのルールを守んなさいよと、
かく言う井門Pも新人の頃に言われたものでございます。

 

ほう=報告
れん=連絡
そう=相談

 

この3つでありますが、
こうやって頭文字だけでその中身をイメージさせる言葉、ありますよね?
東京の街、いやエリアにもそんな言葉があるんです。
それが今回のどこ行くツアーの「谷根千(やねせん)」エリア。
山手線の内側エリアの中でも割と東側に位置するここは、
江戸時代より寺町としても栄えてきた地域。
まぁ、寛永寺が建立されたのでその影響もあり寺が増えたと言われております。
(寛永寺は江戸城の鬼門封じ、つまり江戸城からみてこのエリアは北東にあたる)
一説には明暦の大火で焼け出されたお寺がこちらに避難してきたなんて話も。
では寺町という事はどんな特徴があるのか…というと、
町の風情が極端に変貌しないという事でしょうかね。
(例外もあって、建設に物凄い反対運動をされたマンションなんかもあるにはある)
なので「散策」にぴったりのエリアでもあるんです。
あっ、説明が遅くなりましたが「谷根千」とは、

 

谷=谷中
根=根津
千=千駄木

 

この3つのエリアを総称しております。
谷中に関しては今年の「七福神巡り」にも登場しましたね。
はい、そうそう。
新作家の河合女史に「谷中銀座は寄らない!」と一蹴された、あそこでございます。ムギィ。
今回のオープニングは!!
ほらきた、谷中ぎんざ商店街!!ウェイウェイ~♪

 

 

 

 

 

 

いや、ここでウェイウェイ~♪ってなってる場合では無いのです!
今回はまずこの近くにあって、昨年ようやく改修工事が終わったあの場所へ!

 

 

 

 

 

 

こちらは井門も大好きな場所。 


朝倉彫塑館です。
およそ4年半、中には入れなかったのですが、
耐震補強などを終えてようやく昨年10月29日にリニューアルオープン。
僕はかれこれ10年近く前から谷中七福神巡りをしているんですが、
その時に立ち寄るのがこちら。
どんな場所かって??まぁまぁ、中に入りましょうよ!

 

 

 

 

 

 

入口を抜け、玄関ホールの先にあるのはアトリエ。
ここは彫塑家・朝倉文夫氏のアトリエ兼自宅なのであります。
このアトリエ、現在は作品が数点展示されていますが、
朝倉氏が御存命の頃は制作場だったそうで、それをまざまざと感じさせるものが。 


お話しを伺ったのは学芸員の戸張泰子さん
朝倉氏の略歴などをお伺いしながら建物の構造について伺うと…。

 

 

戸張「そこに大隈重信像がありますが、 


その床昇降するんです。」

 

スタッフ一同「えっ!!!?

 

戸張「どうも朝倉先生は作業する時に、
脚立に登って制作するのが性に合わなかったみたいで…。
だったら像それ自体を上下させながら制作すれば、と。」

 

 

 

 

 

 

驚きました…。
自分が動くのが嫌だから、いっそ像を上下させるという大胆な発想。
何度も足を運んでいるのに、これは知らなかったなぁ。
実は今回の工事、朝倉氏が生前の頃の様に復元する事もポイントだったとか。

 

 

戸張「どうしても美術館的な捉え方から、
先生が暮らしていた頃には無かった物も増えてしまいました。
例えばこのアトリエ、三面採光なのですが、
その1面の外に美術倉庫を作ってしまっていたのです。
そうする事で光の入り方が変わってしまった。
ですので、今回の工事でその倉庫を取り壊したり…。」

 

井門「確かにそうするとアトリエへの光の加減が違いますね。
以前はもっと暗かったイメージがあります。」

 

戸張「後は外階段についていて屋根を取り払ったり…。
一応、展示スペースと展示スペースを結ぶ動線ですので、
お客様の事を考えて屋根を付けていたのですが、元の姿に戻しました。」

 

 

他にも館内には見えない所(目立たせない様)に丁寧に耐震補強が施され、
工事に時間がかかった事を頷かざるを得ない。
でもそのお陰で以前は入れなかった場所への見学も可能になったのです!
書庫の隣からいよいよ和室ゾーンへ!!

 

 

 

 

 

 

 

中庭を臨む縁側は朝倉氏もお気に入りの場所だったとか。
そこからの景色を同じ様に眺める幸せ…。
中庭をぐるりと囲む様な廊下の先には寝室や客間などがあり、
朝倉文夫氏の生活の匂いを少しだけ感じることが出来ます。

 

井門「戸張さんの一番のお気に入りはどちらですか?」

 

戸張「そうですね…2階の素心の間でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

この部屋は朝倉氏が心を澄ます場所…とでもいいましょうか。
禅の世界ですよね、まさに。
ここからの中庭の眺めがまた素晴らしいんです。
そしてこの家で最も格が高い「朝陽の間」。

 

 

 

 

 

 

壁には瑪瑙や貝を砕いて練り込んであり、
それが太陽に照らされると、壁全体がキラキラと光る…という、なんとも豪華な設え。
そこから今度は屋上庭園へ。

 

 

 

 

 

 

 

屋上には像が2体。
家の入口を見守る様に「砲丸」という像が鎮座し、ウォーナー博士の像もここに。

 

 

井門「なんで砲丸なんですかねぇ?(笑)」

 

戸張「これは…なんででしょうねぇ?(笑)」

 

仏の横山「悪いやつが来たらこの砲丸でドチーンとするんだよ、きっと!」

 

親分「そうだね、横ちゃん、僕もそう思うよ。」

 

仏「へへへ。ドチーンってね、ドチーン。」

 

 

屋上を降りて、今度は2階へ。 


蘭の間であります。
もともとは温室でそれこそ蘭を栽培していた部屋だそうですが、
いまはこちらに猫の塑像が沢山展示されています。
朝倉氏は猫を大変に可愛がったそうで、多い時には15匹程度の猫と暮らしていたとか。
さすがは朝倉文夫と唸るばかりの躍動感溢れる猫の像がこちらには並びます。

 

 

 

 

 

 

ここにはそんな猫と戯れる朝倉氏の写真も展示されています。
何となく芸術家で怖いイメージの朝倉氏がとても良い笑顔をされている。

 

 

戸張「優しい表情も見せてくれるんですよ。
ご家族のお話しではとても自由な方で、家族を大切にされたとか。」

 

 

そうか、確かに書庫には奥様へ贈った綺麗な油壺がいくつも並んでいたっけ。
稀代の芸術家の創作を支えたのは家族の愛ってことなんだろうな。
家族の愛こそ何よりも強いエネルギーをくれるって事、あるもんなぁ。
学芸員の戸張さん、貴重なお話しとご案内有り難うございました!

 

 

 

 

 

 

井門「ねぇねぇ、おやび~ん!
今回はちゃんと谷中銀座でぶらりするんでしょう?」

 

おやびん「そりゃそうだ!
井門くん、さぁ、思う存分買い食いするがよい!」
(蘇えるが良いっ!アイアンシェフ!のノリで)

 

 

 

 

 

 

谷中銀座はねぇ、お肉屋さんが多いんですよ♪
なので揚げたてのメンチカツやコロッケを頬張りながら、
この商店街をぶらりしている方も多いです。
ちーなーみーに、録音はしていないですが、
この日の昼食は朝の連ドラの舞台にもなった中華屋さんでモヤシソバや餃子を!
このお店も僕や親分が好きな店で、しっかりと谷中の味を堪能させてくれます。

 

 

 

 

 

 

商店街を抜けると今度は違う商店街にぶつかります。
ここは「よみせ通り商店街」。
この商店街も飲食店が多く、お惣菜屋さんが店先に出来たてのお惣菜を並べてます。
そう谷中はねぇ、町全体が美味しそうな匂いがするんだ。
それは食べ物の匂いだけじゃない。
町全体がなんとも“いい匂い”がする。
暮らしている人、町の風情、そこに広がる風景。
良い具合でそれが相まって、町全体の“いい匂い”になってるんだろうな。

 

そしてそんな町の“いい匂い”に惹かれて、ここで新たな試みをやっている人達がいる。
黄色い幟が目印の「谷中はなし処」がその拠点だ。

 

 

 

 

 

 

 

マンションの1室を借りて、毎月25日-28日の4日間だけ開かれる高座。
それが「谷中はなし処」。
志を一つにする三人の落語家が、
所属する一門の枠を超えてチャレンジをする場所なのであります。
その3人が… 


立川志の春さん 

林家たけ平さん 

三遊亭萬橘さん



 

 

 

普段はそれぞれの高座に上がる御三方。
しかしこの場所はその高座に集まる様なお客さんが目当てでは無いという。
普段は落語を聴かないようなお客さんにふらっと入ってきてもらうのが目的。
なので日によって、お客さんの人数が全然違うそうな。
しかしそれがそれぞれの鍛錬になっている。自ずとその技が磨かれていくのである。

 

それぞれの想いは一つ。
―――落語という芸能の裾野を広げていきたい。―――

 

しかしそれでも面白くないとお客さんは増えてはいかない。
ある意味それはとても挑戦的な試みでもあるのだ。
落語を見に来て欲しい。気軽に入れる様なスペースを作りたい。
でも来て下さったお客さんを満足させないと、
そのお客さんがリピーターにはなり得ないのだ。

 

この高い志を持つ3人に対して商店街の方々はとても協力的だと言う。
そりゃそうだ、こんなに真剣に楽しい事をやろうとする大人なんて、
それだけで魅力的じゃないか。

 

取材に訪れた日は土曜日。
インタビューの後に3人のコントを見せて戴いた。
9割方埋まる客席に、堂々とネタをぶつける3人。
その力が真っすぐで、熱があって。
いつの間にか引き込まれ、いつの間にか大きな声を出して笑っていた。

 

 

 

 

 

 

【谷中はなし処】
午後1時-2時半
入場料 1500円 (予約なし)
場所 谷中はなし処 (台東区谷中3-13-9-2階)
注:毎月25、26、27日の3日間の開催になります。

 

 

是非機会があれば、皆さんも3人の話芸を谷中で堪能してください!

 

 

井門「はぁ、笑ったねぇ。可笑しかった。」

 

横山「せっかくだから散策しながら根津、千駄木の方にいきましょう!」

 

このエリアの途中はぶらりすると本当に面白いものと出会えます。
造り酒屋を改装した自転車専門店や、
街角のお煎餅屋さん。(おやびんにお煎餅御馳走になっちゃった)
昔は蛍がたくさん見る事が出来た…という「蛍坂」、
蛇の様にうねうねした路地には今風のオーガニック雑貨などを扱う専門店、
素敵なビストロが並んでいたりして、若い人のエナジーを感じたり。

 

そんな中で見つけたのが団子坂の上にある珍しいお店。 


なんと飴細工の専門店!!その名も「あめ細工 吉原」。
こちらは珍しい飴細工の店舗でございまして。
一見カフェの様な店構えを覗くと、中ではお客さんが何かきゃっきゃっしています。
お店の方が器用に飴で細工をその場で作っているではありませんか!? 


御主人の吉原孝洋さんにお話しを伺いました。

 

 

 

 

 

 

吉原さんは2002年から飴細工師を志し、師匠の元で修業を積んだそうな。
そして2008年、日本初の飴細工専門店としてこちらをオープン。

 

 

井門「飴細工の職人さんって全国でどのくらいいらっしゃるんですか?」

 

吉原「そうですね、大体30人くらいじゃないでしょうか?
その中でも専門店として開店したのは、この店が初めてです。」

 

 

吉原さん曰く食品衛生法の影響もあり、
今では昔の様に屋台を引いて飴細工を売り歩く職人さんも少なくなったんだとか。
そんな中で「あめ細工 吉原」さんでは他にも女性の職人さんと共に、
お客さんのリクエストに応えながら店頭で様々な飴細工を日々作っているのです。

 

 

 

 

 

 

 

折角ですから僕も飴細工を作ってもらいました!
店のマスコットキャラクター「あめぴょん」。
冬なんでマフラーを巻いて…っと。

 

 

 

 

 

 

飴細工って砂糖で出来ているわけじゃないんですね。
聞けば水飴で出来ている。
夏は湿度の高い日本ならではのお菓子。
溶けないからずっともつ。しかも美味しい。
勿体ないな~と思いながらしっかりといただきました(笑)。
吉原さん、これからもずっと伝統の技を伝えていってくださいね!

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 

 

 


今回のどこ行くは思いっきり歩いたなぁ~。
しかも谷根千はその散策が面白い。
子供の頃に遊んだ探検ごっこに近いものがある。
そしてその探検ごっこの先には人情溢れる商店街があり、
揚げ立てのコロッケや素敵な飴細工があり、人を笑顔にする落語家がいて、
町を愛した芸術家のアトリエがある。
そう、まるで宝探しのような探検ごっこ。
まだまだ回りきれてないし、根津の辺りには良い具合の飲み屋もあるんですよね。
行きたかったなぁ…(笑)
どうですか?谷根千エリア、ぶらりした後はビールで一杯!
次は絶対飲んで帰るぞ!(なんの宣言だ!?)

 

東京発どこ行くツアー!次はどこ行く?