東京発どこいくツアー 四谷三丁目から信濃町ぶらり旅|旅人:井門宗之
2014-09-04
四谷ってやっぱりあの怪談話をイメージしますよね?
あっ、えぇ。突然始まりましたけれども。
でも実際は東京のどのあたりを指して「四谷」って言うか、イメージしにくいと思います。
僕も大学がオレンジ色の中央線を使っていたので、
(四谷は停車駅なので)場所もなんとなく把握出来ていますけど、
恐らく東京で暮らしていなければ「名前を知ってるけど場所…??」となるはず。
実は四谷という町は、スタジオのある半蔵門から徒歩圏内。
歩いていくと大体15分~20分の距離にあるんですね。
しかも新宿通りという東京有数の主要道路を真っすぐ歩いていけば着いちゃう。
よって、番組の打ち上げや飲み会などもこの近辺で行われることも少なくない!
*どうでもいい豆知識でした。
今回の旅は「どこ行くツアー:四谷編」でございます。
しかも四谷ど真ん中ではなく、四谷三丁目(丸ノ内線の駅)から信濃町の辺りをぶらり。
このエリア、何故か神社・仏閣が多いのですが、その謎は解けるのか?
夢と希望を携えて、都会なのにマイナーな街を歩き回りましょ!
まず最初に訪れたのが、何故か建物の中ほどにヘリコプターが見えるこちら!
消防博物館。
世界的にも珍しい消防に関する展示を行う博物館なのですが、
そんな珍しい博物館が四谷三丁目の交差点にあるわけです。
ご案内は座古順子さん。
偉い人「消防博物館の事なら彼女に何でも聞いてください!」
と言わしめる心強い方であります。
こちらの消防博物館、オープンは平成4年12月3日との事でもう20年前になるんですね。
それが今年の3月に一部リニューアルしまして、より分かり易くなったと。
分かり易いって言うのか、
こちらの博物館、とても入り易い雰囲気なんですね。
10階はフリースペースもあって家族で遊びに来てお弁当を食べてたりする。
しかも眺めもよくて開放的ときたら、色んな方に利用されるでしょ?
座古「はい、こちらビジネス街でもありますので、
ランチタイムは近隣のサラリーマンの方がお弁当を持ってきて食べてたりしますよ!」
井門「しかも入館は…」
座古「無料なんです!」
あっ、ごめんなさい。
「今なら送料無料なんです!」みたいな紹介の仕方になっちゃった…。
でもね、本当にこちらは面白いんですよ。
10階には高層階で災害が起きたら?ってイラストが展示されていて分かり易いし。
階を下がって5階。
ここがまた面白かったんですよ。
消防の夜明けというテーマで江戸の火消しについて学ぶ事が出来る。
ご存知でしたか?火消しが組織されたのが江戸時代だったって事。
それまでは火事に対する“組織”というのは実質無かったって事なんですね。
まずは大名屋敷を守る火消しが組織されて、幕府認定の定火消しが組織され、
一番最後に大岡忠相によって町火消しが組織されるんです。
しかも僕はすっかり「いろは48組」しかいないものだと思っていた。
勉強不足だったなぁ。
江戸時代は「いろは48組」と「本所・深川16組」があったんです。
隅田川の西側は「いろは48組」。
隅田川の東側は「本所・深川16組」が守っていた。
それぞれの組が持っている纏も洒落ていてね、
その地域にちなんだデザインになっていたりもする。
例えば「い組」の纏は先端がケシの実をイメージしていて、その下がマス。
繋げて読めば、もうお分かりですね?「ケシ・マス=消します」になってるんだ。
座古「江戸時代は破壊消火でしたから。」
井門「聞いた事はあります!延焼を防ぐために建物を壊していったんですよね?」
座古「その通りです。
では火消しの中で纏を持っている人の役割ってなんだと思いますか?」
井門「えっ?火を消したぞー!って合図じゃないの?」
座古「あれは破壊消火をしていく中で燃え止まりといって、
ここまで壊せという目印なんです!」
それは知りませんでした。
どうしても「暴れん坊将軍」のサブちゃんのイメージがあったから…。
*って言ったら座古さんに笑われましたけど、笑。
でも当時はそうやって消火していってですね、
消火を終えたら「消し札」を立てて、自分の組をアピールしたのだとか。
火事と喧嘩は江戸の華ですけど、
見事な火消しもまた、江戸の華だったんでしょうね~。
あっ、他にも「大さすまた」と言って大黒柱を倒す巨大なさすまたとかがあったり。
座古「でも5階にはなんと言っても当館の1番人気がありますよ!」
5階から屋外に出ると、現れたのは消防ヘリコプター。
真っ赤なボディーがいかにも消防で格好良い。
このヘリは「かもめ」という名前で実際に活躍したもの。
昭和47年から16年間、人を救う為に使われた実物なのであります!
今は中に入る事も出来るので、子供達に大人気のスポット。
休日には行列も出来るほどだとか。
井門「なんか、エアーウルフみたい!(←藩士としては言っておかないと)」
*3.2.1ゴーはしないけどね、勿論。
他にも3階では現代の消防を紹介してくれるスペースもあったり。
なんせかなり盛り沢山な施設なのです。
四谷自体はアクセスの良いエリアなので、
世界でも珍しい消防博物館に一度いらっしゃってみませんか?
井門「四谷って面白い博物館や美術館、結構ありますよね?
ほら、おもちゃ美術館とか。」
親分「井門くん、次はそこに行くんだよ(笑)」
そうなんです!四谷の面白施設として僕も個人的に知っていたのが「おもちゃ美術館」。
四谷の住宅街を進んでいくと今は使われなくなった小学校が現れます。
こちらが四谷第四小学校という小学校。
ここを使用して何か面白い事が出来ないだろうか、と考えて出来たのが、
東京おもちゃ美術館であります。
入るとさすがは小学校!廊下の感じとか、生徒が作ったモザイク画とか、
YAJIKITAさん達はなんとなくノスタルジックな感じになったわけで。
チーフディレクターの星野太郎さんは笑顔でこう仰る。
星野「ここのコンセプトが多世代交流なんです。
スタッフも18歳から79歳と年齢が幅広いですけど、
70代のスタッフがお客さんのお子さんと喋っていたり、
その親御さんと喋って新たな遊び方を教えていたりなんて光景がよくあります!」
3階建の校舎の中で11教室を展示室として使っているコチラ。
取材日はまだまだ夏休み期間中だったので、
大勢の子供達が大はしゃぎで遊んでいて。なんか良いなぁ、って思ったんだよなぁ。
星野「ここにあるおもちゃを通じて知らない子同士が仲良くなっていく、
体験型のおもちゃで遊んで、その成功体験で子供が輝くんですよね。」
井門「こちらは美術館とは言うものの、
体験型ですもんね?」
星野「はい!ウチは見る2割、触る8割ですから(笑)」
こちらを運営している団体は星野さんも所属する「NPO法人日本グッドトイ委員会」。
毎年優れたおもちゃをグッド・トイとして選定しているのだが、
こちらにもその展示室があって、もう触っただけで「へぇ~」と感心するものばかり。
因みに僕も息子用に去年のグッド・トイを購入(笑)
流石グッド・トイ、家で夢中になって遊んでいます。
でも確かにその選定基準は納得のものだったんですよね~。
星野「グッド・トイの選定基準は大きく3つありまして。
安全なもの、ロングセラーのもの、コミュニケーションを生み出すもの、
この3つになります。」
流行り廃りの激しい物ではなく、
長く愛されるもの。そして子供が使う事を考えた安全なもの。
なによりそれを使って遊ぶ事で、子供同士のみならず親、
更に祖父母の世代ともコミュニケーションが生まれるもの。
そう、笑顔を作るもの。
だからここで遊ぶ子供達の笑顔は特に生き生きとして見えるのかもしれない。
星野「木育って言葉がありますけど、
ここに来て小さい頃から木に親しんでほしいと考えています。」
「おもちゃの森」なんて展示室はその全てが国産材で作っているおもちゃが並ぶ。
木のボールが2万個も入ったボールプールはまだ1歳くらいの子供も、親と楽しそうに遊ぶ。
「おもちゃこうぼう」では家で簡単に作れるおもちゃを教えてくれる。
この日は水流ボートを作ってたっけ。
完成したボートを手に、やっぱり子供達はとても嬉しそう。うん、自慢気な顔だ。
星野「凄いんですよ!
赤ちゃんがここに来て遊んだら、立ったなんて話もあって(笑)」
何より星野さん達スタッフがとても良い顔をしている。
“おもちゃを通じて、古き良きものを繋いでいきたい”
優しい気持ちで、これからも子供達を笑顔にしてあげてください!
さて「東京おもちゃ美術館」を出たらぶらりの再開でございます。
新宿通りを挟んで信濃町方面に。
って言うか、ビジネス街に面する新宿通りを一本入ると物凄い異世界なんです!
いや、異世界って言い方はおかしいか(笑)
ぜーんぜん雰囲気が違うんですもの。
「四谷」ってなもんで谷、坂だらけで、少し歩けばお寺に当たる。
古くからの住宅が立ち並ぶ、物凄く静かなエリアなんです!
横山「懐かしいなぁ。この辺り、学生時代の先輩が住んでてさ。
よく遊びに来たんだよね~(遠い目)」
井門「いつ頃ですか?」
横山「まだパソコンのソフトがカセットテープだった時代。」
テツヤ「カセットテープだった時代なんてあるんスか!?」
路地の雰囲気が懐かしいと、飛び出す話題も懐かしい感じになる(笑)
でもこのエリア、ただ懐かしさを感じる為だけにブラブラしている訳ではありません!
僕も大好きなあの小説の主人公にまつわるお寺が、ここにあるんです!
それこそ、池波正太郎さんの時代小説『鬼平犯科帳』の主人公、
鬼平こと長谷川平蔵の供養碑がある戒行寺。
元々は長谷川家のお墓があった事に由来するのですが、
ここで物凄いお話しを伺ったのです。僕ら。
貴重なお話しを聞かせてくださったのは、御住職:星弘道さん。
星「元々は麹町にあったんですけどね、
江戸時代に入ってから大名屋敷なんかを建てるってんで、外濠の外に出されたんです。」
井門「じゃあ、当時お濠の中にあったお寺が全てこの界隈に移ったんですか?」
星「まだ麹町に1つお寺が残ってますけど、
それ以外は全てこちらに移ってきています。
今も界隈に46のお寺があるんですよ。」
四谷の狭いエリアにそれだけのお寺がある理由が、これではっきりした。
時代の変化に巻き込まれたといっても過言ではないわけである。
では鬼平の供養塔が出来た経緯とは…?
星「江戸時代はここにお墓があったんですけど、
その後、明治時代に入ってウチのお墓を杉並の堀之内に移したんです。
その時、長谷川さんの子孫がどうなっているのか分からない状況だったので、
他の無縁仏と一緒に長谷川平蔵さんも合祀されたんです。」
星さんが御住職になられてから、
鬼平としてではなく、長谷川平蔵としての偉業を何とか称えられないだろうかと、
供養塔を作ることになったのだとか。
星「長谷川平蔵と言えば、小石川人足寄場を作った人物。
これは今の刑務所のシステムの先駆けなんですよね。
これは偉大な事だと、供養塔を建てたんです。」
供養塔には全国から鬼平ファンが訪れるという。
では鬼平の作者である池波先生は、生前こちらのお寺を訪れた事はなかったのだろうか?
星「池波先生がいらっしゃった事は無かったですね。
ただ亡くなられてから奥さまを通じて連絡がありまして。
先生は大変気にされていたみたいなんです。
自分が鬼平を書いちゃったから、こちらのお寺に迷惑がかかってないだろうか?って。」
井門「池波先生らしい気の遣い方ですね…。」
星「はい。それでその時に金子を頂きまして。
ここはお寺なので、何かお返しを…と思った時に、
先生が眠るお墓は浅草にあるんですが、我々も池波先生の大きな位牌を作って、
今も毎日お経をあげさせていただいているんです。」
寺務所の外に多宝塔が建っているのだが、
その中になんと…鬼平の位牌と池波先生の位牌が並んでいるのです。
鬼平ファンの僕と親分が絶句…。
星さんのお陰で、貴重なお話しを伺う事が出来ました。
親分「(感極まった様子で)いやぁ、なんか今日の取材、もう終わっても良いなぁ。」
井門「ですねぇ。でも最後の一軒もかなり面白いんでしょ?」
戒行寺を後にした我々は、四谷エリアから信濃町方面へぶらり。
…とそこにあったのが民音音楽博物館というモダンな建物。
よっぽど怪しげだったのだろう…入口で警備員の方々に一瞬止められる始末(笑)
だってこちらの施設、物凄く、物凄く貴重な資料が展示してある博物館だったんですもの!
お話しは百田恭子さん。
百田「よくこちらにいらっしゃる方が仰るのは、
外から見るとなんの建物なのか分からないって(笑)
でもこちらには日本全国から沢山の愛好家やプロの方がいらっしゃるんですよ。」
それはそうだろう。
何故なら「古典ピアノ室」なんて部屋には16世紀のチェンバロなどが並ぶのだ。
百田「実際に音色を聴く事が出来るので、皆さんもぜひ!」
学校の音楽室をもう二回りほど大きくした部屋には、
壁に沿うようにしてぐるりと貴重なピアノやチェンバロが並ぶ。
それをこちらの館の女性が丁寧に説明しながら、
実際に音色も聴かせてくれるのであります!
中にはあのベートーベンが弾いたかもしれないものまで!!
面白かったのは1793年製のシュトローム。
ピアノ職人の名前が冠されたこちらは、漆が使われているので愛称は「ジャパニーズ」だとか。
凄かったのは1795年製のアントンワルター。
なんと、音を出せるのは世界に4台しかないそうで…。
こちらにはその他にも「オルゴール展示室」があり、
貴重なオルゴールの音色を堪能することも出来ます。
まさかこのエリアでこんな素敵な音色に包まれるとは思わなかった(笑)
確かに中がこんな風になってると思わないもんなぁ…。
百田「どなたでも入れますから、
是非たくさんの方に来ていただき
たいですね!」
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ゴールはJR信濃町駅前。目の前は慶応義塾大学病院である。
神宮も近いので緑が多い印象だが、
四谷からここまでそれほどの距離ではないにも関わらず、また表情が違う。
今回は大都会の異界探訪のようだったなぁ(笑)
一本路地を入るとそれだけで音が変わる、空気が変わる。
戒行寺の星住職が仰ってたのだが、
あのあたりは木の葉が落ちる音を少し大きくした位の音しかしないのだそうだ。
大都会にあってそんな場所が存在するなんて!!
ちょっと歩けば新宿通りですよ!?
東京のパズルのピースで言うと、とっても複雑な形をした町:四谷。
でもその形を見ながら、うん、これも東京だよなと妙に納得。
東京の町の魅力を再発見する旅が「どこ行く」。
さぁ、次はどんな町の魅力を見つけに行こう?
東京発どこ行くツアー、次は、どこ行く?