VIN DE YAMANASHI~山梨ワインを巡る旅~|旅人:工藤彰乃

2014-10-24

 

今回の旅は、山梨ワインを巡る旅!もちろん旅に行けるのは嬉しいし、ワインも好きですが、ひとつ心配が…。私はアルコール分解能力が低いので、すぐに酔ってしまうと思います(苦笑)と言いながら、まずは、勝沼ぶどう郷駅へ。
駅に着くと、たくさんの人!長い行列!太鼓をたたいて盛り上がっています。ちょうど「ぶどう祭り」が開催される日だったようで、行列はイベント会場へ向かうバスの行列でした。みんなワインを飲むため、電車やバスを利用しているということでした。なるほど!

 

 

 

 

 

 

そこから、まずは山梨のブドウとワインの歴史を学べるという「ぶどうの国 文化館」へ。
文化館の池田好一さんに案内していただきながら、色々と教えていただきました。

 

 

 

 

 

 

入口には、山梨の地形がひと目で分かる写真がありました。盆地だからこそ、美味しいブドウが育つのだそうです。正面を見ると、僧侶の蝋人形。中へ入ってみると、館内にはたくさんの蝋人形がありました。勝沼にブドウが伝わった伝説や、歴史。伝わった当時の街の風景が描かれているのです。

 

 

 

 

 

 

山梨でブドウを育てるようになったきっかけを作り、広めたとされる名僧の行基(ぎょうぎ)。行基の夢に薬師如来が出てきて導いたと云われているため、行基の上には薬師如来の姿も描かれています。また、雨宮勘解由(あめみやかげゆ)は、鎌倉時代に山ぶどうの変性種をみつけ、5年を経て栽培に成功し、領主の武田信玄へ献上したと云われています。これらの話は伝説として語られているものですが、ブドウを栽培するきっかけまで考えたことがなかったので、しみじみとお話しを聞かせていただきました。

 

 

 

 

 

 

具体的な歴史の話としては、明治10年に勝沼で有志が日本で初めて葡萄酒醸造会社をおこし、高野正誠、土屋助次郎の2人の若者をフランスへ派遣。明治12年に帰国したのち、葡萄酒醸造に取り組んだそうです。今は、飛行機であっという間に行ける距離ですが、当時は船で何日もかけての旅ですし、本当にすごい事をやってのけたということですよね。


さらに、そんな昔から日本でワインが飲まれていたという事実にも驚きました。その頃の人々がワインを楽しむ姿や、運ぶ風景なども表現されていて、当時を思い描くことが出来ました。
他にも勝沼の宿街の風景や、ブドウを絞っている姿など、蝋人形が動き出しそうなほどリアルに表現されているので、想像しながら、そして楽しみながら学ぶことが出来ました。

 

また、同じ敷地の中には「甲州市勝沼図書館」があり、ブドウとワインの資料や本がたくさん揃っているそうです。資料展が行われている現在(11月30日まで)、貴重な資料も見られるそうです。どんな内容なのか気になる方はぜひ!

 

次に向かったのは、360度ブドウ畑が広がる丘の上にある「甲州勝沼ぶどうの丘」。
こちらでは、なんと!200種類ものワインを試飲することができるのです。普段、ワインを飲む機会が多い方も、そうでない方も、飲み比べてみないと自分の好みって、なかなか分からないですよね。ぜひ、ここで見つけてみてください。

 

 

 

 

 

 

副支配人の武井一弘さんに案内していただきながら、まずは入口で専用のタートヴァンを購入します。タートヴァンというのは、ワインのテイスティングに使用する銀製の器のこと。ソムリエがワインの色、香り、味など品質を調べるために伝統的に使用されてきたものですが、私は初めてタートヴァンという名前を知りました。

 

 

 

 

 

 

そして、階段を降りて地下のワインカーヴへ。降りて行く途中からワインの良い香りが広がってきました。空気もひんやりしてきます。ワインカーヴに着くと、ビックリ!! 想像以上に広くて、大きな棚にはワインがびっしり。通路にはいくつもの樽があり、1つの樽の上に10本近いワインのビンが並んでいます。入って右側が白ワイン、手前が甘口で奥が辛口。左側が赤ワインで奥がライトボディ、手前がフルボディということでした。樽の周りではたくさんの人が試飲していて、とても楽しそう。

 

 

 

 

 

 

では…、と私も試飲させて頂くことに。まずは、入口に近い白ワインの甘口から。口に含んだ瞬間からブドウの甘~い香りが広がりました。武井さんが「デザートワインですね」と。確かにぴったりだと思いました。続いて、私にも違いが分かりやすい一番奥の辛口へ。先ほどとは全く違うブドウの香り。辛口という表現より、スッキリとしたという表現の方が合うワイン。これも美味しい!

 

 

 

 

 

 

突き当たりには、新酒という看板があります。いわゆるヌーボーですね!ここも試飲させていただきましょう。幻のブドウと書いてあるのは「あじろん」という品種。私はこの香りが、とても気に入りました。

 

赤ワインも飲み比べてみると、味も香りもそれぞれ全く違い、フルボディはお肉が食べたくなりました。具体的な料理に合うワインなんて分からなないと思っていたのですが、何となく想像できる気がしました。やはり、一度に何種類も飲めるからこその発見だと思います。ワクワクして、アルコール分解能力がないのも忘れて、もっと飲み比べてみたくなりました。時間がなくて、助かりました(笑)

 

 

続いては「ロリアンワイン 白百合醸造」へ。白百合醸造は、原料のブドウ栽培からワイン造りまで一貫して行っている=地元のブドウにこだわったワイン造りをしているファミリーワイナリーです。

 

 

 

 

 

 

訪ねると、すぐに社長の内田多加夫さんが出てきてくださって、ワインについて話してくださいました。その中でも私が驚いたのは…「人は両親からもらったものが大きく、生まれた時には見た目はもちろん、性格など多くのものを両親からもらっていて、それを元にして成長していく。ブドウも同じで、土壌が大切。ブドウが出来た時にはすでに多くのものを持っていて、それをどのように加工するかで変わっていく」というような内容のもの。ここでは、うまく表現しきれませんが、まさかブドウと人間とをイコールで例えるなんて思ってもいなくて意外でしたが、とても分かりやすく、なるほどなぁと思いました。

 

 

 

 

 

 

その後、河野章二さんがブドウ畑を案内してくださいました。店舗の裏に出ると、ちょうどブドウを機械に入れて、房から実をはずす作業をしているところでした。河野さんが「運がいいですね。これはタイミングが大切なので、見学や取材などに時間を合わせることができないんです」とのこと。それだけ、こだわって作っているのだと実感しました。
何キロものブドウが入っているカゴが山のように積んであり、その数に驚きました。また、大変な肉体労働だと思いました。さらに、機械が実をはずす作業の速さにも驚きました。上からブドウをいれると、アッという間に下から房だけが出てきて、その実を皮ごと絞った果汁がすぐ横にある大きなタンクに流れていくのを見ることが出来ました。知らないことばかりだったので、ただ…じっと見つめていたのでした。

 

 

 

 

 

 

畑に着くと、栽培されている色々な種類のブドウをその場で食べさせていただきました。贅沢なブドウ狩り?です。それぞれ味や香りが違って、甘味の強いもの、香りが爽やかなもの、さらに甘いのにスッキリしているものなど。先ほど試飲した幻のブドウ「あじろん」も食べさせていただいたのですが、私はこの香りが好きなのだと確信しました。ワインとブドウの両方を味わえるとは、なんて贅沢なのだろう!と感激しました。畑を見せていただいた後でワインの試飲をすると、味わいも違います。

 

 

 

 

 

 

畑といえば…みなさんブドウ畑というと、どういうものを思い浮かべますか?棚からブドウがぶら下がっているところでは?でも、これは雨の多い日本の風土にあわせて作られたもので、ヨーロッパなどでは違います。背は高くないですが、いわゆる木の枝にブドウがなっているのです(写真でみるとよく分かりますよね)。知っていましたか?私は、棚で出来るものだと思っていたので、とても驚きました。白百合醸造では、ヨーロッパのようにブドウを育てることが出来ないかと試験的に栽培をしていて、ブドウの木を二股にしているもの、一本で育てているものがあります。その景観が日本ではないようでした。

 

 

 

 

 

 

その後、工場へ案内していただき、瓶詰めを体験。水のように流れて出てくるワインに感動…(工場だから当たり前?)。そして栓をするのですが、機械の上にコルクを乗せて取っ手をゆっくり下げると周りからコルクを圧縮しながらビンの中へ。思った以上にスムーズに入っていきました。どうやって栓をしているのか不思議に思ったことがあったので、体験できて嬉しかったです。その後、既存のラベルに文字やイラストを入れて、自分だけのワインが完成!というのですが、絵心のない私にどうしろと??センスの問われる出来となり…。お恥ずかしい…。

 

 

 

 

 

 

白百合醸造のようなファミリーワイナリーを訪ねると、個性を感じることができるので、色々と巡ってみると楽しそうです。

 

 

続いては「本坊酒造 山梨マルスワイナリー」へ。こちらは、鹿児島に本社をもつYAJIKITAではお世話になっている酒造のワイナリー。1960年に設立され、山梨のブドウを使った地元に根付いたワインを製造しています。

 

 

 

 

 

 

店内に入ると、樽を型どった壁に蛇口が着いています。いくつかあり、それぞれに種類が書いてあるということは、もちろん試飲!もし、アルコールがダメでもワインに並んでブドウジュースの試飲もあるので、アルコールが飲めなくても一緒に楽しめますよ。
お土産もきれいなブルーのビンで、私の知っているワインのビンとは違うものもあり、選ぶのも迷ってしまいます。

 

 

 

 

 

 

本坊岳朗さんに地下の貯蔵庫を案内していただくと、階段を降りていくにしたがって、ひんやりとしてきます。貯蔵個には、たくさんの樽が並んでいました。

 

 

 

 

 

 

本坊酒造ではヴィンテージワインもそろっていて、自分の生まれ年のワインを試飲できるのです。年によってはないものもあるそうですが、1945年以降のものは、ほとんど揃っています。貯蔵庫の樽には、その年の主要な出来事も記してあるので、見ているだけでも楽しくなりました。せっかくの機会ですから、私も試飲を!
ですが…、ということは………。でも、飲みたい…。


葛藤のすえ、声には出さず、本坊さんにだけにわかるように伝えましたが、スタッフの皆様が冷たい目で私をみるので、結局口に出して伝えました。で、放送されたのかな…?


とにかく、生まれ年のワインは、口に含むと甘い香りではなく、熟成された香りと強い…と思ったら、アルコール20度だって。たくましいと思ったのは、度数の影響ですよね(笑)自分と同じ歳のワインだと思うと、なんだか感慨深くなりました。

 

 

 

 

 

 

アルコール分解能力が低いくせに、一日中、何種類も試飲を楽しんだ私は、本坊さんにお礼を言って別れる頃には、顔も赤くなり完全に酔っ払いに…。本当に失礼いたしました。

 

今回の山梨ワイナリーを巡る度は、ワインを楽しむだけでなく、勉強にもなり、想像以上に充実したものでした。今までは、時々なんとなく飲んでいたのですが、ワインが身近なものになり、もっとワインの事を知りたくなり、語りたくなりました。


みなさんもぜひ山梨のワイナリーを訪ねてみてください。知れば知るほど楽しいですよ!!  ~ただし、くれぐれも飲みすぎにはご注意を!~