開業100周年記念! 東京駅まるごとぶらり旅|旅人:井門宗之
2014-12-18
日本の玄関口「東京駅」に初めて降り立ったのはいつだったかな。
思い出す記憶がもうセピア色なので、あれはきっと子供の頃だ。
あの頃は丸の内口の改札も「鳩に注意」なんて看板が出ていて、
子供心にあまり良い印象を持っていなかったような気がする。
その東京駅(というか丸の内エリア)もここ10年で随分と様変わりした。
商業ビルがいくつも出来、2012年10月には駅舎の復原工事も終了。
そして今年12月20日をもって東京駅は開業100周年を迎えた。
河合「東京駅の中にどんな施設があるのか、
どんな歴史があるのか、しっかり調べたらかなり面白いと思うんです。」
きっかけは河合さんのそんな一言だったと思う。
という訳で今回のYAJIKITAは「開業100周年記念!東京駅まるごとぶらり旅」なのです。
記念すべき最初のインタビューは駅長です。
そう、東京駅には当たり前ですが駅長さんがいらっしゃる。
我々はJR東日本の東京駅長のお話しを伺うべく、
普通はなかなか入る事が出来ない駅長室へと向かった。
井門「と…と…東京駅の駅長さんって、いわゆる現場で一番偉いん方なんですよね…。」
河合「そうですね、JR東日本の駅長で取締役なのは東京駅の駅長のみですから。」
井門「おぉ…いつもとは違う緊張感が…」
まだ見ぬ駅長さんに色んなイメージを浮かべながらソワソワしていると、
現れたのは真っ白な駅長服に身を包んだ男性。
江藤「あっ、どうも!
なんでも答えますからどんどん質問してくださいね!」
そう気さくに声をかけてくださったこの方こそ、
東日本旅客鉄道株式会社 取締役 第24代東京駅長江藤尚志さんであります。
江藤さんは「東京駅に駅長さん…本当にいらっしゃるんですね!」なんていう失礼な質問にも
笑顔で答えてくださり、東京駅の駅長としての鉄道マンのスピリットを語ってくださった。
江藤「日本のターミナルステーションの駅長として、
例えば東海道新幹線も含めると200万人以上の方が1日に利用されます。
そうなると日々の輸送というのが一番気をつけていることですね。」
これから先、2017年に駅前広場が完成すると東京駅の姿は完成をみるという。
江藤さんはこれからの100年に向けてへも想いを馳せているようだ。
江藤「私は“縁”という言葉を大切にしています。
いまこの場に駅長としている事も先輩達から引き継いだ“縁”ですし…。
鉄道の歴史というのは事故の歴史でもあるんです。
我々はそれをきちんと検証し、次の世代へ繋げていく義務があるんです。」
真摯に、とても真摯に江藤さんは語る。
こうしてインタビュー収録が終わった後でした。
何かを思い出したかの様に「そうだ、会議室にご案内しましょう」と仰る江藤さん。
勧められるまま駅長室の傍にある会議室のドアを開けた我々は、その中の光景に息を飲みました。
会議室の壁には初代駅長から先代の23代駅長までの写真が、
ずら~っと壁に掛けられていたんです。
江藤「1日に1回はこの部屋に一人で入るんです。
知らず知らずに歴代駅長の写真に向かって問いかけているんですよね。
この道で良いんだろうか?このままで良いんだろうか?って。
この部屋に入ると、ぴーんと背筋が伸びるんです(笑)」
日本を代表するターミナルステーションを守る重責。
その重みは我々には想像もつかない。しかし江藤さんはその重責を果たすべく、
今日も歴代駅長から渡された歴史のバトンを次の世代へ繋ぐべく奮闘しているのだ。
続いては東京駅開業の翌年にオープンした伝統あるホテル「東京ステーションホテル」。
お話しを伺ったのは「東京ステーションホテル」の総支配人、
藤崎斉さんその人であります。
藤崎さんのお話しが本当に面白くて、素敵で。OAには乗せなかったエピソードをいくつか。
藤崎「ここで働いているホテルマン達は、地方の例えば旅館で仲居をやってましたとか、
ビジネスホテルで働いてましたという人間がほとんどです。
特に4つ星、5つ星のホテルで働いていたという経験を持つ人間はおりません。
私が面接で一番大切にしたのはその人の“熱意”。それだけなんです。」
井門「確かに皆さんキビキビと、でも楽しそうに働いてますもんね。」
藤崎「面白いエピソードがあるんです。
鹿児島出身の女の子がある日私にこう言いました。
“東京の入口となるホテルで働くから方言を直したいんですけど、難しいです”と。
だから私は言ったんです。
――そのままで良い。直さなくて良いんだ。
するとある日、奇跡的な事が起こったんです。
なんと鹿児島からのお客様がいらして、その子が接客を担当する事になったんです(笑)
彼女は土地の言葉で一生懸命接客しました。
後日、お客様からのアンケートにはこう書かれていたんです。
――○○さん(客室係)、また来ますから、絶対に辞めないで、
ずっとそのホテルにいてください。必ず、また来ますから。
私は従業員にこう言うんです。
目の前のお客様にベストを尽くしなさい、と。
当たり前の事ですけど、目の前で倒れている人を見かけたら助けますよね。
それと同じ事なんです。
――目の前のお客様に自分が出来る最善を尽くしなさい。
これは私が常に言っている事です。」
方言を直すよりも、自分で出来る最善を尽くせ。
一人の人間として、お客様を最大限におもてなしする。
そんな藤崎さんの姿勢はホテルの隅々にまで行き届いている。
藤崎「あるお客様からのメッセージに、
“お風呂場で石鹸のケースを排水溝に落としてしまい、蓋を開けて中から取り出しました。
そこには一本の髪の毛も落ちていませんでした。その気配りにただ驚くばかりです。”
とありました。私もホテルに出社すると毎日必ず全てをチェックに回ります。
その時に意識しているのは“100%の状態では、絶対にない”という事です。
どこかに何か不備があると考えながら回る。
そうすると見えてくる部分というのは、必ず出てくるんです。」
ホテル全体が重要文化財なのだ。
その重要文化財であるホテルを守り続けていくこと、
御苦労も多い中で“従業員一同頑張っています。”と笑顔で話す藤崎さん。
御部屋も見せて頂いたが、エレガントの一言に尽きました。
内装に関しては国際的にコンペをしたそうな。
その中から選ばれたのはロンドンのリッチモンド社というデザイン事務所。
世界的なホテルやレストランの内装を手掛ける名門だ。
藤崎「御部屋にもトリビアがあるんですよ。
例えばアンケートを書くメモ用紙が小さな原稿用紙になっていたり。」
井門「確かにこのホテルには名だたる文豪が逗留して、
沢山の名作がここで生まれているんですよね!」
数え上げればキリが無いのだけど、川端康成、内田百閒、江戸川乱歩、松本清張などなど、
錚々たる顔ぶれがここで作品を生み出している。
備え付けの珈琲の袋にプリントされた写真は、
ホテル開業当時のコーヒーショップの写真だったり…。
全てがエレガントな中、浴室は最新設備が整っていたり。
藤崎さんは最後に我々を、宿泊者しか使えない場所へと連れていってくれた。
それが朝食をとる「アトリウム」であります。
そこは東京駅の4階部分。
100年前の鉄骨もお洒落なアクセントに見える場所で、
宿泊者は極上の朝の時間を過ごす。
藤崎「近隣の最新設備のホテルにはスペックでは負けます。
それは仕方の無いことです。
でも我々はスペックを売っているのではありません。
ストーリーをお売りしているのです。
東京ステーションホテルでしか体験出来ないストーリーを皆様に楽しんで頂きたいのです。」
どうですか??
一度は泊まってみたくなりません?
僕も一度、妻とのんびりここに泊まりたいな。
そんな事を話すと“実は一番お客様で多いのは都内の方なんです。”と藤崎さんは仰る。
そう、ここは目的地になり得るホテル。
100年の伝統は物語となって、きっとあなたを満足させてくれるに違いありません。
東京駅といえばエキナカであります(突然だけど)。
そのエキナカもグランスタとエキュートってのがございまして、
まぁそれぞれが魅力的なんでございますよ(何キャラだ)。
そんな東京駅のエキナカぶらり、まずはGRANSTAから行ってみましょ。
まずはル・コルエ丸の内へ。
こちらは日本のビールを100種類とスパークリングワインなどを扱うお店。
店内ではビールを飲むカウンタースペースなどもあって、
旅に出る前のちょっとひと時だったり、仕事帰りに軽く一杯が出来るお店。
開業100周年記念で駅舎をデザインしたラベルが施されたビールが売られている。
なんで、なんでテイスティングが出来ないんだ(笑)
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続きましてお酢の専門店「飲む酢エキスプレ・ス・東京」。
外観は物凄くポップで、提供しているお酢もお洒落。
スタッフさんが元気なのも楽しいですが、
気軽に美味しいお酢が飲めるのがやはりポイントでしょうか。
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INDEN・YA×JIZAING
では、ここでしか買えない限定品も!
それが、ボストンバッグ!10万8千円也であります。
他のお店とはラインナップが違う印傳が並んでいるとの事で、
印傳ファンなら押さえておきたいお店でしょう!
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続いてはエキュートであります。
我々YAJIKITA一行も、新幹線移動の時は大体東京駅の新幹線改札前で集合。
しかも集合時間が朝とか昼のご飯時が多いもんで、
ついつい駅弁を買ってから新幹線に乗り込む事が多い。
そんな我々の強いサポーターが(違う違う)美味しいお店の宝庫!エキュートさんなのです!
JR東日本ステーションリテイリング 広報 天野卓さんにご案内いただきました。
エキュート東京の「100周年記念弁当ベスト3」をお伺いしたところ・・・
第3位!
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第2位!
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第1位!
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東京駅まるごとぶらり旅。
歴史も散策して、お腹も満たして、最後はイルミネーションなんていかがでしょ?
冬のシーズンは特にカップルが肩寄せ合ってこんな素敵な場所を歩いてみては?
それが昨年オープンした八重洲の新たなランドマークGRANROOF。
東京ステーションシティ運営協議会 事務局次長川又正明さんにご案内頂き、
幻想的なイルミネーションの中を散策してきました!
川又「丸の内側は「歴史」を象徴しているのに対し、
八重洲側は「未来」をテーマにしております。
2つの顔を持っているのが東京駅の特徴だと思っております。」
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行幸通りから眺める東京駅丸の内駅舎。
建築家・辰野金吾が相撲が好きだったので、
ここから見ると東京駅の駅舎は「力士の土俵入り」に見えるという。
そう思って見ると、左右におよそ320mもある東京駅が力士の姿に見えなくもない。
100年の歴史を持つ東京駅はその歴史の中で様々な出来事があった。
その歴史を、しかしここで働く方々はしっかりと受け継いでいる。
物語のページを閉じない為に、この先の世代へ紡いでいく為に。
そしてそんな物語を作るのは、いつの時代も訪れる人々である。
開業100周年の東京駅。
これからの100年を作りに、改めてあなたも東京駅を散策してみませんか?
この場所の物語はまだまだ続いていくのですから。