東京発どこいくツアー おいしいこだわり・赤羽編|旅人:井門宗之

2015-05-21

振り返ってみよう。
前回のどこ行くは「赤坂」。 


そして今回のどこ行くは…「赤羽」!!
東京のディープスポット、赤羽であります!!
酒飲みの聖地とも呼ばれるこの町、
取材を通じて僕の中で出た結論はそんな優しいもんじゃありませんでした。
赤羽は酒飲みの聖地なんてもんじゃない! 


酒飲みの遊園地やー!!!


 

 

 

ってな訳でまず向かったのは荒川土手のすぐ近く。
川を越えればすぐに埼玉県川口市。そう、東京と埼玉の境界線でもある場所だ。
荒川土手のテニスコートでは爽やかに学生がテニスの練習をし、
土手沿いをペットの散歩で楽しむ人の姿もちらほら。
そんな中でYAJIKITA4人の鼻息は荒い…いや、もう既に酒の亡者と化している…。

 

 

親分「ここが23区唯一の酒蔵、小山酒造だよ!」

 

 

 

 

 

 

酒バカ一代の井門Pを優しく迎えてくださったのは、 


小山酒造の若女将:小山久理さんであります。
これは持論でありますが、お酒を扱う方はやはりお肌が美しい!小山さんも勿論、その一人。

 

 

 

 

 

 

井門「東京って地方の方からすると“水が美味しくない”ってイメージが強いと思うんです。
そして日本酒にはその“水”が必要不可欠。その辺りはいかがですか?」

 

小山「はい(笑)実はこの辺一帯はかつて湧水が豊富だったんです。
ですから産業も“練り物”や“豆腐”などを生業とする方が多かった。
ところが昭和30年頃に“湧水の汲み上げ規制”が敷かれまして、
そう言った産業が他のエリアに移ってしまったんですよ。」

 

 

ではこちらの小山酒造さんはどうか??

 

 

小山「ちゃんと今でも地下水を汲み上げています(笑) 


深いですよ、130m地下まで掘ってますからね!
秩父山系の地下水を酒造りに使用しています。」

 

 

小山酒造の主要銘柄は1銘柄「丸眞正宗」。
そこに使われるこだわりの水は地下130mから汲み上げる天然の地下水なのだ。
そしてこの地下水が中硬水で酒造りに非常に適している。
我々が小山さんにお話しを伺ったスペースにはその地下水が湧いている場所があり、
丸眞正宗への勝手な期待感が増していくのだが…

 

 

井門「まだ早い時間帯ではありますが、あのその、試飲なんてのは??」

 

小山「できますよ!どうぞこちらへ!」

 

 

さすが小山酒造の若女将、キビキビした動きで酒飲みをカウンターへと促す(笑)
こちらカウンターが試飲スペースになっていて、普段は団体客に見学もさせているそうだ。
もちろん要予約にはなるが、23区唯一の酒蔵が見られる良い機会ではなかろうか。

 

 

小山「どうぞ!丸眞正宗純米吟醸になります!」

 

 

 

 

 

 

時刻は午前10時。赤羽の町では、取材であろうが酒飲みのスタートは早い。
頂いた純米吟醸は意外にもワイングラスに注がれ、うっすらと黄金色をしている。 


聞けば“ワイングラスでおいしい日本酒アワード”金賞を受賞したとのこと。
よく冷えた吟醸酒が、グラスの表面を湿らせていく。
その温度を損なわない内に、グッと一口。

 

 

井門「あぁ…鼻に抜ける米の香りが素晴らしい。
そして後味にキレがありますね!これは美味しい!」

 

小山「どちらかと言うと食中酒になります。
そして、ここは赤羽。赤羽にはあの“なとり”さんがあります。
是非ウチの丸眞正宗と、なとりの熟成チーズ鱈を合わせてみてください!」

 

井門「ここでまさかの赤羽地元セットじゃないですか(笑)
チーズに日本酒…ではチー鱈を一口。(もぐもぐ)
あぁ、普通のチー鱈よりも濃い味わいで、これはクセになります。
んで、ここに丸眞正宗をクイっと…。

 

…!?
………!?

 

旨いっ!!!!!
いやぁ、合いますね!チーズの豊潤な香りを、日本酒が更に深くしてくれる!
これは赤羽の呉越同舟!!(いや仲悪くないから)
赤羽の町に更に一体感を生みましたね!!」

 

 

 

 

 

 

小山「有り難うございます(笑)
こちらセットで赤羽駅で販売しておりますので!」

 

一行「上手なプロモーションキター!!!!!!」

 

 

1878年創業の伝統の酒蔵は、
23区内で唯一の酒蔵になっても、その探究心はとどまる事を知らない。
建物の中には歴史を表す様々な展示物もあり、見ごたえ十分。

 

 

 

 

 

 

お酒の仕込みは9月上旬~GW前までとの事なので、
今は酒蔵自体は静かではあるが、東京の日本酒を楽しめる貴重な場所。
ぜひとも丸眞正宗、覚えておいてください!

 

 

 

 

 

 

日本酒で気持ち良くなりながら、赤羽の町をブラり。
酒が入って気持ちが良くなりすぎた親分も、とてもここじゃ書けない言葉を放つ。

 

 

親分「大体赤羽はさぁ、○○で○○なんだよ!えぇ!?井門くんさぁ!
ここの人達はそもそも○○○で○○○○が○○○○!!!○○○!!」

 

 

もうこの人と赤羽を歩くのはヤメよう、そう心に誓い始めた頃…。
ん?変な看板が路地の奥にあるな…。

 

『東京・吉祥寺 行列の羊羹(取扱点)みとう園』

 

なんだなんだ?この“人のふんどし感”は(笑)
入口にはその“吉祥寺・こしの”の行列の写真が貼られているし(笑)
ドアには漫画「東京北区赤羽」で取り上げられた時の回が貼られている。
しかもそれによると僕が今感じている、
「なんでここで吉祥寺の人気店の羊羹が手に入るんだ?」は解消されていない。
店内を見ると優しそうな老主人と、快活そうな奥さんがカウンターの中にいる。
並べられた商品を見るとお茶屋さんなのは間違いない!
よしっ、色んな疑問を御主人にぶつけてみよう!

 

 

 

 

 

 

井門「御主人、なぜここで吉祥寺の羊羹が手に入るんですか?」

 

御主人「えぇ、まぁ~、ある日その“こしの”の御主人がふら~っと来てね。
“うん、この店なら羊羹を卸しても構わない!”ってんで卸してくれる様になったの。
なんでか分からないけどねぇ~。」

 

 

分からないのかよっ!!
一億総ツッコミの時代であります。
恐らくどなたが行っても、割と強めのツッコミを入れるであろう“みとう園”さん。
しかしそんな僕のツッコミもどこ吹く風…温厚な御主人は更に続ける。

 

 

御主人「今の御時世、お茶だけじゃやってられないでしょ?ははは。」

 

井門「いや、今も結構お客さん入ってるし!
お茶だけで勝負したって大丈夫でしょう?大丈夫ですよ、御主人、ねぇ?」

 

奥さま「あっはっはっはっはっ(笑)
お茶だけで大丈夫だって(笑)」

 

 

 

 

 

 

いや、奥さんもめっちゃ笑ってるし!
お茶だけでやっていけそうな理由はですね、
午前中の早めの時間にも関わらず常連のお客さんがひっきりなしだったからです。
それでも行列店の羊羹のお陰で違う客層も見込めるとか。
確かに本店に行けば何時間も並ばなきゃいけない羊羹が、 


何故か北区赤羽に来ればNO行列で買う事が出来る!!
これは冷静に考えれば(冷静に考えなくても)お得!
どこか悟りを開いた様な表情の御主人、 


佐藤正明さんはこうして今日も羊羹とお茶を売るのであった。

 

 

 

 

 

 

井門「羊羹、全種類ありましたよね?」

 

親分「そうだね…流石は赤羽。我々の想像の遥か上を行っているって事だよ。」

 

井門「前回は赤は赤でも赤坂でしたけど、 


赤羽赤坂じゃあ、エラい違いですね…。」

 

 

何気なく発言した一言であったが、 


その後にブラりした一番街商店街でその違いを肌で感じる事となる!

 

 

 

 

 

 

赤羽の中でも有名な「一番街商店街」は、数ある商店街の中でも最古参の商店街。
終戦後いわゆる「闇市」も包括する、非常に器の大きな商店街として産声を上げた。
その頃は「復興商店街」の意味合いも大きかったというから、
今の立派な商店街の姿を見ると「いつか東北の復興商店街も…」と思わずにはいられない。
商店街には大きな資本のチェーン系の店も数多く軒を連ねるが、
昔からの洋品店、薬屋さん、呉服屋さんなどもちらほらと。

 

 

理事長「定価を自分で付けられる商売が残ったんだよね。」

 

 

そう話してくれたのは商店街理事長:小出俊雄さん。 


この時は間近に迫った「馬鹿祭り」の準備でお忙しそうにされていた。

 

 

 

 

 

 

理事長「この馬鹿祭りも昭和30年に始まってるからね。
えっ?名前の由来?当時流行ったのが“エイプリルフール”だったんですよ。
それにちなんだ…というか、エイプリルフールの時期は雨が多くて、
だから天候が安定した5月に“四月馬鹿”ならぬ“馬鹿祭り”をやろうと。」

 

 

実は今年の「馬鹿祭り」、記念となる第60回目の開催なのだ。
大規模なパレードはこのお祭りの目玉行事の一つ。
まさに赤羽っ子が一体となって盛り上がる、 


赤羽のリオのカーニバルなのである!!

 

 

井門「それにしても赤羽の町は最近“酒飲みの聖地”なんて呼ばれる様になって、
訪れるお客さんの層は変わりましたか?」

 

理事長「そうですね、若い方も多くいらっしゃる様になりましたね。」

 

 

こうして町に新たな血液となる“人”が入ってくる事で、
町の活性化にも繋がっていく。交通アクセスの良い赤羽なら、
ちょっとしたきっかけがあれば人は集まるはずだ。
とは言え、地元の方々は地元のペースを崩さない。
商店街事務所の隣には朝から店を開いている飲食店もあり、 


その目の前には140年の歴史を誇る「赤羽小学校」の正門もある(笑)

 

 

井門「もうアレですね?小学校に通う子達は、
小さい頃から昼から楽しそうにしている大人たちを眺めて、 


英才教育を受けているんですね!(笑)」

 

理事長「あっ、でもこっちにはイケナイお店はありませんから!」

 

井門「当たり前だっ!(笑)」

 

 

 

 

 

 

理事長のお話しを伺ってから商店街に出ると、
そこもかしこも英才教育の真っ最中だ(笑)
小学校に迎えにくるお母さんと、そのすぐ近くで陽気に気持ち良くなってるおじさま方。
すぐ近くの「鯉とうなぎのまるます家総本店」は午前中から満席。。。
日の高い内から売り切れになるメニューもあるくらいなのだ。

 

 

 

 

 

 

そんなまるます家と双璧を成す酒飲みの聖地が、丸建水産であります。

 

 

 

 

 

 

こちらはそもそもおでん種の専門店なのだが、
そのおでんをその場で食べさせてもくれる。
しかもお酒も出してくれるってんで、やっぱり朝から大賑わいの店なのである。
約40種類もの豊富なおでん種がゆらゆらと出汁に浮かんでいる光景は、
カリブの海賊に出てくる海賊のお宝の様!!まさに赤羽の金銀財宝が目の前にあるのだ!

 

 

 

 

 

 

井門「(ジュルリ…)この酒飲みの財宝は何時から何時まで楽しめるんですか??」

 

堀井「あぁ、ウチは朝10時30分から、夜は9時まで!」

 

 

なんとっ!!なんとなんとなんとっっ!!
赤羽の金銀財宝は朝10時30分から御開帳となっ!
小学校で言ったら2時間目くらいから丸健水産は店開きをしているというのです。
YAJIKITAのジャック・酒パロウ船長が目を丸くしていると、
そんな当然の事、何を驚いてるんだ??という表情で返す御主人。
そればかりか、店のスタッフ、はたまた並んでいるお客さんまで、
「おいおい、そんな事で驚いてちゃ赤羽では飲めないぜボーイ!」とでも言いたげだ。
さすが酒飲みの聖地で60年近く店を開いているだけはある。う~ん、丸健水産凄い!

 

 

堀井「おでんと一緒にこの丸眞正宗のワンカップを飲むでしょ?
横に目盛が付いてるからさ、50のとこに来たら持ってきてよ!」

 

あっと言う間に御主人が見繕ってくれた「おでんセット」を持っていそいそとテーブルへ。
ザックリと喫煙、禁煙に分かれたテーブルは当然立ち飲みスタイル。
隣のお客さんと肩寄せながら、出汁の効いた熱々のおでんを頬張るのです。
流石はおでん種の専門店だけあって、その味わいの深いこと…。
おでんに合わせ、丸眞正宗のワンカップをクイっと口に含めば、
それまで少しヨソヨソしかった味わいが、一気に渾然一体となる。幸せの塊になるのだ。

 

 

 

 

 

 

YAJIKITAも取材である。
本来なら一人一皿、一人ワンカップといきたい所だが、あくまでも「味見」という体。
一皿とワンカップを回し食いする内にあれよあれよ、ワンカップの目盛が50になった。

 

 

井門「御主人、持ってきました~!」

 

堀井「はいよっ、じゃあ出汁を入れるから。」

 

 

 

 

 

 

そうして“おたま”にたっぷりの出汁を入れると、
天空まで届きそうな勢いで高々と上げ、そこから見事にワンカップの中へと出汁をIN!!!
そうなのだ!『丸健水産の変わったお酒の飲み方』とは、 


ワンカップの中に出汁を入れて『出汁割』として飲む飲み方の事を言うのだ!!

 

 

井門「御主人の手さばきも見事だけど、
ワンカップの色も見事な出汁色だし…熱燗並に熱いね(笑)」

 

親分「ここに七味唐辛子を入れてたもんなぁ。
どんな味がするのか、早速飲んでみてよ!」

 

 

見れば隣の紳士も『出汁割』をキューッと目を細めて飲んでいるではないか。
ここは恐る恐る、いただきま~すっ!(グビグビ)

 

 

井門「うま~~いっっ!!!!
出汁の塩っけが日本酒のコクと合わさり、物凄く合う!!
あっ、よく考えたらおでんって御飯に合うもんね!
日本酒は米で出来てるから、合わない訳がないんだよっ!!」

 

 

あまりのマリアージュに目をパチクリさせていると、
YAJIKITAスタッフから次々と手が伸びる。そしてなかなか戻った手が返ってこない(笑)
全員が太鼓判を押す程の美味が、ここにあったのだ!

 

 

 

 

 

 

赤羽の店は優しい。
それは雰囲気というか、根っこの部分でお客さんの肝を押さえてるから。
言葉が丁寧とか雰囲気がちゃんとしてる…というのではなくて、
どんなお客さんが来るかちゃんと分かってるから、その扱い方を心得ている。
その懐の深さが、優しいのだ。
僕らが最後に訪れた「梅の木新館」もそんな優しい店の一つ。
駅前の本館と共に、赤羽の歴史と共に佇んでいる。

 

 

 

 

 

 

中に入ると昭和レトロを思わせる(いや、狙って作ってるんじゃなくて、自然とそうなってる)
内装と雰囲気。お客さんも常連さんばかりなのが一目瞭然だ。
外の喧騒をちょっと上から感じられる2階というのも良い。 


御主人の溝端豊年さんにお話しを伺った。

 

 

 

 

 

 

溝端「そもそもこの店は昭和22年に父が引き揚げて、
駅前にミルクホールを開店したのがきっかけです。」

 

井門「お店の名前も珍しいですよね、梅の木って…。」

 

溝端「ええ、じいさんの名前が梅太郎と言いましてね。
そこから取ったそうです(笑)」

 

 

一家の大黒柱であっただろう、おじい様。
その名前を一文字頂き、そこに枝葉が付くようにとの想いも込められているに違いない。
さて、この梅の木には名物メニューがいくつかある。 


その一つが創業当時から置いてあるアイスコーヒー(450円)だ。

 

 

溝端「普通はシロップを使って甘さを出しますけど、 


ウチのは上白糖を使います。しかもシェーカーを使ってシェイクするんです。」

 

 

折角なので溝端さんがシェーカーを振る姿を見にカウンターへ。
シェーカーにアイスコーヒーを入れ、上白糖、氷をセット。
それを慣れた手つきでシェイク、シェイク!!

 

 

 

 

 

 

適度にシェーカーを振ると、丁寧にコップへと注いでいく。
見るからに冷たく冷えたアイスコーヒーは見た目にも涼やかだ。
そして上白糖のせいなのか、シェイクしたせいなのか、きめ細かな泡が出来ている。
アイスコーヒーの上にその泡を落とすと…。

 

 

 

 

 

 

溝端「シロップと違い上白糖は溶けにくいので、
先代が知恵を絞ってシェーカーに入れて振るというやり方を考案したんです。」

 

 

その伝統のアイスコーヒー。
昭和22年から赤羽っ子の喉を潤してきた味わいは…優しい。
口に広がるのは優しい甘さで、その冷たさに身体全身がホッと一息ついているかの様だ。
甘いのが苦手な方の為に「砂糖抜き」のメニューもあるみたいだけど、
僕は断然この砂糖入りのアイスコーヒーをオススメします。
これからの暑い季節には言う事無しの甘さと冷たさですよ!

 

 

溝端「この店も常連さんが支えてくれています。
えっ?赤羽の町ですか?そうですねぇ…便利で…猥雑で(笑)庶民的な町ですよ。」

 

 

便利で、猥雑で、庶民的。
赤羽を表現する時にこんなにもぴったりな言葉は無いような気もします。
そしてそこに一言付け加えるなら、赤羽は優しい。
ははは(笑)こんな事をまとめで言うと親分に叱られそうだけど、僕はそう思うのです。

 

 

親分「井門君さぁ、そんな風に無責任に言っちゃだめなんだよ!
そうやって赤羽の一面だけマスコミが無責任に取り上げるから、
昼の時間にちょろっとやって来て本当の赤羽の姿を知らずに帰る人間ばかりになるんだから!」

 

 

本当の赤羽(笑)
まぁ、もっとディープな赤羽も当然あるだろう。
そういうのが大好きな方は、夜飲みをしに赤羽に来るのも良いのかもしれない。
でもきっとそういう人にとっても、赤羽はきっと優しいのだ。
東京発どこ行くツアー!次はどこ行く?