長崎県外海に息づくキリシタンの歴史|旅人:宇佐美友紀

2017-06-16

KIKITABI~2ThousandMiles~

はじめまして!今回の旅人の宇佐美友紀です。



初めての旅に、一週間も前から緊張とわくわくでスーツケースをパンパンに膨らませて(笑)

羽田空港に向かいました。

(普段は当日の朝起きてから準備するタイプなんですけどね。。)


だって1度もお会いしたことない方と二泊三日ですよ!?


顔もわからないため、手こずりながらの待ち合わせ。

メンバーが全員揃っていざ出発!

(和やかな雰囲気に心の中でホッとする私)



さて、今回の旅は長崎~!!


羽田空港から長崎空港まではおよそ2時間

新聞を買って、PCを持ちこんで、飲み物にお菓子!

準備万端で乗り込みます。


午前中のちょうどいい時間帯の便だったからか、機内は満席。

ツアーのバッジをつけたおばさまに囲まれにぎやかに離陸です。



2時間の移動って結構長そう~なんて退屈になるイメージがあったのですが

思いのほかあっという間でした。


そうそう、今回私は通路側であいにく見ることができなかったのですが

離陸後まもなく富士山が望めるスポットがあるようです!

機内アナウンスで紹介してくれていました♪


よく飛行機に乗る方はこっそり楽しみにしていたりするのかもしれませんね!

私は初めて知りました・・・



さて、そんなこんなで寝る暇もなく窓の外は長崎。

ずーんと突き出した海の上の長崎空港に到着です~!




暑い!!!!!


車の中も窓からの日差しが強いということで、

しぶしぶ長袖を着用して日焼け対策。


早速、乗り込みレッツゴー!

旅の目的地、長崎県外海(そとめ)地区へと向かいました




宇佐美「この山はいつ越えるんですか~?」


なんてのんきにドライブを楽しんでいると

スタッフさん「さっきトンネルでもうくぐったよ(笑)」


あらまあ。。驚



青々とした木々に癒されていると逆側の窓からは港風景が・・・

山と海に挟まれて、埼玉出身の私は一気に非日常感がMAXに!


グッドタイミングーーーー!

気持ちが最高潮に高まったところで到着です。


忘れかけていましたが今回はただの旅行ではありません。


「初めまして、今回初登場の旅人 宇佐美友紀です。」

 

 

 

 

 

 

 


360度ぐるーーーーっとベストロケーション!


海に対峙するとかすかに見える五島列島。

大きな海を前にすると小さいことなんて気にならなくなります

明日からもがんばろうなんて気持ちになります!

(まだ今日すら始まったばかりですが)


そんな風光明媚な中に佇む白い建物を発見!

自然の中には存在しそうもないほどの目覚める白さです!


吸い寄せられるように道を下ると、

看板には【遠藤周作文学館】の文字が!

 

 

 

 

 

 

 

 

おおっ、ここが!!!と、近づくと、

まず視界に飛び込んできたのが、入り口の手前にあるベンチ・・・


腰かけて海を眺めていると、思わず深呼吸したくなるほどの解放感。


潮風に吹かれながら

あの外海地区にやってきたことをようやく実感します


高校生の時に読んだ「沈黙」

大人になってから改めて観た映画「沈黙ーサイレンスー」


「かくれキリシタンの里」としても知られるこの場所が

どんな歴史をたどってきたのか。


人々は何を感じていたのか、同じ海を見ながら想像してみる。

昨日まで物語の中だった世界が今目の前に広がっている。

難しいことはわからないかもしれないけど人として感じることはできる。


今回は学芸員の川崎友里子さんにご案内いただけるということで、

せっかくなので等身大でいろいろ聞いてみることにしました!


館内に入ると入り口には高い天井のホールと大きな窓。

吹き抜けの二階部分に位置するステンドグラスからは

青く優しい光が降り注いでいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

誘われるように一つ目の展示室へ。

まず目につくのは遠藤周作さんご本人が当時使われていたデスク!!!


椅子には特に使用感があり息遣いを感じられるほどに

先生を身近に感じることができました。


一緒に展示されていたパネルには当時の書斎の写真が飾られていたのですが、

親近感が沸いたのは私だけではないはず・・・(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

そして書斎コーナーから振り向くとなんと直筆の生原稿が!

近づいてよく見てみると、「沈黙」の草案ではありませんか・・・!!


二重線で訂正をされたりしていて執筆過程を垣間見たようで

少しタイムスリップしたような気持になりました。


そして文字を追いながら原稿にかぶりついていると

マス目がうっすらと見える気がしてよくよく確認すると・・・


えっ?!先生これ原稿用紙の裏面使ってます?!!?!

自由に書くことのできる裏面のほうが勝手がよかったのでしょうかね。。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二つ目の展示室へ進むと

映画公開記念特別展

【遠藤周作×マーティンスコセッシ監督「沈黙」展】を開催中


映画の公開に伴って来館者が増えたということもあり、

この特別展も会期を延長(2017年6月末まで開催)したそうです。


特別展では、実際に映画で使われた踏み絵(レプリカ)や

数々の賞状などが展示してあり、「沈黙」のことを改めて振り返ることが出来ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

特別展を観て、ふと思ったこと・・・ それは、

なぜ遠藤周作さんが「沈黙」を書いたのか」ということです。


そのことを、川崎さんに尋ねたら、

肺結核の再発で病床にふせたことが大きいのではないかとおっしゃっていました。


人には誰しも自分の人生を見つめなおさざるを得ない時があるような気がします。


死と向き合うということ、人間の弱さ、孤独や苦しみ、、

遠藤周作さんにも暗闇の中を航海するような時期があったのですね。

 

 

 

さてここで気になってきたのはここ「外海地区」のことです。


その「沈黙」の舞台となっている外海のことを知るため

【外海歴史民俗資料館】へやってきました。


ボランティアガイドの江口洋子さんにご案内いただきながら

1階では当時使っていた農耕具や生活に使っていた道具などを見せてもらいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

電気が通るのが遅かったらしく、

江口さんの幼少時代なども昔ながらの生活が長かったそうです。


そして2階に上がると、かくれキリシタンに関する資料が

スペースのはじからはじまでびっしり!


禁教時代に心の支えとされていたであろうマリア観音やロザリオ。

当時の貴重な資料が数多く残されていました。


信仰の違いからつらく窮屈な思いをせねばならなかった時代。

時が経ち、禁教令が撤廃されたのちも

様々な思いからカトリックに復帰せずにいたかくれキリシタンの人々。

 

 

 

 

 

 

 

 

あらためて歴史をたどると、

学校で習った年表の中にも懸命に生きていた人々の情景

より鮮明に浮かべられる気がしました。


続いては、キリスト禁止令が解けた後、

この地区に主任司祭として赴任してきたというド・ロ神父の記念館へ


さすが長崎、建物がすぐ近くに見えるのにたどり着くまで階段がかなり急です。

小高い傾斜から見下ろすと、生産量日本一を誇るびわが鈴なりになっていました。


優しいオレンジ色が新緑に映えていてきれい!

ところどころ石積みになっているのもあいまって本当に素敵な景色でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ド・ロ神父記念館につくやいなや入り口に肖像画が飾られていました。

もふもふのおひげに包まれたやさしそうなお顔・・・!


実はこの立派なおひげ、

日本に渡ってくる前にわざわざみなさんひげを生やして渡航していたんですって!


確かにイメージの中の昔の外国の方ってひげのイメージありませんか?!

本国では違う姿だったんですね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて話を本題に戻しますと、館内には出産の際に使う医療器具や人体模型に

メリヤス編みの機械、ミシン、ド・ロ神父直筆の日計簿がありました。

(とっても几帳面できれいなローマ字の表記の性格がうかがえました!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、、あの、ド・ロ神父って・・・」


ド・ロ神父は信仰だけを頼りに貧しい暮らしをしていた外海地区の人々を

「魂の救済だけでなく、その魂が宿る人間の肉体、生活の救済が必要」と感じ、

教えだけでなく多彩な事業を授けたとても偉大な方だったのです!


自分で帳簿収支をつけながら、自給自足だけでなく作ったものを売ったりと

外海の人々に自立して生きる力を与えた方ともいわれています。


思想だけでなく自身の身体をもってその様々な技術を伝えたようで

なんてバイタリティに溢れた方なんだ・・・とスーパーマンのように思えました。



最後は、同じ敷地内にある【旧出津救助院に移動

シスターの赤窄須美子さんにもお話を伺うことができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ド・ロ神父は女性たちの自立を支援するために

先ほどお邪魔したド・ロ神父記念館のような鰯網工場やマカロニ工場、

他にも織物、パン、醤油などを商品として皆で作れる環境を

私財を投じて(!)整えたそうです。

(すごい単位の、、かなりの額をお持ちになってこられたんでしょうね・・・)


そしてシスターに案内していただいて旧製粉工場を見せていただきました。


ここで、ようやくこのワードが・・・

「ド・ロさまそうめん」!!!


長崎空港に着いてすぐ

「ド・ロさまそうめん」「ド・ロさまパスタ」というポスターに迎えられ

お土産で買えるということもあり個人的にとても気になっていました。


ド・ロさまそうめんとは、

当時はフランスから取り寄せた小麦の種子を日本で栽培し

その小麦粉と落花生の油を使っ独特の製法で作られたそうめん!

なんだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

実は持っている情報の少なさから

恥ずかしながら「お料理上手の神父さん」を想像していました・・・



長崎出身のスタッフさんも幼少期には普通に食卓に並んでいたそうで

まさに今も親しまれている長崎の味!


私も温麺でいただいたのですがコシの強いつるつるの麺が

温かいおつゆにつかってものびづらく、少し太めなので食べごたえがありました♪

遠藤周作文学館内 軽喫茶 アンシャンテにて)

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りにはしっかりあごだしとともにお買い上げ~!

おうちでいただくのも楽しみです。


旧製粉工場の2階には、

ド・ロ神父が1889年頃に購入したというハルモニュウム(リードオルガンの一種)や

1メートルぐらいある白い陶器のマリア像が飾られていました。


シスター赤窄さんが、ハルモニュウムを弾いてくれたんですが、

「指1本で和音が弾ける機能」や「鍵盤をずらして音域を替える機能」など、

様々な機能があってびっくりしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、気づくと夕方になっていました。

朝から動いていたのに実りある時間はとても早く感じます。


多くの学びをいただいた外海との出会い、

最後は遠藤周作さんの沈黙の碑と向かい合います。


「人間がこんなに哀しいのに 主よ 海があまりに碧いのです 遠藤周作」


私も同じ景色を今見ているのでしょうか?

海の碧さはこのあおさでしたか?


おだやかで優しい、私が立っているこの今の外海も

いつか昔になるんだなぁなんて初めてきた土地なのに

少し知った気になってしまうほど・・・

同じ海なのにまた朝とは違う表情をしていたような気がしました。



KIKITABI~2ThousandMiles~

「長崎県外海地区に息づくキリシタンの歴史」


旅人は宇佐美友紀でした。