絶対行きたくなる!瀬戸内国際芸術祭…男木島めぐり。|旅人:井門宗之
2019-04-19
ミラクル「俺達が最初に瀬戸内国際芸術祭に来たのって、
9年前になるんだね。」
井門「そう、だってあれって俺がPになって始めてのロケだったんだもん。
カメラマンがいなくて、吉武さんと横山さんと3人でね。」
ミラクル「覚えてるわ~。小豆島に行ってヤマロク醤油さんとか、
手延べそうめん体験とかしてね。」
井門「だってあなた、取材があまりにも楽しかったからって、
そのあと家族で香川に来たでしょ?」
ミラクル「ここの港の駐車場、凄く覚えてるんだ。
だって車で神奈川から来たんだから 。」
その時、小学生だったお子さんも今や大学生。
「良いかい、井門?小学生の内に思い出はいっぱい作るんだよ。」
と背中で寂しく語るミラクルさんもそろそろ50歳が見えてきた。
永尾「俺なんかもう50になるけど?」
夜の帝王は50歳もなんのその。
今回のロケでも夜の…(ヤメ)
橋本「永尾さんに教えてもらったあの(ヤメ)」
新婚の橋本君は今回も永尾さんにべったりであります。
KIKI-TABIは作家3人、D3人、カメラマン1人でチームを組むので、
最近の地方ロケは永尾、吉武、橋本、井門のチームがやたらと多く。
今回の取材もこのチームでキャッキャッしながらのロケとなりました。
今年で4回目を迎える瀬戸内国際芸術祭。
3年に1度、瀬戸内の島々で開かれる現代アートの祭典です。
9年前にこの祭典の総合ディレクターを務めた北川フラムさんにお話しを伺った時、
北川さんはこんなことを仰っていました。
北川「僕はこのお祭りが終わった後、何を残せるのかを考えているんです。」
あれから9年。
いま取材を終えて北川さんの言葉を改めて反芻する。
そしてすればするほど、9年前にこの事を考えていた北川さんの凄さを思い知らされる…。
それほどに瀬戸内の島々には国際芸術祭が根付き、
島の方々にはなくてはならないものになっているのだから。
あれから9年。
僕らは再び高松港に立っていた。
目の前には凪いだ瀬戸内の海、背後には高松の街並みが広がっている。
我々は改めて瀬戸内国際芸術祭2019について知るべく、
香川県瀬戸内国際芸術祭推進課の吉井寿美子さんにお話しを伺いました。
井門「改めて瀬戸内国際芸術祭とはどんなお祭りなんですか?」
吉井「はい、アートを通じて島のおじいちゃん、
おばあちゃんを元気にしよう!
というのがコンセプトです。地域を元気にするのが目的、
単なるアートのイベントではないんです。」
井門「!!!
そうだったんですね…。ただの現代アートの祭典とは訳が違うんですね。」
吉井「そうですね、ですから作品もいかに瀬戸内の自然の中に溶け込んでいるか、
アーティストの皆さんも風景を活かして作品作りをされています。」
アートの祭典を通じて島が元気になり、作品は島の風景の中で生きている。
瀬戸内国際芸術祭は今回で4回目だが、過去の作品もそのまま展示する場合もある。
島を歩けばそんなアートと日常的に出会えるのだ。
これが北川フラムさんが目指したお祭りなのだろう。
しかし吉井さんは更に驚くべき島の変化を教えてくださった。
吉井「この約10年で移住者も増えました。
男木島では休校していた小学校が復活して、奇跡の島なんて言われてます。
これは全国的に見ても非常に珍しい事例かと思います。」
井門「休校していた小学校って復活出来るんですか!?」
なんでも小学生をお持ちの御家族が移住されるにあたり、
様々な方の尽力で小学校が復活するという運びになったそうです。
うーん、瀬戸芸凄いぞ…本当に凄い。
吉井「それとNYタイムズで世界でいま行くべき所として、
日本で唯一瀬戸内が取り上げられていて、7位。
ナショナルジオグラフィックトラベラーズでは1位に取り上げられてるんです!」
井門「!!!」
もうね、驚くしかないです(笑)
2019は新たにアジア各地域のアーティストとのコラボ、
また『食』も一つのアートとして捉え、
各島の食材をクリエイターがプロデュースして提供するなどの展開が待っているそう。
3年に1度のお祭りは、きっとまた島の人達をワクワクさせてるんだろうなぁ。
ミラクル「そうそう、あの名物隊にもお話しを聞かなきゃね!」
井門「こえび隊だね!」
“島々に暮らすお年寄りを元気にしたい、
そんな想いから長寿の象徴として祝いの膳に供される『こえび』を名前に取った『こえび隊』。まさに『こえび』の様に、瀬戸内の島をピチピチ跳ねまわっている。“
10年前の旅日記にこんな風に書いたのがこえび隊。
瀬戸内ビューの事務所にお伺いし、何人かの方と名刺交換を。
すると…
甘利「私、9年前にも井門さんにインタビューされてるんですよ(笑)」
一行「え~~!?」
そうなのです。
9年前にこえび隊としてインタビューに応えてくださった甘利彩子さん。
その甘利さんが9年の時を経て(大げさか)再びインタビューに応えてくださったのです!
井門「肩書は“事務局長”って…御立派になられて…。」
甘利「やめてください(笑)
あの時も今日みたいな服装でしたね。確か作業か移動の合間だった気がします。」
ミラクル「あ~!!!」
井門「なんだようるさいな。」
ミラクル「あったよ!9年前のインタビューの写真!」
↑(2010 YAJIKITA on the road)アートを巡る香川・直島~現代アートの旅~
皆「ほう、どれどれ…?若っ!!!!」
井門「なんかもうアレだね、全力で調子に乗ってるね…。」
ミラクル「いやぁ~、乗ってるねぇ(笑)
でもさ、こういう時代がなきゃダメだから(←謎のフォロー)」
永尾「向かうとこ敵無しって感じだね。」
橋本「井門さんにもこういう時代が…。」
井門「橋本くん、飴あげるからちょっとこっちおいで。」
……………しばらくお待ちください…………
気を取り直して、コホン。
これは甘利さんとの再会があったからこそ出て来た画像だからね!(笑)
でも本当に今回も偶然の再会で。
甘利「9年ぶりにお会い出来て嬉しいです!
今回は私ともう一人でお話しを伺います!」
渡邉「宜しくお願いします!」
渡邉顕子さんは瀬戸芸に関わって1年半になるそうで、
それまでは広島の旅行会社にお勤めだったそうな。
井門「じゃあ広島からこちらに移住されて?」
渡邉「はい!事務所から見える瀬戸内ビューも転職のきっかけです!(笑)」
井門「甘利さん、9年前と今とじゃ色々と随分変わったんじゃないですか?」
甘利「それはもう、全然違いますね。
最初は島の人達も“現代アート?よく分からん”って人が多かったんですけど、
いまは島のおじちゃん、おばちゃんの方が現代アートに詳しくなっちゃって(笑)」
井門「ちゃんと根付きましたねぇ。」
甘利「アーティストの名前も詳しくなって、
島に来たお客さんを案内したりしてますからね(笑)」
これはまさに吉井さんが仰っていたコンセプトが浸透している証拠だろうなぁ。
アートを通じて島の人達を元気にする、
そして北川フラムさんの仰った“祭りが終わった後”の理想的な姿が、
きっと今の瀬戸内にはあるのだ。
2010年にその第1回が開催された瀬戸内国際芸術祭。
今では世界的にも有名なアートのイベントになり、
お客さんのみならず、こえび隊への入隊希望も世界中から来るのだという。
甘利「今回は延べで8000人、
実数で1000人になるんじゃないかと思ってます。」
井門「そんなにですか!?」
甘利「こえび隊は、アーティストの制作のお手伝いなど簡単な事もサポートします。」
井門「今年で4回目ですから、リピーターも多いんでしょうね?」
甘利「そうですね、かなり多いですよ。
大体4割がリピーターじゃないでしょうか。」
う~ん、しっかりこえび隊も瀬戸内に溶け込んでるじゃないですか!
そして今回、意外にも初となる公式ツアーも組まれる。
瀬戸内国際芸術祭は春夏と秋の二期に開催されるのだが、
それぞれの季節で開催される島を巡る公式ツアーがまた魅力的なのです。
渡邉「オフィシャルツアーの良いところは、
船に乗れる、食も楽しめる、日帰りで行ける、そしてガイドが付く、です!」
井門「このツアーは何人から申し込めるんですか?」
渡邉「はい、お一人でも大丈夫ですし、
仮にお一人しか参加者がいなくても御案内します!」
こえび隊も、瀬戸内で暮らす方々も、様々に進化を遂げている瀬戸内国際芸術祭。
渡邉「気合い入ってますので、
ぜひ遊びに来てください!」
渡邉さんのこの言葉に全てが集約されている気がします。
甘利さん、渡邉さん、また9年後に同じ場所で写真撮りましょうね(笑)
さぁ、それではいよいよ島に向かって出航!
我々は今回の目的地、男木島行きのフェリーに乗り込みました!
今回男木島を御案内頂くのは(株)テシマサイトの森島丈洋さん。
瀬戸内を愛し、瀬戸内に愛された男、それがサンシャイン森島なのだ!(違)
森島さん曰く、男木島はアートだけの島ではないとのこと。
確かに吉井さんが仰っていた様に、小学校復活など色々ありそうだぞ…。
我々は森島さんの御案内で男木島を巡ることに。
島の住宅地を繋ぐ路地は、なんとも不思議な雰囲気。
ところどころにアート作品が点在し、でもすぐ隣には島の生活があります。
森島「瀬戸芸の総合プロデューサーである福武總一郎さんが仰っているのは、
“有るものから無いものを作る”ですから、
生活に根差した作品があちこちにあるんです。
あっ、そこもオンバ・ファクトリーと言って手押し車をカスタマイズするんですよ(笑)」
井門「あのおじいちゃん、おばあちゃんが押す車ですよね!?」
森島「はい、なのでこの島の集会で集まるおじいちゃん、おばあちゃんのオンバは、
イケてるデザインのものが集まるんですよ(笑)」
なるほどなぁ…こうして“アートが島民を元気に”しているんだ。
よく見てみると、家の外板にもカラフルな絵が描かれていて、
なんとも楽しい雰囲気を作り出しています。
そして今回の旅でどうしてもお会いしなくてはいけない方。
そうです、6年前に男木島に移住されてきた福井大和さん。
福井さん御一家の移住により、島の小学校が復活したのですから…。
福井さんは移住前まで大阪でIT関係の会社を経営されていました。
もともと男木島出身の福井さん、
瀬戸内国際芸術祭をきっかけに男木島に18年ぶりに戻ってみると…。
福井「18歳で島を出て、2013年ですから18年ぶりに島に帰ってきたら、
人口は半分に減ってるし、学校は休校になっているし、
15歳以下の子供もいなくなっていました。
そうじゃない島の姿を知っている身としては、なんとも言えない気持ちになりました。」
福井さんはそんな男木島の姿を見て、
この島をなんとかするのは島出身の自分の役目だろうと考えます。
―大阪では自分の様な仕事をしている人間は沢山いる、
けれど男木島の現状を変えられるのは男木島出身の自分しかいない。―
家族と話し合い、当時小学4年生だった娘さんを連れて移住を決めた福井さん。
ところが男木島には小学校がありません。
福井「奇跡中の奇跡の様な話なんですけど、
当時瀬戸芸に関わる作家さんや小学校のOB・OGの尽力で小学校が復活したんです。」
そして現在、島には移住者がどんどん増えているそうで…。
福井「めちゃくちゃ増えてます(笑)
この6年で60人くらいの方がU・Iターンしてます。
最初の頃は瀬戸芸関連で移住される方も多かったんですけど、
今は生活や教育関係に憧れて移住される方も多くなっています。」
そんな島のコミュニティの一つが福井さんの奥様が館長を務めるこの図書館です。
いや、いまこうしてお話しを普通にお伺いしてますけど、
図書館が出来る前の写真見たら大変なことになってましたよ(笑)
福井「あぁ、男木で一番傷んでる家を探したんです(笑)」
そもそも奥様は福島のご出身でIターンされるにあたり、
どんな風に島の方とコミュニケーションをとっていくか?
身近に本がある環境が大切だと思って図書館を開くことにしたのだとか。
井門「なんだか人のお家の書棚を覗いている様な気持になるんですよね。
凄く良い雰囲気で。」
福井「実は妻が本好きで、現在約5000冊の本がありますが、
そのうち半分は妻の私物なんです(笑)」
井門「えっ!?」
福井「大阪に住んでいたとき、床が抜けたことがありますもん(笑)
あれ~?本棚傾いてるのかな?と思ったら違う、これ床が抜けてる!って(笑)
だから男木に来る時に妻が“図書館があれば本を捨てなくても良い”って話しまして。
本を読みに来る人って面白い人が多いですから。」
実はこちらの図書館は移住者にとっての相談窓口にもなっていて、
カウンターの横の黒板には“移住相談受け付けます。”の文字も。
福井さんは御自身の経験を活かして、島民と移住希望者の橋渡し役も担っているのです。
福井「いま島には170人が生活していて、そのおよそ半分が70歳以上です。
現役で働いている層は実はそんなに多くないのが現状です。
10年後、20年後を見据えた時に、100人でなんか出来る島にしたい。」
3年に1度行われる瀬戸内国際芸術祭。
この“3年に1回という期間が実は良い”と福井さんは仰います。
島の空気が循環するのがいい、と。
循環という意味で言えば、福井さんが移住してから島に新たに子供が4人生まれたとか。
10年・20年後の男木島、きっと子供の声で溢れていると信じています。
図書館を後にし、また路地を散策していると何やら子供の笑い声が。
ちょうど山の中腹あたりでしょうか。
見下ろすと男木の港が見え、船が悠々と海を進んでいます。
ちょうど取材の時が桜のシーズンだったので、
青い瀬戸内の海と桜のコントラストが見事で。
そんなロケーションの場所にあったのが、「海とひなたの美容室」。
御主人の山口憲太郎さんも3年前に移住された方です。
井門「絶好のロケーションですね!」
山口「はい、この風景は最高です。」
井門「お客さんは…外国の方ですか!?」
山口「あ、昨日アメリカから移住してきた方です(笑)」
井門「お店の前の風景、やっぱり最高ですね!」
山口「そもそも店の前のスペースには納屋があったんですけど、
この景色が見たくて無くしちゃいました(笑)」
井門「お店はいつから営業しているんですか?」
山口「移住して3年で、店は1年前からやってます。」
井門「島での暮らしはいかがですか?」
山口「はい、ゴキゲンな生活をしています(笑)」
そんなやり取りをしながらも、春を告げるウグイスの声が響き、
耳を澄ますと船のエンジン音が聞こえてきます。
ここは車の音が全くしない、自然豊かな島。
森島「この静かな島に瀬戸芸の期間は1日だいたい800人位の人が来るんですよ。」
そうか、それも島の一つの側面。
そしてこの場を借りて言わせてください。
瀬戸芸の舞台となる島々は、あくまでも島の方々にとっての生活の場。
訪れる方は必ず「島の暮らしにお邪魔している」という気持ちを持って散策してくださいね。
日本には古くから「郷に入りては郷に従え」という言葉があります。
特に瀬戸芸においては、その気持ちは大切なのかなぁ、と。
その後も男木島散策は続き、
出て来たアート作品が「歩く方舟」。
うーん、これはなかなかに現代アートだぞ(笑)
ラジオで描写するのが難しい…なんて話していたら。
森島「良いんです!
基本的にはアート作品は自由に見たまま、感じたままで良いんですよ(笑)
そして船に乗った瞬間から瀬戸内の旅は始まっています。
そんな船の旅も併せて楽しめるのが瀬戸内国際芸術祭の醍醐味かと思っています!」
約10年前に初めて訪れた「瀬戸内国際芸術祭」。
あれから10年が経ち、アートは島の生活と見事に結びついていました。
そしてその結びつきが織り成すアートもまたあるわけです。
それは島の人達の豊かな時間。
豊かな自然の中で、豊かな時間が流れている。
男木島への移住者が増えている理由、物凄くよく分かりました。
今回番組ではご紹介出来ませんでしたが、
「ダモンテ商会」という物凄く美味しいコーヒーとパンがあるカフェもあったり、
猫が至る所でニャアニャア甘えてきたり(笑)
瀬戸内国際芸術祭の開催期間だけじゃなくても、
きっと男木島にはあなたの心を揺さぶる何かが待っているはず。
今の暮らしを見つめ直したいな…そんな気持ちが少しでもあるなら、
とにかく観光でだけでも男木島を訪れてみてください。
瀬戸内の穏やかな海を、ゆったりと船に乗って。