会いに来ました!福島・浜通り縦断の旅!|旅人:片桐千晶

2019-08-29

こんにちは!旅人の片桐千晶です。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のテーマは

『会いに来ました!福島・浜通り縦断の旅』。

 

福島県の沿岸地域「浜通り」。
東日本大震災から8年が経ち、私自身訪れるのは6年ぶりです。
令和になって最初の夏。
震災復興が続く街や人は、どんな表情をしているのか。
浜通りの「今」に会いに行ってきました!

 

 

 

今回は福島県のいわき市から北へ縦断しながら浜通りを巡ります。
最初に向かったのはいわき市の「ワンダーファーム」。
一面に広がる緑の芝生が眩しい!
巨大なトマトのオブジェも存在感があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは5ha(東京ドーム1個分)の広大な敷地の中に、トマト栽培のハウスやジュースなどを作る加工場、レストランにBBQ場、直売所、ドッグランなどが集まるいわばトマトのテーマパーク。2016年にオープンしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

眩しい日差しのもと、広い芝生に座りながらお話を伺ったのは
ワンダーファームの草野純一さん

 

 

 

 

 

 

 

 

芝生の感触が心地いい~ 
ここで栽培しているトマトはなんと11種類。
このうち9種類の収穫体験ができます。

 

 

 

 

 

 

 

 

震災や原発事故の後に出た風評被害。
農家減少に拍車がかかる中、なんとかしたいという想いで作られたワンダーファーム。
完成した当初は大丈夫なのかと心配する声も挙がりましたが、風評被害に負けず頑張りたいという強い想い、最新技術と管理のもとで栽培される安心安全なトマトの美味しさ、子供たちがのびのび走り回って遊べる安心な場所だという理解が広まり、今では連日沢山のお客さんで賑わっています。

 

震災直後は福島の水や土、空気が心配され、
子どもたちが外で遊ぶ姿があまり見られませんでした。
それが今や、芝生の上で寝転んだりサッカーをしたり、思う存分走り回っています。

 

この当たり前の風景を取り戻せた喜びは大きかったそう。
「こういう場所を作ってくれてありがとう」
地元の人たちから感謝の声が届きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

早速私もトマトの収穫体験
野菜の中でも特に大好きなトマト。いっぱい食べるぞー!
まずは入り口で手と足の消毒。
トマトがかかる病気の菌を持ち込まないよう、しっかり拭きます。

 

巨大なハウスの中、ずっと奥まで続く緑の壁。
鈴なりのトマトが実っています。
9種類もできる収穫体験。まずは中玉のカンパリから。

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ赤で皮がパーンと張っていて、持っただけで新鮮さが分かります。
早速パクリ。甘~い!
みずみずしくて噛むとトマトの果汁が溢れてきます。
フレッシュ感が全然違う!美味しい~

 

ヘタがピーンと上を向いて逆立っているのが、新鮮なトマトを見分けるポイントです。いや~こんなにヘタが逆立ってるトマトは見たことがありません。
まさに新鮮そのもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

続いてミニトマトのアイコ
家の近くのスーパーでもよく見かけるおなじみの品種です。
食べると…んん~甘みが小粒の中に凝縮してて美味しい!

 

 

 

 

 

 

 

 

草野さん「見た目がツルっとしてますよね、私みたいに。ははは」
片桐「た、確かに。ツルっとしたスキンヘッドでいらっしゃる…」
草野さん「ビニールハウスの中は暑いでしょう。私の場合は玉のような汗じゃなくてらっきょうのような汗。ほら、ツルっとしてるから…」
片桐「なはははは(笑)」

 

こんな会話をしながら、二人で汗を拭きつつトマトをもぐもぐ。

 

そしてサングリーン
緑色の品種で、少しだけ黄色みがかっているのが食べ頃です。
甘さの中に程よい酸味があってこれも美味しい。
ワンダーファームでも人気の品種だそうです。
カラフルなトマトはサラダにしたときにもおしゃれですよね。
品種によって味や形が違い、食べ比べできるのが楽しいです。

 

 

 

 


トスカーナバイオレット


キャロル

 


イエローアイコ


フラガール

 

 

 

 

大好きなトマトが目の前に沢山実っていて幸せ~♪と夢中で食べていたら、
あれ?

気付いたら手が黄色い!

 

これはトマトの茎についている「ヤニ」。
トマトが外敵から身を守るためのものだそうです。
手についたヤニは洗えばすぐに落ちますが、何も知らずに白いTシャツを着てきてしまった私。右の肩部分がしっかり黄色に染まっておりました(笑)
帰ってから念入りに洗濯することになるので、トマトのもぎ取りに行く方はお気をつけ下さいませ。
広い敷地の中には田んぼアートも。
「WONDER FARM」の文字が綺麗に出ています。

 

 

 

 

 

 

 

 

直売所には濃厚トマトジュースや様々なトマトの加工品がずらり。

 

トマト柄の小物も可愛くてお土産にもぴったりです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レストランのオリジナルメニューやイベントも大人気のワンダーファーム。
食べて遊んで一日楽しめるスポットでした。

 

トマトが美味しかった勢いで初めてのかぶり物。
予想以上にジャストフィットでございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて向かったのはワンダーファームから北に車でおよそ20分。
楢葉町の「道の駅ならは」。

 

 

 

 

 

 

 

 

福島第一原発事故でほぼ全域が半径20キロ圏内の警戒区域となり避難指示が出された楢葉町。
2015年に避難指示が解除され、今では住民の半分ほどが戻ってきています。
今年春にはサッカー施設「Jヴィレッジ」も再開され、徐々ににぎわいを取り戻しつつあります。

 

そんな中、今年4月25日にリニューアルオープンした道の駅ならは。
8年ぶりに営業を再開しました。
明るく開放感のある館内には、旬の桃など地元の農産物やお土産などが並び、
温泉保養施設の営業も再開されています。

 

お話を伺ったのは、道の駅ならはの駅長・渡辺正純さん

 

 

 

 

 

 

 

 

リニューアルオープン後、予想以上に沢山のお客さんが来てくれてほっとしているそう。

 

楢葉町ではお米や野菜など地元の農産物はしっかり放射性物質検査をして出荷。
しっかりと「安心」を目に見える形で消費者に届けています。

 

 

震災復興に向けて進む楢葉町で、町の活性化を図ろうと去年から始まったのが地酒造り
実はわたくし片桐、日本酒が大好き
ただいま日本酒の資格試験に向けて勉強中の身なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

この「楢葉の風」は、楢葉町で育てた酒米「夢の香」を使って、
姉妹都市の会津美里町の酒蔵・白井酒造店で醸造。

 

白井酒造店は「風が吹く」というお酒が有名で(これも美味しい!)そこから一文字もらい、楢葉町に復興の風を吹かせようという願いを込めて命名されました。

 

 

 

 

 

 

 

 

震災直後はこれから先住めるかどうか分からないとさえ言われた土地で、
いつかまた米を作るためにとずっと管理されてきた田んぼ。
そして今では安全なお米がとれるようになり、地酒が造られるまでに…。
どれだけの苦労を乗り越えて形になったのかと思うと胸がいっぱいになります。

 

楢葉の風は、純米大吟醸や特別純米酒、生酒のうすにごりなどを販売。
数量限定とあって8月末には完売しそうな勢いで、大人気なんだそうです。

 

では、さっそく純米大吟醸を頂きます…
ん~~~~、美味しい!

 

 

 

 

 

 

 

 

飲んだ瞬間にフルーティーな吟醸香としっかりしたお米の旨味がふわ~っと広がる、鮮やかで綺麗なお酒です。これは美味しい!
個人的にとても好きな味で感動。売り切れるのも納得です。

 

お酒は人と人をつなぐもの。

 

この楢葉の風が人と土地、人と人を結びつける存在としてもっともっと広がっていくといいなぁ…とありがたく味わったのでした。

 

道の駅ならはのレストランには人気メニューのマミーすいとんも。

 

 

 

 

 

 

 

 

このネーミング、名付け親はなんとサッカー元日本代表監督のトルシエ氏。
代表監督時代にJビレッジに滞在した際、福島の昔ながらの郷土料理すいとんを食べ「フランスの故郷のおばあちゃんの味だ!」と言ったことから命名されたマミーすいとん。
モチモチのすいとんと優しいおだしが体に沁み渡る美味しさでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

道の駅ならはを後にし、北上すること車で10分。
街の様子も見てみようと立ち寄ったのは富岡町のJR富岡駅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海のすぐそばにあり、20mもの津波が押し寄せ壊滅的な被害を受けた場所です。
駅舎も新しくなり、JR常磐線はいわき駅からこの富岡駅まで繋がっています。
周りには大きい駐車場やホテルが建ち、住宅工事が進んでいました。
これからもっと色んな建物が出来て、風景も変わっていくんだろうな。

 

現在、富岡駅まで繋がっている常磐線ですが、残すところ、富岡駅から浪江駅までの約20キロの区間のみになっています。
今でも復旧工事が進められ、来年の3月頃、開通する予定なんだそうです。

 

通勤通学で行きかう人たちの声がにぎやかに響く、早くそんな光景が見られるようになればいいな…と思ったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JR富岡駅からすぐそばの海側に移動。富岡漁港があります。
今年7月26日に8年4か月ぶりに再開。
これで福島県内に10か所ある漁港がすべて再開しました。

 

いい色に日焼けした笑顔が素敵な相馬双葉漁協・富熊地区副代表、遊漁船「長栄丸」船長の石井宏和さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年4月に避難指示が解除され、復旧工事や漁業施設の工事が進みようやく再開にこぎつけた富岡漁港。
取材した日は2隻の船が泊まっていて、将来的には7隻が戻ってくる予定です。
現在は試験操業が週に2~3回、遊漁船は週に3回ほど。
やっとスタート地点に立てたといいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

150種類もの魚が獲れる豊かな福島の海。
もともとこの辺りで獲れる魚は「常磐もの」と呼ばれ、全国的にも高い評価を受けていました。

 

釣り人憧れの魚 ヒラメはなんと80センチクラスが釣れることも!

震災後に本格的な漁を行っていなかったので、資源が豊かになり栄養が蓄えられ魚が大きくなっているそうです。

 

先日石井さんが船を出していると、なんとクジラに遭遇
石井さんも初めての経験で、専門家によるとセミクジラで福島県沖で確認されるのはとても珍しいとのこと。
海の豊かさが戻ってきたことといい、色んな変化が福島の海に起こっているのかもしれません。

 

震災後、風評被害を払しょくするために石井さんが始めたのが
海LABOという活動。

 

 

 

 

 

 

 

 

原発沖に船を出し、参加者が釣った魚をアクアマリン福島に持っていき
実際に線量を図って自分の目で安全性を確認するというものです。
「百聞は一見に如かず」とはまさにこのこと。
自分が体験して安全だと体感できれば、消費者の気持ちも変わるはず。

 

知らない誰かの不確かな情報に流されず、自分で見て、話を聞いて判断したい。

何においても大事なことだと、私も再確認しました。

 

震災前から魚の数が減っていると感じていたという石井さん。
いくら魅力的な海とはいえ、釣れるだけ釣ることはもうしてはいけない、
せっかく豊富になってきた魚をまた減らすわけにはいかないといいます。
先のことを考え資源を大切にしながら漁を続けていくことが大事だと、
その目は福島の海の将来を見据えていました。

 

遊漁船「長栄丸」の営業は土日を中心に週3回。
HPから予約ができます。
予想を超える大物が釣れるかも!?

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に向かったのは富岡漁港から北へ車で40分程の南相馬市
相馬の野馬追で有名な南相馬市。
震災から2年後の2013年に、私は取材で訪れました。
当時はまだ避難指示が解除されておらず、町に人がいない状態。
小高駅前は建物や家が立ち並んでいるのに、人だけがいない、物音ひとつしない。
シーンとした静寂の中、誰も通らない道路の信号だけが静かに点滅しているあの光景を今でもよく覚えています。

 

2016年7月に避難指示が解除され、今では戻ってくる住民の方や再開するお店も増え、街が「生きている姿」にほっとしました

 

到着したのは「厩舎みちくさ」。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乗馬クラブで、現在は仙台や東京などの馬主から馬を預かって育てる仕事が中心。馬たちが元気な姿で出迎えてくれました。

 

1.5haの広い牧草地。
思わず深呼吸したくなる緑に囲まれお話を伺ったのは渡部南さん

 

 

 

 

 

 

 

 

小中学校は乗馬クラブ、高校は馬術部、その後も乗馬のインストラクターと、ずっと馬とともに歩んできました。

 

広島県出身の渡辺さんは、震災後に被災した馬の世話をするスタッフとして南相馬に派遣され、それがきっかけで移住することに。

 

震災で被災したのは人間だけではなく、馬や牛も同じ。

 

苦渋の選択で置き去りにされたり、殺処分されたりしました。

 

そんな中、被災した馬たちを助ける活動を行っていた渡辺さん。
その仕事が終わった後は、他の施設で働きながらお金をため、
南相馬市に厩舎みちくさをオープンさせました。
現在は被災馬を含む13頭を育てています。

 

 

 

 

 

 

 

 

馬に語りかける表情は優しく楽しそうで、愛情が伝わってきます。
渡辺さんが一緒に連れてきてくれたパーちゃん(本名パッキャオ、7歳オス)。蹴りが得意で、プロボクサーのパッキャオから名付けられたそう。

 

広い牧草地に着いて手綱を離した瞬間、
「うわあーーーーーーーい!」と、ものすごい勢いで駆け出します。

 

 

 

 

 

 

 

 

全速力で走ってくるパーちゃん。迫力ある…!
全力で喜んでいる姿が可愛らしいです。
こうして愛情をかけてのびのび育ててもらっている馬たちは幸せだなぁ…としみじみ。

 

 

 

 

 

 

 

 

今では渡辺さんのように南相馬に移住する人も増えているそう。農家民宿を始めたり、映像作家をしながら有機野菜でカレーを作って販売したり。
地元の人たちと交流しながらみんなでワイワイとやっているそうです。
震災を経て新しいコミュニティが生まれていることが、
なんだかとても嬉しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

「南相馬は自然が豊かで、古いものを大切にする土地」と語る渡辺さん。
夕暮れの空が見たこともないような綺麗な色で、
蔵や古い建物が夕日に照らされる姿は日本の原風景のような美しさで。
ここに来て良かったと感じるそうです。

 

昔からあるものを大事にする気持ちが、地域にも人にも根付いている。

 

そんな魅力的なこの土地で、渡辺さんはこれからも愛情をかけて馬たちを育てていきたいと語ってくれました。

 

厩舎みちくさのFacebookには元気な馬たちの姿がアップされています。
中には7月の相馬の野馬追に選ばれた馬も!
ぜひチェックしてみて下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

旅の最後は南相馬市の相馬小高神社へ。
野馬追で知られる神社のひとつです。

 

 

 

 

 

 

 

 

いわきから北上しながら浜通りを巡ってきた今回。
地元で採れた美味しいもの食べながら、目の前に広がる綺麗な緑や海を眺め、めいっぱい美味しい空気を吸う。

 

まるで体が生き返るような、そんな気持ちになった旅でした。

 

 

街も人も着実に前に進んでいて、
にぎわいを取り戻してきている姿にほっとして。
これからもどんどん変わっていくであろう福島の浜通りの姿をまた見に来たいと思いました。
「百聞は一見に如かず」。
皆さんも是非、浜通りの魅力を体感しに出かけてみて下さい!