日本の伝統文化に魅せられた外国人|旅人:鈴木美穂

2011-06-18



いやいや二度めまして。
YAJIKITA ON THE ROADの放送作家をやっています
「りんちゃん」こと、鈴木美穂と申します。

 

なぜ放送作家の分際でこの旅日記を書いているのかは
前回の旅日記を見て頂くとしまして
私、初地方ロケ初リポーターとして、古都・京都に行ってまいりました。

そんな京都後半戦、今回の旅のテーマは…

 

日本の伝統文化を京都の外国人の方から学ぼう!

 

ワタシ、ニポンジン デスケド ガイコクノヒトカラ マナブ デスカ?
と、思わずカタコト日本語になってしまいましたですよ。
日本の文化に魅せられ、日本の伝統文化を日本人に教えるまでに至った外国人の方々から、
そういった伝統文化を教えてもらうんだとか。

 

生まれてこの方、日本にしか住んだことがなく
下町で生まれ育ったバリバリ日本人な私。
こいつは黙っちゃいられませんぜ、てやんでぇ!!

 

…というわけで京都ロケ後半戦、行ってきま~す!!

 

 

 

 


今日のスタートは賀茂川から!奥に見えるは三条大橋




 

 

二条城から歩いて5~6分歩いた所にあったそのお店。
一見普通に若い女子が好きそうな可愛らしい和カフェです。


その名も…らん布袋(らんほてい)

 

しかし、よく見ると表の立て看板にはごっつい外国人男性のお写真が…。
??と思って中に入ってみるといらっしゃったのが
お着物をお召しになった、身長は180センチをゆうに超える大きな外国人男性。
なけなしの英語力を使って「Can you speak Japanese?」と聞くと
NO!!の返事…おいこりゃ困ったぞ。
頭をフル回転して次の英単語を検索していると「はっはっは、大丈夫ですよ!」
と、流暢な日本語…。

 

そうです、この陽気な方が茶道の裏千家教授をなさっている
ランディー・チャネル宗榮(そうえい)さんです!

 

ランディーさんは、カナダ出身。
ブルース・リーに憧れてカンフーを習い
日本に来てから「武道」…剣道、弓道、居合道、なぎなたを勉強し
「文武」を究めたいと茶道の道に入られたそうです。

 

なんと、この和カフェもランディーさんのデザイン!
店内の窓からは中庭が見え、そこには、燈篭やつくばいなどがあり
まさに「日本庭園」が作り上げられています。
なんでも茶道の精神に沿って、庭師の方に頼んで作ってもらったとか。

 

そして店内には、至る所に七福神の「布袋さん」が鎮座しています。
実はランディーさん、よく布袋さんに似てると言われるし
縁起もいいので布袋さんを集めるようになったんだそうです。
「らん布袋」という店名も
「ランディー」の頭文字でもありタイ語で「店」の意味もある「らん」に
似ていると言われる七福神の「布袋さん」をくっつけたものなんです。

 

 

 




一見普通のカフェですが…




看板にはランディーさんの姿!






奥にはお座敷スペースもあります




中庭は本格的な日本庭園!







そんなランディーさんに、早速お茶を点てて頂くことになりました。
カフェの2階がお茶室スペースになっているとの事で、階段を上がると…

 

THE 大正浪漫☆

 

和と洋が見事に融合した、大正時代の洋館のような内装。
伺ったところ、アール・ヌーヴォとアール・デコを取り入れているんだとか!
まるで鹿鳴館に通う華族のお嬢様になったような気分です、オホホ。

 

しかし気になるのが、お茶室なのに置いてあるのは「イス」「テーブル」
畳で正座!を想像していたので、少し驚きました。

 

ランディーさんが教えるのは、茶道の中でも「立礼式(りつれいしき)」といって
明治時代に行われた「京都博覧会」にて、外国人の方にも茶道ができるようにと
始まった、イスとテーブルでお茶を楽しむ様式なのです。



 

 




イスとテーブルが用意された茶室




主人はランディーさん!







早速お茶を点てていただきました。
学生の頃、お作法の時間で茶道を習いはしたものの
いざ、お茶室にて本番を迎える日に熱を出して欠席した自分にとって
初めての本格的なお抹茶です。
どうしよう苦くてブーとか吹いたらどうしよう。
なんて思いながら、ランディーさんのお茶を頂くと…

 

うん?やっぱり苦い…けど…あれ…?美味しい!!
飲める、これなら飲めちゃうぞ!!
お…おかわり~~っ!!!

 

お茶碗の回し方や、音を立てて飲む等の作法に沿っていただいたお抹茶は
もちろん苦味はあるものの、とてもクリーミィでまろやか!
頂いたお抹茶、ランディーさんのオリジナルなんだそうです。
この味が完成するまでに3年の時間を要したとか、うん、納得のお味。

 

 

 

 


お茶を点てています




緊張しつつ…いただきます!





 


は~、結構なお手前でございました。
よし、帰ろうかと思ったら…「はい、じゃあやってみようか」とのお声
え、まじすか!?

 

主人の座る席に座り、ひしゃくの持ち方から指導を受けます。
「はい、違う、ブッブー!」
数回繰り返し、やっとお抹茶を茶碗に入れ、いざ、シエイク!!
「ファストファストファストファストォ!!」
ダメだしの嵐の中出来上がったお茶は…
泡はあんまりたってないわ、混ぜてた茶筅はボロボロになるわで見た目はすこぶる悪い。
でも同じ抹茶使ってるんだし味は……ま、まずっ!!例えるなら…草の味がする!!

 

どうにも味が違うんですよ、みなさんマジこれホントに!
首をひねる私に「ちょっと貸しなさい」と、お茶碗を受け取り
そのお茶に茶筅を入れ、シャカシャカと点て直すランディーさん。
「はい、どうぞ」
受け取ったお抹茶の味は…最初に頂いたあのまろやかな味でした。
普段は点て直しなんぞやらないとの事でしたが、違いが分かりやすいように直して下さったんです。

 

うーん、奥が深い!!
そして…お茶の一つもまともに点てられない情けない自分…。

 

 

 

 


ひしゃくの持ち方から難しい…




シェイクシェイクシェイク!!!







ランディーさんは、日本文化は世界の宝物だとおっしゃってました。
ただ、日本人だからと言って、それを必ずやらなきゃいけない訳ではないよ、と。
そして、その魅力は文化に根差す「心」なんだと。

 

改めて、伝統文化に対する「心」を教えられたような気がしました。
ランディーさん、美味しいお茶と日本の心、どうもありがとうございました!!

 

 





ランディーさん、ありがとうございました!







お次に向かった先はスポーツにご利益のあるという「白峯神宮(しらみねじんぐう)

 

 





白峯神宮です




 


その境内を奥に向かって歩いて行くと…

 

パアン!!!

 

厳かな神宮には似合わない迫力のある音が聞こえてきます。
本堂の脇に入ると、そこには小さい道場があり、音はそこからしているようです。

 

パアン!!!ダンッ!!!

 

近づくと、いよいよ迫力満載な音!

そこで行われていたのは、合気道の稽古でした。
しかも教えているのは…これまた外国人の方!!
指導を受けている中にも外国人の方がいらっしゃいます。
ひらりひらりと相手を投げていく、腰の据わった動きは合気道そのものですが
その横顔はスーッと鼻筋が通って、彫りが深く、目の色も宝石みたい。

 

 

 




道場でございます




激しく厳しく練習中!!





 


お稽古が終ったところで、早速お話を伺いました。


 

先生のお名前はジャック・パイエさん。
フランスご出身の、合気道の先生です。

 

現在54歳だというジャックさんは、もう日本に来て30年になるそうです。
ブルース・リーに憧れて(大人気ですね!)武術などはやってはいたけど
ある日合気道の「塩田剛三」さんの映像を見て、衝撃を受け来日。
知り合いもいないし、日本語もできないので、とりあえず東京大学に行って
フランス語を学んでいる人を探して声をかけ、合気道道場に連れて行って貰ったんだそうです。
でも塩田先生に辿り着いた頃には、もう帰らなければならない状態でした。
そんなジャックさんに、塩田先生は「本気でやる気があるか?」と問い
「はい」と答えたジャックさんを内弟子にしてくれ、今に至るそうです。

 

ものすごい行動力ですよね。
ジャックさん、とても物腰の柔らかな方なので
このいきさつを聞いた時、正直ビックリしました。

 

合気道は、相手の力を利用して一体になろうとする武道。
「勝ち」「負け」を問わない幸せになるための武道とおっしゃるジャックさん。
幸せを求めてやまない独身女の私も、幸せを分けてもらおうと習う事に致しました!

 

道着に着替えて準備完了!
よろしくおねがいしまっす!!!

 

まずは基本の型から学びます。
手は剣を持つように構え、全ての動きは腰ごと重心を移動させます。
これ、まるでダンスみたいです!

 

 

 

 


よろしくお願いいたします




剣を持つように、腰を入れて…





 


取材の日は涼しかったのですが、この基本の型を習っただけで汗が!!
体の大幹を使っている感じです。
さあ、型を習ったら、いよいよ技を習います。
まずは、とりあえず先生に投げられる事に…こ、こえええええ。

 

「私の腕を掴んで下さい」とおっしゃるので、グッと掴むと
次の瞬間、バランスが取れなくなって、おっとっとっと!!となっている内に
バタン!と転ばされてしまうんです。
多分、はたから見たら「おい、鈴木、わざとらしく転がってんじゃねーよ」
って感じだと思うんですけど、違うのダメなの!立っていられないですよ!!

 

「またまた~」とかスタッフ陣がニヤニヤ笑うので
全員投げてもらいました。

 

 




転がるりん




転がるサリーD(身長190センチ超)






激しく転がる慶吾カメラマン




よろよろ転がるメルシー久保氏





 

YAJIKITA一行、軽々投げられるの巻。

 

写真を見て頂いて分かるとは思いますが
ジャックさん、決してガタイがいい訳ではありません。
なのに、身長190センチを超えるサリーDや体重○○キロを超える慶吾カメラマン
そして頭脳派で、仕組みとかを分析してしまいそうなメルシー久保氏まで
皆見事に投げられて床にノビていました。

 

あのねえ、「あ、立ってるの無理むりムリ!!!」ってなるんです。
サリーDいわく「あきらめの境地に入る」…うん、まさにその通り。

 

投げられるのを体感した後は、いよいよ投げ方を教わります。
コツは、相手の重心に自分の重心を合わせて、体全体を使って優しく倒す事。
決して掴んだ腕の力で投げようとしない事。
基本の型を利用しての重心移動がキーポイントです。
数回、手を添えてもらって、感覚を覚えてからいざ実践!!

 

大の男を手玉に取ったよ!!

 

でも、ちょっと重心の掛け方がずれると、相手はピクリとも動かない。
うーん、難しいです、奥深い…。
ちなみにYAJIKITA一行の男共も全員投げてみました☆エヘッ☆

 

 

 


投げられてもマイクは守るよ!




投げられてもカメラは死守するよ!





 

 

この30年で武道の精神を習得したというジャックさん。
合気道の精神とは、調和すること。
こちらを倒そうとしている人と調和して、友になるという心が大事とおっしゃっていました。
「柔よく剛を制す」この言葉が最もふさわしい武道なのかもしれません。

 

日本の魅力は「わび・さび・『あいまいさ』がある所」
そして、カタカナのスポーツをやる方々が多いけど
自分の国の、こういった武道にも目を向けてほしいなとおっしゃっていました。
将来的には、「習い事」としての武道ではなく
「仕事」として武道を認めてもらえるように頑張りたい…との事でした。

 

 

 


ハカマには名前入り!




ジャックさん、ありがとうございました!!





 

 

今回「茶道」「合気道」という、
日本のふたつの「道」を進んでいる方々にお会いしました。
しかもお二人ともその「道」の先まで見て、考えを持っています。
日本人として情けないと思う気持ちもあるけど、同時に嬉しかったのも事実で…。

 

こんなに愛してもらうことのできる自分の国、日本の文化、
まだまだ知らなければいけない事、たくさんあるんだなと改めて感じました。
日本人として、こういう姿勢をどんどん学んでいきたいと思います!

 

2週に渡って、私のつたないリポートにお付き合いいただいてありがとうございました。
井門Pの偉大さを思い知った取材でございました…。
ごめんね、いつもひどい事ばっか言って!!

 

そんなこんなで
旅人は「りんちゃん」こと鈴木でした!
ごきげんよう♪