“おひさま”の故郷、安曇野をサイクリング!|旅人:井門宗之
2011-07-29
7月某日、長野県安曇野市。
前日に上高地の自然にたっぷりと触れたヤジキタ一行。
一夜明けて集まった面々の表情はいつもと違い、爽やかこの上ない。
身体の中から“あ~、このロケ楽しいなぁ…”が滲み出ている感じだ。
何よりも顔色が良いのだ。珍しい。前日の夜も意外と早かった。これも珍しい。
“ミラクル氏が辛い物に目が無い”という事も再発見した、そんな夜も明けて…。
今回の旅のスタートは安曇野市【穂高】駅前である。
ここ安曇野は北アルプスの主峰槍ヶ岳を源流とする梓川と高瀬川という二本の川に挟まれた、
扇状地の総称で、まぁ、何と言いましょうか、簡単に言うと、
超気持ち良い場所!!なのであります。
緑も沢山あって、耳を澄ますと川のせせらぎが聞こえて。
我らがミラクル氏も慶吾と共に“安曇野に移住計画”を割と真剣に話している。
実は前回に何がミラクルだったかってのを書き忘れたのだが、
特に質問が来なかったってのは恐らく…
こんな長い旅日記を最後まで読む奴ぁ、少ないって事だね(涙)
この旅日記は放送を聞けなかった方の為のコンテンツなので、
臨場感とちょっとした裏ヤジキタを楽しんでもらえればと思うのだが…。
今回の旅日記はむしろその内容よりも、数々の写真に注目して貰いたいのです。
何故なら、僕らヤジキタスタッフもこの景色の中で思わず「気持ち良い!」と声を上げたのだから。
いつもスタジオで暗く寒い中(端末を冷やす為の空調が効きまくっている)、
はからずもインドアな生活を送っているヤジキタスタッフが自然と声を漏らしたのだ。
これはもう、皆さんにもたっぷりと写真を見て貰いたいのです。
*あっ、ちなみにミラクルな出来事とは、
僕らがロケに来た日に梅雨明けしたという事です。
前日の上高地も天気は良かったのだが、この日の安曇野も“超”が付く快晴。
むしろ陽射しはこの日の方が強かったかもしれません。
本日もハーフパンツの作家が既に陽射しに不安そうな表情を見せている…。
ミラクル「これは、熱中症にならない様にしないとな~。」
慶吾「あれ、ミラクルさんは帽子を持ってきてないんですか?」
ミラクル「うん。」
今年の6月は前年に比べて熱中症で病院に搬送される方の数が圧倒的に増えた。
そんな報道もあったからか、たいていの人は暑い場所に行く時はある程度の用心をする。
かく言う井門もしっかりと帽子を被り、今日のサイクリングへの意気込みは万全だ。
ところがそんな事など意に介さずなのが、ミラクル氏。さすが梅雨明けさせただけはある。
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穂高駅前でオープニングの意気込みを収録した我々は、
安曇野をどう回るかの相談をしに穂高駅前にある『安曇野市観光協会』へと向かった。
アドバイスをくれたのは、協会の内川幸子さん。
日曜日の午前中にも関わらず、観光客の方々で受け付けは賑やかになっている。
安曇野がこれだけ人気な理由は、朝の連続テレビ小説の舞台だからなのだが、
そんな訳で安曇野の至る所には井上真央ちゃんのポスターも貼ってあるのです。
*真央ちゃんの画像でも貼り付けたい所だが、絶対に無理なのであしからず。
やっぱり“おひさま効果”はあるのでしょうか?
内川「そうですね、お客さんの数はぐっと増えましたよ。
うちでもサイクリングマップがあるのでどうぞお持ち下さい!」
“おひさま効果”は勿論なのだが、実は安曇野はJR東日本のCMロケ地にもなっているのだ。
そしてそこで吉永さんが楽しんでいるのが、サイクリング。
穂高駅前にもレンタサイクルのお店が何軒か軒を連ねている。
我々は【しなの庵】さんで自転車を借りて、いざ出発~!!…なのだが、
しなの庵「あっ、お客さん!麦わら帽、貸してあげましょうか?」
ミラクル「え、あ、じゃ・じゃあ、お願いします…。」
井門・佐々木・慶吾「(あ…、お願いしちゃった…)」
麦わら帽にハーフパンツ、これで怪しげな41歳の出来上がりであります。
ヤジキタ一行、4人が同じ自転車に乗って、いよいよ出発~!!
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穂高駅前をスタートした一行だが、既に肌に感じる風の気持ち良さが半端ではない。
久しぶりに漕ぐ自転車のペダル、夏の陽射し、景色の気持ち良さ。
最初の目的地に着いてもいないのに、皆が笑顔になっている。
ひと漕ぎ、ひと漕ぎする度に、何か憑き物が落ちていくような錯覚すら覚える。
あぁ、風が身体から負の鎧を剥ぎ取っていってくれているのかもしれない。
徐々に心が潤っていく様な気すらしてくる。
駅前から数分、ふっと心が和やかになった所で最初の目的地に到着した。
「碌山美術館」
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ここは安曇野出身の彫刻家・荻原碌山の作品等を収蔵した美術館であります。
僕はですね、この碌山美術館で初めて荻原碌山とう人の事を知ったのですが、何とも興味深い。
碌山という人は30歳でその短い生涯を終えるのですが、
その人生の密度の何と濃いことか…。
そもそもこの美術館は昭和33年4月、29万9100余人の有志の力によって誕生しました。
美術館の中には碌山の作品は勿論ですが、彼と関係の深かった芸術家達の作品も多数あります。
ここで我々を案内して下さったのは、学芸員補佐の濱田卓二さん。27歳のイケメンである。
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濱田「碌山を語る時に、ある一人の女性の存在は外せません。
彼はその女性に出会い、恋をし、生涯その叶わぬ恋に心を燃やしていたんです。」
叶わぬ恋に心を燃やす芸術家…何だか良い響きじゃないですか。
敷地内で一番目立つ建物・碌山館に入るといきなり、
「LOVE IS ART, STRUGGLE IS BEAUTY.」
(愛は芸術であり、“もがき”は美である。)
という文字が彫られた壁がお出迎えです。
碌山の言葉なのですが、なんでしょう…格好良いぢゃねーか(笑)
碌山美術館の中はいくつかの館に分かれていて、常設・企画様々なのですが、
ちょうど我々が訪れた時の企画展示が『近代日本彫刻の究極-荻原守衛の絶作《女》の全貌』展。
まさに碌山の叶わぬ恋の相手・相馬黒光をモチーフにした彫刻の企画展だったのです。
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濱田「碌山は若い頃にひょんな事から相馬黒光と出会い、淡い恋心を抱きます。
才気溢れる女性だった黒光に芸術面でも強く影響を受けた碌山は、洋画家になるべく渡米。
その後ヨーロッパに渡り、ロダンの作品に衝撃を受け彫刻の道に進んでいくのです。」
井門「ちょっと待って下さい、碌山は30歳で亡くなるんですよね?
人生の歩みが、濃過ぎる…。」
碌山の年表を見ていると、彼の興味のベクトルがどんどん向きを変えていくのが分かる。
そして“これ!”と決めた方向へはとにかく突き進んでいくのだ。
濱田「黒光への恋心もそうだったのでしょう。しかし所詮は叶わぬ恋。
碌山はその想いを絶作の<女>という彫刻に込めるんです。」
国の重要文化財に指定されている<女>。
両手は後ろでしっかりと結ばれながら、跪いた女性は、なおも天に向かって顔を上げている。
何かに縛られながらも自由を求める気丈な姿。
叶わぬ恋心はこうして永遠に形となって残ることとなった。
芸術家って、凄い。喜びも苦悩も形にしてしまう勇気があるのだから。
激しい人生を歩んだ碌山の作品は、どれも力強くて。
いきなり最初の取材地なのに、僕は何時間でもいたいという気分になったのであります(笑)
井門「そうそう、何で濱田さんはここで働こうと思ったですか?」
濱田「もともと県外の人間なんですけど、安曇野が好きで。
そしたらこの美術館の募集に運よく合格する事が出来たんです。」
井門「美術はもともとやられていたのですのん?」
濱田「今でも彫刻を作っているんですよ。」
かっこいー!(笑)
好きな場所に移り住んで、好きな事をしながら過ごす。
完全に羨ましい話なのだけど、“その道を選ぶ”って凄く大変な事なんだよね。
井門「安曇野は最高ですか?」
濱田「最高ですね!!」
濱田さん、楽しい時間を有難うございました!
安曇野を最高だと自信を持って言える方に、一番最初に出会えて良かった。
碌山美術館を後にした我々は再びサイクリング開始!!
| サイクリングする井門 |
右手にわさび田、左手には美しい穂高川。
空はどこまでも美しく、遠くには緑濃い山々が聳えている。
ここで誰ともなく、思わず…
「あぁ、気持ち良いなぁ…。」
という声が漏れたのは、いた仕方無し。
そんな声を洩らしながらもDの佐々木君は良い音を録ろうと、
長い棒をマイクに付けて一生懸命激走している。慶吾はしっかりと風景をカメラに押さえている。
ただ一人、ミラクル氏だけはカブトムシを売りつける怪しいおじさんの如く、
のんびりと自転車をこいで走っている。
ミラクル「ほら、井門。早春賦の碑があるから、寄っていこう。」
“早春賦”とは、安曇野の遅い春を待ちわびる心を歌った名曲であります。
昭和59年にこの穂高川沿いに歌碑が出来たのですが、
歌碑の横にソーラー電池式のオルゴールが設置されているので、
いつでもあのメロディを聞く事が出来るのです。もちろん僕らもスイッチを押して耳を傾けました。
一同「なんか、良いよねぇ…。」
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すっかりこの景色と早春賦のメロディで癒された我々。
もうこの段階で各々の顔から毒気が相当抜けている。
いい歳したおっさん4人が、自転車を漕ぎながらキャッキャ言っている。
ミラクル「は~い、次はわさび農場に行くよ~!」
一同「はーい!!」
*返事も良い…。
安曇野で最も有名なスポットと言えばここではないだろうか?
「大王わさび農場」
なんとびっくり、驚くなかれ!ここのわさび田の広さは…
東京ドーム11個分!!
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この日も県内外から沢山の方々が訪れていたのだが、
ここでお話しを伺ったのは山越敬志さん。
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井門「わさびってどれぐらいで収穫するんですか?」
山越「だいたい2年ですね。旬というよりは、2年経った物から収穫していくんです。」
ここで収穫された新鮮なわさびはサイズも様々で、入口の売店で販売している。
しかもここにはわさびに関するオリジナルな商品も多数展開!
我々も休憩時間中に“わさびジュース”なる飲み物を飲んだのだが、
これがレモネードにすりおろしたワサビを入れた非常にさっぱりした飲み物。
他にも“わさびコロッケバーガー”や定番の“わさびソフトクリーム”など、
お土産コーナーも充実しているので、全く飽きさせない趣向となっている。
| わさびソフト |
井門「それにしても何故に“大王”なんでしょう?」
山越「安曇野には“八面大王”という民話がありまして、
その八面大王の胴体を祀ったのがこの地という事で、
ここで収穫出来るワサビを“大王わさび”と呼ぶようになったんです。」
ワサビを栽培するには綺麗な水が必要不可欠。
この農場には非常に綺麗な湧水が常に湧いているので、ここまで見事なワサビが栽培出来るのだ。
僕らヤジキタ一行は入口ですりたてのワサビを戴いたのだが、
辛味よりも甘味が強く、新鮮なワサビの味に驚いたものであります。
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大王わさび農場の取材を終えて山越さんと雑談していた時のこと。
遠くの空から雷の音が聞こえてきたではありませんか。
山越「あ、こりゃ30分くらいでザザザーっときますね。」
一行「!!!!!!!!!!!」
自転車を借りた時の天気はドピーカン。
一応それぞれ雨具は東京から持ってきているのだが、
まさかサイクリング中に雨が降るとは思えない天気だったので、全員雨具は車の中である。
そしてわさび農場から車のある場所まで、自転車で頑張って30分くらい。
佐々木君はこのロケの直前に数万もするマイクを購入し、このロケで初使用している。
慶吾のカメラも濡れたらアウトである。
井門「退け!退くのじゃー!!」
一同「おぉ~!!!」
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途中で道祖神などを軽く見学しながら、こうして何とか車へと濡れずに戻った一行。
*ちなみに道祖神の数は安曇野が市町村単位では日本一だそうです!
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息は切らしているのだが、何だか無邪気な子供に戻ったかの様な表情をしている。
ミラクル氏「最後は自然を眺めながらドライブして、ワイナリーに行こう!」
自転車のゆったりとした速度も良かったけど、
車の車窓から眺める北アルプスのパノラマもまた雰囲気があって良い。
移動速度を変える度に、この街は多彩な表情を見せてくれる。
そして到着したのが「安曇野ワイナリー」
地元で育ったぶどうから世界に出せるワインを製造販売するワイナリーだ。
HPには【一滴の想い】としてこんな言葉が書かれてある。
『安曇野は信州のちょうどなかほど、西に北アルプスを望む広い田園地帯です。
すべての自然が目を覚ます彩り溢れる春、澄んだ青空に爽やかな風が吹き渡る夏、
錦色に紅葉が山を染め上げる秋、綿帽子のように真っ白い雪がすべてを包み込む冬。
こんな四季の営みの中で、ここの風土が一滴一滴に醸されていくような、
信州安曇野の味わいと香りに満ちたワインを大切に育んでまいります。』
我々がお話しを伺ったのは、管理部企画広報係長:石田芳江さん。
石田さんも県外の方だったそうだ。
しかしこのワイナリーで作られたワインを一杯飲んで、ここで働こうと決意したそうである。
人の人生を動かすワインって、どんな味がするのだろう?
石田「今年のワインの出来が…もう本当に素晴らしいんです!
世界に通用するワインが出来たと思っています!」
石田さん、本当にここのワインが好きで、この土地が好きなんだろうなぁ。
僕らにぶどう園やワイン工場を見せてくれながら、色んな話を教えてくださったのだが、
その表情が凄く良いんです。安曇野ワイナリーを心から愛している。
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そしてお待ちかねのテイスティング!
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ここのワインはどれも美しい。
それは味も見た目もそうなのだが、何より携わる人の心が美しいのだ。
安曇野ワイナリーはまだ若いワイナリーだけど、
必ずこれから注目される場所になるのは間違いありません!
なんてったってここのワインは最高に旨い!!
石田さん、有難うございました!!
*ちなみにスタッフ全員、お土産にワインを購入していきましたとさ。
こちらで作っているヨーグルトもめちゃ旨だったですよー!!
今回は安曇野を満喫した旅だったが、こんなに自然と笑顔になる旅も久しぶりだった。
心が潤う、という言葉がぴったりだったように思う。
そう思いながら、あの旅を思い出し安曇野のサイクリングマップを見ているのだが、
そこにはこんな言葉が書かれてあった。
心が渇いたらまた来よう、安曇野へ。
間違いなくまた来よう!
笑顔になりに、旨い空気と気持ちの良い人達に会うために。また、来よう。