東北応援スペシャル! 南会津に残る原風景・大内宿|旅人:井門宗之

2011-08-13



四方を緑に囲まれた山中であります。
深呼吸の結果、井門の都会毒素が80%減るくらいの山の中。それが今回のオープニング。
このまま森の一部になって、色んな事をうっちゃりたい…そんな想いにかられる程、山の中なのです。
行き交う車の量も少なく、どこまでもBGMは蝉と鳥の鳴き声。
すぐ横では味のある線路を1両編成の電車がのんびりと走っていく…。
このままスタッフの目を盗んで“えいや!”と森の中に逃げ込んだら見つからないのではなかろうか。 


自分の名前が【井門大自然】になるのを必死で堪えつつ、今回のロケは始まりました。

 

 

ここは会津若松の市街から車で1時間ぐらい走った場所。
いくつもの山を越えて(その表現ぴったり)、到着したのは南会津郡下郷町。
会津から日光の方へ抜ける「会津西街道」という道の途中にある小さな町です。 


最近すっかり「山の中ロケ」が定番になりつつある井門P。
このままいくと、リタイヤした後に「ロッヂいもん」とか経営しそうだ。
いや、「ロッヂいもん」ぢゃありきたりか。
「いもん山荘」あたりで落ち着いておこうか。
都会から来た若者達の精神の疲労をいやす、隠れ家的山荘。
そこで饗される料理は、全て地元の食材を使ったスローフード。
名物山菜の天麩羅は、オーナー(いもん)が自ら摘んだ新鮮なもの。
元ラジオDJだったという異色の経歴を持つオーナー(いもん)はとても聞き上手。
そんなオーナーの器に触れ、リピーターになる若者が今日も後を絶たない…。
……………只今妄想中……………只今妄想中……………只今妄想中……………
はいっ、妄想やめ!
それはさておき、今回のスタートが会津鉄道「湯野上温泉駅」。

 

こちらの駅はなんと日本で唯一の茅葺屋根の駅なんです!

 

 

 

 

 







待合室には囲炉裏も!






駅の入口にでっかい起き上がり小法師を発見!




1輌だけのローカルな列車が
湯野上温泉駅を出発!






 

 

 

 

駅前にはいくつかお店や家があるのだが、明らかに茅葺の駅舎は異彩を放っている。
しかも物凄く田舎なのに(失礼)駅前と駅舎の中には、観光客らしき人達が結構な数で電車を待っている。
こちらの駅舎は待合室が畳敷きで囲炉裏もあって、
非常にこじんまりとしているんだけど、どこかアットホームな雰囲気。
お土産屋さんも、“お店”って感じよりは“民家の一角でやってます”的な風情。
漫画や小説が並ぶ本棚も良いじゃないですか。
実はこの湯野上温泉駅がある下郷町。
何と観光客数がここ数年、 


年間100万人を超える程の賑わいをみせているのだ。
何度か取材に来たメルシーさん曰く“休みの日のこの辺りの渋滞は東京並”だとか…。
現在は風評被害の影響もあり観光客の数もまばらなのだが、その観光客が目指す場所が、

 

 

大内宿!!なのであります。

 

 

大内宿は“重要伝統的建造物群保存地区”に指定され、江戸時代以前から栄えている場所。
人々が心の故郷として惹き付けられる【大内宿】には一体何があるのか!?
東京の毒素でボロボロになったYAJIKITA一行は、大内宿でしっかり癒されるのか!?
オッサン4人の珍道中の始まり始まり~。

 

 

メルシー「大内宿は入口に沢山の駐車場があってね。
紅葉の時期は大内宿から一番離れた駐車場まで満車状態だったんだ。」
井門「今日はどうでしょうね? 日曜日ですし…。」
メルシー「行って見れば分かるさ。」

 

 

湯野上温泉駅から車を走らせることすぐ。距離にして6km弱のところに大内宿はあります。
確かにメルシーさんの言う通り、沢山の駐車場がありますが…どれも空き地の様にガラガラ。
風評被害が及ぼす影響の大きさを、こんな所でも見せつけられました。

 

 

 

 

 









今回この大内宿の御案内をお願いしたのは、大内宿観光協会会長の佐藤和衛さん。 


大内宿に残る茅葺家屋の中でも最も歴史のある本家【玉屋】の20代当主。
玉屋は現在お食事処でもあり、取材した日も多くのお客さんで賑わっていました。

 

 

 

 

 

 









 

 




佐藤「大内宿はかつて江戸時代、参勤交代の途中の宿場町として栄えました。
沢山の藩の大名がここを宿場としたんです。」
井門「ほほぅ。佐藤さんのお家も数百年の歴史があるんですよね?」
佐藤「はい、この大内宿には以仁王の伝説がありましてね…。」
井門「ほほぅ、伝説とな??」

 

 

平家討伐に失敗した高倉宮以仁王は、難を逃れここ大内宿に逗留したという伝説があります。
実際に大内宿には以仁王を祀る【高倉神社】があるくらい。

 

 

 

 

 

 


大内宿の真ん中辺りにある高倉神社の一の鳥居




高倉神社まではまっすぐなあぜ道が





 

 

 

 




そしてこちらの玉屋さんで御履き物をお脱ぎになって、休まれたという伝承も残っているそうな。
確かに美しい自然と、この茅葺屋根の建物が並ぶ風景は、
戦で敗れた心も癒してくれそうな雰囲気はあります。
だって、ほら、ヤジキタ一行もすっかり毒気の抜けた顔しているんだもの。
でも茅葺の家って凄いですね!?
取材の日、外は30℃を越える暑さだったにも関わらず、家の中は風が抜けて涼しいんです。
もちろんエアコンなんかは使ってませんよ。天然の涼しさがここにはあるんです。
玉屋の座敷は相当な広さがあって、鴨居の上には大きな神棚。
2階は玉屋の歴史資料室になっている。

 

 

 

 

 

 

 


玉屋の2階の歴史資料室で…




ビクターの蓄音機を発見!
なので犬になってみた!






 

 

 

この涼しさと、日本家屋ならではの懐かしさに思わず大の字で寝たくなってしまう。

 

 

佐藤「急に知り合いが訪ねてきたら、泊める事もあるんですよ。
宿屋では無いので、事前に言われても断っちゃうけどね(笑)
あ、あとで僕が朝打った蕎麦を食べてって下さい! 10年前くらいから打ってるんです。」

 

 

話は前後しますが、取材を終えて昼食で戴いた佐藤さんの手打ち蕎麦…旨かった!
蕎麦の香りがたまらんのですよ。しかも山菜の天麩羅まで戴いて。

 

やばい、この原稿を書きながら思い出してお腹空いてきた…。皆さんには雰囲気だけでも(怒らないでね)

 

 

 

 

 


お昼に戴いたお蕎麦




お昼に戴いた天麩羅





 




さてさて、佐藤さんと井門Pは大内宿の入り口から、ずずいと歩いてみることにしました。
聞けばこちらに残る茅葺家屋はおよそ40軒。
見事な茅葺屋根の家が、道の両側にずらりと並んで圧巻です。
それぞれのお家が蕎麦屋さんだったり、お土産屋さんだったりを営んでいて、
店の軒先ではおばあちゃんの店番が笑顔で観光客とやりとりなんかをしている。
真ん中の道はかなり広くて、車2台が通れそうなほどです。
そしてその道と家を隔てる様に、綺麗な小川が両側を流れているんです。
この水が物凄く冷たい! 聞けば年間を通して一定の温度の水が流れているのだとか。
外気温が30℃以上でも、水の冷たさはずっと手をつけていられない程!
子供達はここで汲んだ水で水鉄砲をして遊んだり、
大人達はビールやキュウリをこの水で冷やして楽しんだり、
このせせらぎを聴いているだけでも心が落ち着くのは何故だろう。

 

 

 

 

 









 

 

 






ぶらぶら歩いていると、美味しそうな匂いで僕らを誘うのは【味処 みなとや】さん。
こちらでは女将の佐藤素子さんが素敵な笑顔でお出迎えしてくれました。
そもそも大内宿の方々は笑顔が本当に気持ち良い。
これもここの空気、風景、人の3拍子揃った環境が育んでいるんだろうなぁ。
佐藤さんの笑顔も魅力的なんですけど、さっきから旨そうな匂いを漂わせているのが…、

 

 

会津名物:しんごろう!!

 

 

 

 

 












 





一見すると物凄いボリュームのある“つくね”なんだけど、そうじゃない。
しかも名前は“しんごろう”。“だいごろう”ではない。“俺とお前の~♪”ではない。
佐藤さん、この“しんごろう”って一体どんな食べ物なんですか?

 

 

佐藤「これは会津の郷土料理なんです。
うるち米を粗くついて、竹串に刺して“じゅうねん味噌”を塗ってから炭火で焼くんです。」
井門「はぁ…じゅうねん味噌…。」
佐藤「“じゅうねん”は“エゴマ”の事です(笑)
味噌をエゴマや砂糖やみりんなんかと練り合わせたものなんですよ~。」

 

 

そういう佐藤さんの手元には美味しそうな“しんごろう”。
折角だから一つ貰うと、おもむろに炭火で炙り直してくださる。
するってぇと、辺りには味噌の焼ける香ばしい匂いが漂うではないですか!?
焼き上がって味噌の焦げ目が付いた所を、ひとくち…パクッ。

 

 

井門「おぉ! 旨い!ナイスしんごろう!」

 

 

 

 

 





佐藤素子さん、ご馳走様でした!





 

 


味噌と半つきのうるち米。物凄くシンプルだからこそ、旨さがダイレクトに伝わる。
しかもですね、米を半つきにしてあるので、 


適度な粘りの他に適度に“おにぎり喰ってる感”もあるんです。
味噌も香ばしくて、甘じょっぱい部分がたまりません。
その甘じょっぱい所と、うるち米の所を一緒に頬張ると…やっぱり旨い!!
しかしなんでまた“しんごろう”なんでしょうか??

 

 

佐藤「昔々、しんごろうさんという人がいてね。貧しくてお正月にお餅を食べられなかったの。
そこでお米を半つきにして、じゅうねん味噌を塗って焼いたら美味しかった。
それが御供え料理としても広がっていったというわけなんですよ。」

 

 

なるほど、しんごろうさんのアイデア一本勝負の料理がこの“しんごろう”なのだ。
優しい佐藤さんは、なんとスタッフ全員の分のしんごろうを焼いてくれた。
しかも【口の中が甘じょっぱくなったなぁ…】と思っていたら、冷たいお茶まで出してくれて…。
ここでも大内宿の方の優しさに触れて、お腹も心も満たされたのでした。

 

時間が昼に近くなるにつれ、観光客の数もぐぐっと増えてきました。
あちらこちらから楽しそうな人の声が聞こえてきます。
ふと見ると、立派な鉄製の火の見櫓が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


佐藤「この建物群を守るために一番大事なのは火の用心なんです。
大内宿では放水栓がそれぞれの家の前にあって、年に1度大規模火災訓練も行われるんですよ。」

 

 

戊辰戦争の際にも焼き打ちを免れた大内宿。
先祖が守ったこの地を、今を受け継ぐ人間が火で失くす訳にはいかない。
歴史、文化、伝統を守る事は並大抵の事ではないのです。
ちなみに、この素晴らしい大内宿に引っ越してきたいと思ったらどうすれば良いんですか?

 

 

佐藤「今は先祖から受け継いだこの地を、残った我々で守らなければなりません。
その為には目を行き届かせる事も非常に大切なんです。
ここで暮らしたいと言って戴けるのは嬉しいのですが、
新しい人の受け入れは原則的に行っていないんです。」

 

 

 











 

 

 

大内宿をまっすぐ進んでいくと、小高い山に突き当たる。
横には長い石段が続いていて、その先にこの地を見守るかの様な【子安観音】がある。

 

 

 

 







急な階段の上にある子安観音





 

 

 

 

 

もちろん安産祈願の観音様なので、妻が妊娠9カ月を迎えた井門P本気だ。
長い石段を風の様に疾走し、子安観音の前でながーーーーーーーーいお参り。

 

 

佐藤「僕は子安観音のお陰で、子供3人、孫は8人います。
はっはっはっはっは~っ!!!!(笑)」

 

おぉ…めちゃめちゃ御利益あるぢゃない。
しっかりお参りして、さて下山…とはならず、実はここからの大内宿の景色が素晴らしいんです。
子安観音堂の横を通り、少し細い道から大内宿を見下ろすと…

 

 

 

 

 

 







せっかくなので佐藤さんと一緒に!





 

 

 

佐藤「秋になると真っ赤に燃える紅葉と大内宿のコントラストが美しいですし、
冬になると茅葺屋根の上に雪がかぶさり、一面の銀世界は幻想的で素晴らしいですよ。
あぁ、冬の大内宿は空気が澄んでいて星も物凄く綺麗です!」 


井門「佐藤さん…どれも…今の季節ぢゃねぇ…。」
佐藤「あっ、そうでしたね(笑)」
井門「それはそうと佐藤さん、何かこの土地ならではの郷土料理が食べたいんですけど…。」
佐藤「はい、名物女将のいる店にお連れします!」

 

 

我々は再び大内宿の中を進み、その名物女将のいる所へ向かった。

 

歩いていると出て来たのは【本家扇屋】の看板。しかも女将の写真付き(笑)

 

 

 

 









 





この笑顔の愛くるしい女将こそ、民宿扇屋の女将:浅沼貴恵子さんなのだ!

初対面なのに満面の笑顔で迎えてくれて、しかも心尽くしの会津料理を振舞ってくださった。

 

 













 

 







女将に作って貰ったのは、会津の郷土料理「こづゆ」。
10種類程の具材を小さく刻んで、日本酒と醤油で味付けした出汁で煮込む。
物凄くシンプルなだけに、各家庭によって味の差が出易い郷土料理なのだ。
女将との丁丁発止のやり取りが果てしなく楽しい。

 

 

浅沼「私はね、一回ここに来てくれたら親戚だと思ってるんですよ。
お客さんもそんな風に見てくれるんですかね~。
恋人を連れてきて、私に品定めさせるの(笑)結婚式にも呼ばれたりね。」
井門「みんな女将と話をしにくるんですよね?」
浅沼「昨夜はね、お客さんを連れて神社の方にホタルを見に行ったの!」

 

 

東京で暮らしていると、隣近所との付き合い方も希薄になってしまう。
ひょっとしたら他人との関係を“わずらわしい”と感じてしまう人も多いかもしれない。
でも女将は違う。人懐っこいその笑顔で、いきなり人の心を鷲掴みにしてしまう。
そして都会から来た旅人は、いままで誰にも話した事の無かった悩みを女将に打ち明けてしまう。
僕がお話を伺っていたのは民宿の大広間だったのだが、
どこか懐かしい日本家屋の佇まいと女将の懐の広さにいつの間にか時間が過ぎてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




浅沼「はい、出来たよ~! たくさん食べてね!」
井門「うまそ~!!」

 

 

出てきたのは、会津の郷土料理「こづゆ」。
煮込まれた具材から美味しそうな匂いが立って、僕も佐藤さんもお椀をかっこんだ(笑)

 

 

 

 

 


早く食べた~~~いっ!










 

笑の絶えないインタビュー中、後ろに宿泊客の方が御一人、こちらを見ていた。
どこから来たんですか? と聞くと、わざわざ山口からいらっしゃったと言う。
女将がTVで風評被害について涙ながらに訴えているのを見て、
いても立ってもいられず山口から扇屋に遊びにきたそうだ。

 

 

浅沼「とにかく一人でも多くの方に来て欲しいです。
美味しい空気、美味しい料理、美味しいお酒。そして私が待ってますから(笑)」

 

すっかり御言葉に甘えて、美味しい地酒まで御馳走になった井門P。
インタビューにも関わらず完全にほろ酔いなのであります。

 

 

 

 

 

 







取材中にほろ酔い気分…






浅沼さん、佐藤さん、ありがとうございました!





 

 

 

観光協会会長の佐藤さんにも随分お世話になった、大内宿の旅。
かつては多くの旅人達が行き交った大内宿。
いまは多くの観光客が、“ここを目指して”訪れます。
しかしやはり風評被害の影響で、訪れる観光客の数は激減。
観光地が元気になるには、みんなでこの場所に来るしかありません。
そして自分の目で見た風景を、地元に帰って周りに伝える。
その小さな輪がいつしか大きな輪となり、
大内宿やそのほかの被災地の観光地にも、いつか笑顔が戻るきっかけになるんです。

 

最初の一歩は小さいものです。
でも踏み出さないと一歩にはならない。
ヤジキタを聴いてくださった皆さんが、どうかその一歩を踏み出してくれますように。