全国屈指の獅子舞県?~富山に伝わる獅子舞文化とは~|旅人:中田美香

2012-05-02

3回シリーズでお届けしてまいりました、早春の“TOYAMA TRIP”も、
今回がファイナル・・・。
なんだかあっという間だったなぁ・・・。
そんでもって、早くも次の旅に出かけたくなっているワタクシもいたりして・・・。

 

知っているハズと思い込んでいる土地も、実際に自分の足で旅をすると沢山の発見がある。トーゼンのコトながら。
それこそが、旅の醍醐味だ。
今回のTOYAMAもまた、新しい出会い&発見&オドロキ&エトセトラ・・・エトセトラ・・・の連続。
旅の魅力を存分に堪能させて頂きましたぜぃ。YEAH!

 

まずは、二日酔いならぬ三日酔いのアタマを、モーニングのコーヒーでシャキッとさせて、富山市内のホテルから車にin! 射水へと向かった。
(ちなみに、TOYAMAで頂いたコーヒーは、どれも絶品。コレって、お水の美味しさも影響してるわよねぇ。お酒もコーヒーもお米も、ウォーターが肝であります。しみじみツウカン。)

 

今回の旅のタイトルは「全国屈指の獅子舞県~富山に伝わる獅子舞文化~」。

 

なんでも、富山県は県内全域に1200余りもの獅子舞が伝承される全国屈指の獅子舞県らしい。
しかも、射水市は富山県の中でも一番多く獅子舞文化が継承されているらしいよ。
私たち日本人にとって身近な民俗芸能でもある獅子舞は、TOYAMAで盛んらしいんだよね。
そこで今回は、意外と知られていない「富山の獅子舞文化」の真相を探った。

 

っと、その前に、われわれ一行はまず新湊にある「道の駅」にて腹ごしらえぇぇぇ。
え?モーニングを喰らったばかりでしょって?
コレは、別バラ別バラ(爆)。

 

ホタルイカと同様に、春に旬を迎える富山の味覚の代表格、白エビ。
富山湾の白い宝石と称され、世界でも富山でしか漁が行われない珍種のエビだ。
水深300~600mの富山湾特有の海底に生息し、甘えびを凌ぐ上品な甘さが特徴! ん~、タマラナイ。

 

「道の駅 新湊」には、2010年「全国ご当地丼選手権」で1位に輝いた名物「白エビかき揚丼」がアル。これを食べておかないとっ! 

 

 



「道の駅 新湊」の宮脇恵美子さん

 

 

「道の駅 新湊」レストランホールの広報チーフ、宮脇恵美子さんにご案内頂く。
やはり、話題のこの「白エビかき揚丼」。全国各地から観光客がわんさか詰め掛け、リピーターも多いとか。
早速注文してみたヨ!!!!

 

じゃーーーーんっ!

 

 


ボリューム満点の「白エビかき揚げ丼」

 

 

「おっと!白エビのかき揚げがはみ出とるでー」ってくらい。
これまたスゴい!
まさに溢れんばかりに白エビがどっしりとのって、何ともゼイタク。
一口頬張ると、衣のサクサク感がサイコー!

 

まずは、そのままで堪能。
次に付属の甘辛いタレを入れて食べてみた。
これまた、白エビのダシが効いて、ゼツミョーですぅ!
幸福感に浸れる白エビ三昧の丼。お値段730円なり。
TOKYOではとてもとてもありつけない逸品。まさに、インポッシブルな体験でした!

 

お腹も満たされたところで、ようやく取材開始(おそっ)。
取材させていただいた4月7日、ちょうど射水の神楽岡神社で、春季例祭が行われ、獅子舞が披露された。

 

まずは、射水市教育委員会学芸員の松山充宏さんに、獅子舞の歴史や射水の獅子舞の特徴などを解説して頂く。

 

 

 


射水市教育委員会学芸員の松山充宏さん

 

 

 

春になると、雪解けを待ちかねたかのように、富山県のアチコチの町では、笛の音が聞こえ、獅子が賑やかに家々を廻るという。
松山さんいわく、「獅子舞は富山県内のおよそ1200カ所で伝承されていて、中でも射水の獅子舞は157カ所で行われている」そうだ。
これは県内で最多となる。フムフム。

 

でも、ナゼ?
どのように、射水に獅子舞が伝わった?
「奈良時代に伝来、江戸後期に民衆の娯楽として広まったという獅子舞。
富山県では、豊作を祈願して春祭りで獅子舞を舞う。港町である射水には、大坂から北前舟で獅子舞が伝わった」そうだ。
雪深い富山は特に春の訪れを喜ぶ土地柄。そうして、獅子舞が普及していくというワケ。

 

新しい季節がやってくる時のよろこびは、ひとしおなのだろうなぁ。力強く賑やか獅子が舞う姿を想像し、ココロが熱くなる。

 

富山県内に見られる獅子舞の形態は様々だ。
「新潟および岐阜方面から入ってきている獅子舞。能登又は、金沢方面へ伝えられている獅子舞など、実に多彩。それぞれの地域の良い部分を取り入れてきた」そうだ。
なるほどー。その結果、それぞれの地域・地区ならではの特徴溢れる、魅力的で個性的な獅子舞になったワケねぇ。

 

では、射水地区ならではの獅子舞とは、Donna?
「射水では、百足獅子と言われ、何人も入る獅子舞が特徴。朝から晩まで、その地区を巡るこの獅子舞は、まさに射水のアイデンティティとなっている」。
そのため、射水を離れ、県外に暮らしている方でも、この春季例祭の際には、ふるさとに戻り、獅子舞にふれるのだとか。

 

祭り文化の継承や保存は、いま日本全国でいろいろと問題になっているけど、ココ富山の獅子舞に関しては、その心配はないのだろうか・・・。
フト、そんな疑問がアタマをよぎった。

 

 

 


この日、日本海特有の雪が降ったりやんだりの天気(2012・4・8)

 

 

 

そーこーしているうちに、神楽岡神の境内では獅子舞の準備が着々と進められ、お囃子が聞こえてきた。

 

良い!良いです!お囃子や和楽器の音色に触れ、無条件にカラダがウキ立つ。
不思議だ。きっと、無意識にも日本人としてのDNAのようなモノが、この音色、空気感に刺激されるのだろう。
心地良さに酔いしれていると、ほどなくして、赤井青年団により獅子舞が始まった。

 

ゾクゾクソワソワしながら、赤井地区青年団長の中道研一さんにレクチャーを受けた。
ワタクシ、獅子舞初体験でございます。 

 

 



今年の赤井地区青年団長の中道研一さん

 

 

松山さんのお話にもあったが、射水地区の獅子舞は「親子獅子舞」という全国的にも珍しい獅子舞なのだそうだ。
親獅子から子獅子が生まれ出る神聖なる場面が織り込まれており、安産や子孫繁栄の願が込められている。

 

演目は、「四つ」とか「五つ」とか「ささら」「子獅子出し」などがあり、15の所作と舞が存在する。 

 

 




 

 

中道団長は、私にレクチャーをして下さる傍ら、団長として指示を出される。
フト、境内の周りを見渡すと、住民が大勢集まり、かけ声をかけながら、笑顔で勇壮な獅子たちを見守っている。
まさに、地域に生活する人々の人生や喜怒哀楽が、この獅子舞に集結しているのかもしれないと感じる。

 

 

 

 

 

射水市の無形民俗文化財に指定されている赤井地区の獅子舞は、特に、親獅子から子獅子が生まれる出産シーンが見ものだそうだ。
母獅子から子どもの獅子が生まれる場面。
固唾を呑んで、獅子をじっくりと観察した。
まだ雪が残り、パリっと堅い空気の中、張りつめた緊張感が漂う。
眺めていると、神秘な力をもった霊獣から、子獅子が生まれた。それは、何とも不思議な体験だった。

 

 

 

 

 

 

10代~20代の若き青年団による赤井親子獅子舞。
彼らが舞うそばで、幼い男の子がおもちゃ用の獅子のお面を持って、舞を真似る姿もあった。
この子供にとって、獅子を舞うお兄さんたちは、ある意味ヒーローであり、憧れの存在なのだろう。

 

 

 

 

 

 

獅子舞が終わると、一升瓶を抱えたおじさんが、「お神酒だぞーーー、はい、一口呑んで」とヤジキタスタッフ一人一人にお酒を振る舞ってくれた。
その味は、じわっとココロとカラダをあたためてくれた。
この地域に獅子舞がしっかりと受け継がれ、庶民の芸能として親しまれている様を感じた。

 

脈々と受け継がれるそのヒケツは一体どこにあるのだろうか?
ワタクシ自身の20代を振り返ると、カラオケやらゲームやら、友達との語り合いやら、恋やらに夢中になり、地域の祭りや伝統などには目も向けなかったように思う。
そのアタリは、団長の中道研一さんにとってはどうなのだろうか?
思い切って伺った。
「たしかに、カラオケも楽しいし、遊びもしたい。でも、一年に一度のこの時期に獅子舞に集中するのは、自然のコト」という。
朴訥と、力強い眼差しでしっかりと受け答えする中道さんの姿がスゴく印象に残る。

 

 

 

 

 

長い歴史と伝統がある獅子舞。
それを受け継ぐ若者は、祭りに向けて舞や囃子の練習をし、また次の世代へと伝えていく。
年長者から若者へ、親から子へ、先輩から後輩へと。
それをしっかり伝えてきているからこそ、今もかわらずに、祭りで獅子舞が披露されているのだ。
人々がこの獅子舞を地域の宝として、しっかり守り伝えているのだ。

 

地域において、人と人との結びつきがどんどん希薄になるなか、ココ射水には、富山には、人と人との絆が、確かに生き続けているのを感じた。

 

今回の旅を通して、人間にとっての本質的なコト、かけがえのない大切な何かを感じ取ることが出来たように思う。

 

じんわりあたたかい気持ちになった、そんな充実した旅を終えたワタクシは、旅をする前よりも、少しだけ幸せになった気がしていた。

 

 

 


祭りの帰り…「富山ブラック」を堪能