宮城県牡鹿郡女川町、復興に込めたチカラ|旅人:井門宗之

2012-08-10

 

 

佐々木「井門さん、女川行きませんか?

 

 

宮城県牡鹿郡女川町。
宮城県東部、太平洋に突き出た牡鹿半島の付け根に位置するここは、
宮城県内の四大漁港の一つでもあり、
カキやホタテ、ギンザケなどの養殖に加え、サンマなどの沿岸漁業も盛んな町だ。
そしてこの町も東日本大震災では甚大な被害を受けた。
震災による津波で、女川は町の8割が壊滅したとも言われている。
この町の名前がディレクター佐々木君から出てきたのは、
ごくごく自然の事だった。
佐々木君は震災後に何度か女川に来て、
災害FMのスタッフや現地の人達と交流を深めてきたのだ。
その縁でTwitterでは僕もその繋がりの輪に何となく入れてもらっていたのだが…。

 

 

井門「そうだね、会いたい人達ばかりだね。 


いや、会いに行こう。

 

 

というわけで今回のYAJIKITAは会いたい人達に会ってきました(笑)
たまにはね、そんな東北応援SPがあっても良いのかなって。
ただ僕自身、女川へ行くのは初めて。
しかも作家のコバヤシ氏もカメラのテツヤも被災地への取材自体が初めて。
期待と不安が入り混じって…と言うと月並みな表現になっちゃいますけど、
色んな気持ちを胸に、我々は女川へ向かったのです。

 

 

 





 

 

今回のテーマは『宮城県牡鹿郡女川町、復興に込めたチカラ』。

力強く立ち上がる女川の今を取材しようと。
女川で暮らす方々や女川出身の方の声を聴こうと。
そして女川の“今”を聴いたリスナーさんに、この町を訪れに、
この町の人に会いに来て貰おうと考えたのだ。

 

旅のスタートは女川町地域医療センター前。 


通称「輝望の丘」。

 

当日は佐々木君の運転する車で女川へ来たのだが、
佐々木君が「お、町に入りましたね。」と言うまで女川の中心地に入った事に気付かなかった。
それぐらい、港の近く、中心地だった場所は何もなかった。
建物があった場所は、ほとんどが更地に整備されていたのだが、
輝望の丘からの風景の中には、
4階建てほどのコンクリート製の建物が横倒しのままになっていたりする。

 

この輝望の丘は高台にあり、高さも20mぐらいだろう。
しかし震災の津波はこの高台も飲み込む勢いで押し寄せた。
事実この高台にある地域医療センター1階の190cm部分まで波は到達したのである。

 

 

 



 

 

この丘からの眺めを見て、
立ち上がる過程でどれだけの踏ん張りが必要だったのか。
どれだけの努力をしてきたのか。頭の中に色んな言葉が浮かんできた。
ここからの景色を軽々しく言葉にして良いのだろうか…と。
しかしそう思わせる風景は、まだまだ東北にはあるのだ。

 

「きぼうのかね商店街」








 

 

我々は「輝望の丘」を一度離れ、復興商店街でもある「きぼうのかね商店街」を訪れた。
津波によって流された3つの商店街から、50店舗が集まり開かれたこの商店街。
2012年4月29日にグランドオープンを迎え、数多くのお客さんで賑わいを見せている。
商店街の入口にはこの商店街の由来が記されており、そこには…

 

「きぼうのかね」とは、女川町民なら誰もが聞いたことがあるJR女川駅前にあった『からくり時計』の鐘です。駅舎とともに流された4つのうち、1つだけ瓦礫の中から発見された鐘を掲げ、『きぼうのかね商店街』は女川の再出発を高らかに宣言します。

 

そんな風に書かれてあった。

我々は女川町観光協会副会長:阿部喜英さんにお話しを伺った。

 

 

 





 

 

 

井門「震災前の女川はどんな町だったんですか?」

 

阿部「やはり漁業の町でしたね。養殖などもさかんでした。
ただ津波で港もやられて、震災直後はほとんどがダメになったんです。」

 

井門「今はどのくらい戻ってきているのですか?」

 

阿部「はい、ホタテの水揚げも始まりました。
いやぁ、…本当に良かったです…。
……。
携わっていた人達の気持ちを知っていただけに、
喜びもひとしおです。」

 

 

この「きぼうのかね商店街」には50店舗が軒を連ねている。
仮説商店街とは言うものの、木造の商店街はログハウス風で随分とお洒落な雰囲気だ。
この場所はもともと女川高校のグラウンドにあたる。
津波により町の8割が流出した女川町。
わずかに残った土地は商店街よりも仮説住宅…
しかし多くの方の尽力により、この場所で商店街再建のめどが立ったのだ。

 

 

阿部「4月29日に本格的にオープンしまして、
飲食店も含めて色んなお店が入ってます。
まずは皆さんに来て戴きたいんです。
そして商店街の人達と話しをしてみて下さい。
地元の人にぜひ話しかけて下さい。
震災の話でも、商店街の人間は話してくれますから。」

 

井門「僕らもこれから昼食を商店街で食べようと思っているんです!」

 

阿部「ぜひ!これを聴いてる方にも商店街へ足を運んで戴ければ…そう思います。」

 

 

 


阿部さん、ありがとうございました

 

 

テツヤ「本当に色んなお店が入ってますね。」

 

コバヤシ「ほら、眼鏡なんかを扱うお店もあるね。
お米屋さんや雑貨屋さんなんかも。」

 

佐々木「この商店街が出来たおかげで、
地元の方々も遠くまで買い出しに出掛けなくて済んだんですね。」

 

井門「そして、ここが佐々木君イチ押しの三秀だ!」

 

 

 



 

 

 

「きぼうのかね商店街」の中にある食事処「三秀」。
ここは中華をメインとするお店なのだが、
僕の周りで女川との関わりのある人間はこぞって「三秀で飯を食え!」と勧める。 


何よりもこちらの「盛り」が凄いというのだ。 


そしてその「盛りの凄さ」は「女川の心意気」なのだとも教えてくれた。
佐々木君は既に「三秀」経験者というので、
お勧めの「焼肉飯」と「餃子」を試してみる事に。
とは言え話を聴いてちょっと怖くなったので、メニューにある「半」を頼む。

 

 

佐々木「“半”なんて頼んだら○○さん達に怒られますよ!」

 

井門「そういう君だって“半”じゃないか!」

 

テツヤ「じゃ、じゃじゃじゃじゃあ、僕はノーマルで行きます!」

 

親分「半ラーメンもいってみっか。」

 

井門・佐々木「アワワワワ…。親分が三秀をアレしちゃう気だ…。」

 

 

待つことしばし。
良い匂いとともに運ばれてきたのが、こちら!

 

 

 



 

 

「半」でもかなりのボリュームなのに、
なんと「半ラーメン」で300円ですよ!
「半ギョーザ」で250円ですよ!
ああ…いまこの原稿はお腹を空かして書いてるので、
何故あの時「半」を頼んだのか悔やまれる(笑)
焼肉飯は、確かにこってりしてはいるが甘味噌の味付けが絶妙!
くっ…思い出しただけで腹が減る…。
まだまだ試したいメニューがいっぱいなので、次回はノーマルでいきます!

 

 

 





 

 

 

ちょうど取材をした日は日曜日で、
商店街でも様々なイベントを行っている最中でした。
そういや観光協会副会長の阿部さんも、
今日は大型バスを3台も駐車場に誘導してきたよーって、
疲労感と笑顔で良い顔されてたっけ。
商店街の入口付近ではチェーンソーで木像を削り上げるパフォーマンスに人だかりが出来、
そうかと思うと、とあるお店の前では初老の男性がギターを弾いてのんびり歌っている。
ん?何か楽しそうな声がするなぁ。
声の先へ向かうと、そこにはシャボン玉遊びに熱中する子供達の姿。
大小様々な大きさのシャボン玉が、光に反射して輝いている。
男の子が“ふーっ”と吹くと、瞬間降り注ぐ無数のシャボン玉。
女の子達は大喜びで、その中を駆け回る。

 

 

 



 

 

――当たり前の風景が、こんなにも愛おしく感じる。
何だか不意に泣けてくる。
この風景を丸ごと心に刻みつけたくなって、
不意にカメラのシャッターを押そうとすると、
YAJIKITAスタッフ全員が同じことをしていた(笑)
「やれやれ」といった表情で笑う僕らと、
いつまでもシャボン玉ではしゃぐ子供達の姿。
その笑い声は「きぼうのかね商店街」と、女川の空に響き渡っていたのでした。

 

 

 



 

 

続いて我々は「女川さいがいFM」へ。



女川さいがいFM

 

 

 

「輝望の丘」に建てられたこちらの災害FM局は、
臨時災害FM放送局として、昨年の4月21日から24時間体制で放送を実施。
生活に必要な情報を発信し続けてきた。

 

 

 





 

 

僕も自分の生放送で「女川さいがいFM」と電話を繋いだり、
佐々木君とも縁の深い場所でもある。
パーソナリティーの“たいえつさん” こと木村太悦さん、
“さいじゅちゃん” こと宮里彩佳さんにお話しを伺った。

 

 

 



 

 

 

井門「震災から1年と5カ月、放送内容も変化してきたと思いますが…。」

 

さいじゅ「最初は安否情報や救援物資の情報がほとんどでしたが、
勿論いまも生活に必要な情報は届けながら、
でも生放送は“楽しく!”を思いながら喋るようになりました。」

 

たいえつ「それが今と震災直後で何よりも変化した部分でしょうか。」

 

 

ちなみに“さいじゅちゃん”は妖艶魅力の持ち主、 


“たいえつさん”はプロもうなる良いの持ち主である。

 

 

 



 

 

さいじゅ「私もともと放送とかの仕事とは全然関係ない事をやってたんです。
女川町の事もほとんど知らない事ばかりでした。
でもここで放送をやらせてもらって、どんどん女川の事を知っていったんです。」

 

井門「そうか…という事は、ここでDJをやる事で、
女川の事をもっともっと好きになれたって事ですよね?」

 

さいじゅ・たいえつ「はい、それはありますね!」

 

井門「でも、さいじゅさん達と同じ事を感じている人達がいるかもしれませんよ。」

 

さいじゅ「?」

 

井門「お二人と同じ様に、今までは町の事をそんなに知らなかった地元の人も、
この災害FMのお陰で地元の事を知るようになったはずです。
“知る”って“好きになる”の第一歩でしょ?」

 

たいえつ「そう感じてくださる方がいれば幸せですね~。」

 

 

実は「女川さいがいFM」は2カ月のお休み期間を経て、引越しをした。 


この「輝望の丘」に越して、建物の広さも何と3になったのだ!

 

 

井門「凄いじゃないですか!」

 

さいじゅ「って言っても、2坪が6坪になっただけですけど(笑)」

 

 

機材ひしめく「女川さいがいFM」。
でもここには沢山の想いが、計り知れないほどに詰まっている。
その想いの引き出しは、まだまだ尽きる事は無い。
ここから届ける「情報」が、
これからも「笑顔」となって返ってくる事を願わずにはいられない。

 

 

 



 

 

そうそう、実はこの時に何と井門が逆インタビューされてしまったのだ(笑) 


この人に聞いてみっちゃ」というワンコーナーなのだが、
リクエストまで流して貰えた…(良かったのかしら??)

 

 

さいじゅ「井門さん、随分と昨日は東北のお酒や肴を堪能されたそうで?」

 

たいえつ「情報はしっかり伝わってきていますよ(邪笑)」

 

井門「えっ!?いやぁ、その…まぁ、たしなむ程度ですよ!ひゃっひゃっひゃっ。」

 

「女川さいがいFM」でまさかの逆インタビューを受け肝を冷やした井門P。
それでもね、物凄く楽しかったんだ。
“たいえつさん”も“さいじゅちゃん”も、本当に有り難うございました!
そして今回ご協力戴いた「女川さいがいFM」の関係者の皆さんにも、
この場を借りて御礼を言わせて下さい。本当に感謝です。

 

 

 



 

 

 

佐々木「井門さん、いよいよあの蒲鉾の本丸ですよ!」

 

井門「あぁ…お土産いっぱい買わないと!

 

コバヤシ「二人共ずーっと言ってるけど、
蒲鉾の美味しいヤツってだいたい味は一緒でしょ?」

 

井門・佐々木「はぁ!?何言ってんの!?
髙政の蒲鉾を一口でも食べたら、そんな事は口が裂けても言えないですよ!」

 

コバヤシ「ショボ--(´・д・`)( ´・д)(  ´・)(    )(・`  )(д・` )(´・д・`)--ン

 

 

という訳で向かった先は、僕も愛して止まない「蒲鉾本舗・」さん。
こちらは女川に拠点を置く水産加工メーカーであり、
女川の復興を牽引する地元の希望の星なのであります。
我々は昨年の9月に完成したという新工場と店舗:万石の里へお邪魔した。

 

 

 





 

 

 

コバヤシ「ちょっと、ここ凄いね!なんて綺麗なんだろう…。」

 

佐々木「店舗が新しいってのもありますけど、
いろいろと仕掛もあるんですよ(笑)詳しくはあの人に聞かないと!」

 

 

この日も一行が到着した時間帯に団体客が押し寄せていて、
店舗の蒲鉾がまぁ飛ぶように売れていく…。
髙政の素敵な所は、試食を惜しげもなく店頭に並べている所だ。
“味見をしたら、もう買いたくなる!”という絶対の自信があればこそだと思うのだが、
確かに僕が初めてここの蒲鉾を食べた時の感動ったら、あなた…。

 

 

テツヤ「やばい!ここの蒲鉾、メッチャ旨いっす!

 

 

育ち盛りの24歳、テツヤが感動する蒲鉾。
テツヤよ、そりゃあ感動するだろう。
とは言え僕も本店に来たのは初めての事。
よくよく商品を見ていると、ここでしか買えない物も沢山あるぞ…。
あれ?店舗の片隅に焼肉を焼く様な網のテーブルがある?
家族連れが何やらワイワイと…何かを焼いている!?

 

 

 



 

 

高橋「いやぁ、いらっしゃいませ!わざわざ有り難うございます!」

 

僕が女川で会いたかった人の中の一人。 


目の前の恰幅の良い男性こそ、高政の取締役:高橋正樹さん
高橋さんに地元にかける思いと、高政の旨さの秘密を伺う事にした。

 

高橋「コホンコホン、あっ、ごめんなさい。今日はどうも喉の調子が悪くて…。」

 

井門「いえ、調子の悪い時にこちらこそすみません。
そんなに大きな声じゃなくても良いですから。」

 

高橋「コホコホ、そうですか、助かります。」

 

佐々木「では回してますので、いつでもOKです!」

 

井門「それではここで高政の取締役:高橋正樹さんにお話しを伺いましょう。
高橋さん、宜しくお願いします。」

 

高橋「(めっちゃエエ声で)よろしくお願いします!

 

一同「声、出んのかよ!

 

 

高橋さんはおじい様の代から高政の味を受け継ぐ、髙政の希望の星。
どんな時でも熱意とユーモアを忘れる事はなく、
社員達から慕われている様子がすぐに窺える。

 

 

井門「震災後はすぐに工場の稼働をスタートさせましたよね?」

 

高橋「えぇ、女川は漁業の町です。
そんな中でウチみたいな水産加工の工場が一日も早く動き出せば、
町の皆が希望を持てると思ったんです。
女川にいて、町の8割が流されて、どうしようと思っている町の人に、
まだ女川は大丈夫だと思って欲しかったんです。」

 

井門「この万石の里は…」

 

高橋「もともと震災前から建設計画があって、動き出していたんです。
ですから震災があって早くここをオープンさせようとの思いは強かったです。」

 

井門「ここから女川に何か出来るんじゃないかと、考えてらしたんですね。」

 

高橋「祖父から言われ続けていたんですが、
企業は地元に恩返しをしなくては…、と。地元あっての企業だと。」

 

 

 


高橋さんにお話しを伺いました

 

 

 

高橋「新しい工場も凄いですよ! 


オール電化で二酸化炭素排出量ゼロ
こういう工場では業界初です。
地元の環境を何よりも考えた工場にしているんです!」

 

 

続いて我々は工場見学もさせて貰った。

 

 

 





 

 

高橋「おやおや井門しゃん
良い匂いがしてきましたよぅ↑(順平さん風)キャッキャッキャッ」

 

佐々木「おやおや井門しゃん
また食べ物ですかぁ↑(順平さん風)キャッキャッキャッ」

 

井門「2人ともお黙りっ!!(笑)」

 

 

高橋さんと佐々木君のコンビネーション、抜群だ…。
笑わせられながら、蒲鉾作りの行程もしっかりと説明してくださる。

 

 

高橋「ここは笹かまを串に刺して、焼きつける場所です。
日持ちさせる為に出荷する際は一度冷やさないといけないのですが、 


実は笹かま焼きたて旨いんですよねぇ~。」

 

井門「あっ!お店で家族連れが焼いてたのって…まさか!」

 

高橋「そうです!お店では笹カマを炙って食べる事が出来るんです!」

 

佐々木「奥さ~ん、知ってるでしょ~う?
ゴルッチでぇ~ございます!」

 

佐々木・高橋「笹かま食わねぇか!?

 

佐々木「子供達もおいでぇ~!」

 

佐々木・高橋「笹かま焼くぞぅ~!

 

井門「お黙りっ!!」

 

 

しかし笹かまの出来たてかぁ…。
高橋さんは後で我々にも体験させてくれるという。
改めて工場の中を覗いてみると、まさにフル稼働といった感じだ。

 

 

 





 

 

 

高橋「工場だけでも100人以上が働いています。
震災後、この町で雇用を生み出したかったんです。」

 

 

女川の皆さんにとって、何と頼りがいのある事だろうか。
町の為に、大好きな女川の為に、高橋さんは日々前に進んでいるのだ。

 

 

 





 

 

我々は店舗スペースに戻って、いよいよ炙り体験へ。
串に刺さった笹かまを渡され、目の前の網の上に乗せる。
徐々に立ち上る何とも言えない香ばしい匂い…。

 

 

高橋「笹かま用にウチで作った調味料があるんです。
もちろん焼き立てをそのまま食べても旨いんですけど、
これをかけると更に旨くなるんですよ!
あっ、そろそろ焼けましたね!」

 

 

 





 

 

 

いよいよ、この瞬間である。
焼き立てのふっくらした笹かま…。
ぷくぷくしているし、焼き立てで熱々なのは分かっている。
分かっちゃいるけど、もう我慢出来ん!!いっただっきまーす!!

 

 

井門「もぐもぐ…あっちぃ!! 


でもうまーーーーーい!!!

 

 

 



 

 

 

ふっくらしたすり身の甘さは、まるで海そのものの甘さのよう。
しかも徐々に広がる旨みの量が半端なものでは無い!」

 

 

 





 

 

高橋「あっ、ちょっと待って下さい!
笹かまも旨いんですけど、プチ揚げもちょっと炙ると最高に旨いんです!」

 

佐々木「えっ!あの普通に食べても激旨なプチ揚げを、炙る…じゅるり。」

 

 

プチ揚げとは、コロンとした一口サイズのさつま揚げの様なもの。
しかし中身は茶豆入りとか、玉ねぎ入りというこれまで経験した事のない具材。
佐々木君の言う通り、普通に食べても旨いのだが…。

 

 

高橋「はい、このふっくらした所を爪楊枝でどうぞ!」

 

井門「いっただっきまーす!!」

 

 

 





 

 

 

…僕はびっくりしました。
この世にある蒲鉾でこんなに旨い物があっただなんて…。
おぉい!なんでここにビールが無いんだ!?(笑)
しかし店舗販売だけでも相当のバリエーションがありますね…。

 

 

高橋「妥協は絶対にしたくないんですよ。

だから企画も色々と考えます。
震災があったからこの程度の味で良いだろう、とか、
震災があったから味の種類も少なくていいや、では絶対にダメなんです。
むしろ美味しい物をどんどん作っていかなきゃならない。
毎日の様に工場の人間と企画のすり合わせです。
職人達も必死でそれに応えてくれるんです。」

 

 

女川を心から愛する男の覚悟。
この町を前に進める為に、血の滲む努力をされている。
ちなみに髙政のHPには、放射能に関する髙政の取り組みについてのサイトがある。
どうしても気になるという方はご覧下さい。
髙政がどれだけ安全に気を配り、女川の魚を全国に届けたいかが分かる。
そしてHPをご覧になったら、ぜひオンラインで蒲鉾を購入してみて下さい!
僕がここで「旨い、旨い」言ってた理由がきっと分かるはずです。

 

 

 



 

 

佐々木「僕ら、相当買い込みましたね(笑)」

 

井門「だってホラ、親分がここの蒲鉾を愛しちゃったから。」

 

コバヤシ「気に入ったから、髙政もアレしちゃうよ!」

 

テツヤ「良いですねぇ、親分!アレしちゃいましょう!へへへ。」

 

 

 



 

 

車の後部座席を高政の袋で一杯にした僕らは、
最後に「イーガーFamily」という会の方を訪ねた。
この会は、東日本大震災で家や店や仕事を失った、
女川町在住の主婦有志が立ち上げた手作り好き主婦の会。 


お話を伺ったのは堂賀光枝さんだ。

 

 

 



 

 

 

井門「こちらではどんな物を作っていらっしゃるんですか?」

 

堂賀「布ぞうりを主婦が集まって作っています。
実は全国から集まった支援物資の中にはTシャツも多かったんですが、
中には着られない物もあったりして…。
その布を何とか有効利用出来ないものか…と考えたのがきっかけなんです。」

 

井門「という事はTシャツから布ぞうりを作られているんですか!?」

 

堂賀「はい、色合いなども考えながらなんですけど、 


やっぱり同じ物は作れないので、全て一点物です(笑)」

 

 

 



 

 

 

こちらで作られる布ぞうりは、1足作るのに3枚分のTシャツが使われたのだとか。
その組み合わせを考えるのも楽しいし、
何よりも被災した奥さま達が、ここで布ぞうりを作りながら、
少しずつ笑顔を取り戻していったのだという。
*当初は全国から集まった支援物資の中から作られていたのだが、
現在女川町は支援物資の受け付けを終了しているので、
廃棄予定の支援物資を使った布ぞうりの制作はしていない。

 

 

堂賀「最初は家から出られない人もいたんです。
それが少しずつここで皆と話したり、布ぞうりを作ったりする事で、
完全では無いけど元の表情を取り戻せてきたんです。」

 

 

“拠り所”。
そんな言葉が浮かんできた。
高政の高橋さんにしても、イーガーFamilyの堂賀さんにしても、
勿論、おながわ災害FMも、女川観光協会も、
まず女川の皆さんが拠り所に出来る場所を作らなくてはと考えたのだ。
そして人は“拠り所”が出来て初めて心強くなる。
文字通り、「心」が「強く」なるのだ。
人の手によって少しずつ、心を揉み解して温めて、
温まった心同士が拠り所を見つけて集まって、それが前に進む力になって。
そうして人は、皆で強くなっていくのだ。

 

 

 


堂賀がさん、ありがとうございました

 

 

 

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その場所の話をする時に、
一度でも行っていれば、そこで出会った方々の顔が浮かんでくる。
それだけで、気持ちは全然違ってくる。
女川に行けて、会いたかった人達に会えた今回のYAJIKITA。
僕はこれから「おながわ」と口にする時、
必ずあの人達の顔が浮かんでくる。
そして、それがきっと大切な事なのだ。

 

“僕が行ってラジオで話す事で何かが変われば”…では無い。
あそこに行って女川の方々と話す事によって、僕が変わったのだ。

 

近いうちにまた寄らせて下さい。
今度は「おかせい」の海鮮丼、大盛り食べにいかないと。
その時は一緒に食べましょうね。
「これ最高に旨いんですよねぇ~!」
って笑顔、また見せてください。

 

 

 



 

 

最後に私信を一言だけ。
某ちゃん、会えてよかったです。 
またおっさんの話に付き合って下さい。