東京発どこ行くツアー 築地編|旅人:井門宗之

2012-10-04

 

東京発どこ行くツアー ぶらりマップ

 

 

井門「東京の象徴的な場所ねぇ…。」

 

慶吾「やっぱりさ、食べ物がいっぱいある所で…築地とか!?」

 

一同「あぁ…。なるほど。」

 

 

という鶴の一声で決定した(してない)今回の旅の目的地。


そう、2014年には市場の機能も豊洲に移転する事になっている築地であります。
築地と言うと皆さんはどんなイメージをお持ちだろう?
魚河岸、海鮮丼、卵焼き、ターレ…(笑) etc.
やはり市場に関するイメージが何と言っても強い。


そして市場と言えば、何と言っても朝が早い
今回の旅は作家が新戦力の池田さん(女性)。


彼女は笑顔で「じゃあ、集合は朝7時頃ですね♪へへ。」と仰った。
都内ロケにして早朝。
しかしその朝の築地で一行が目にしたのは、驚きの光景の連続だった。

 

 

 





 

朝日も眩しい築地市場正門前。
朝7時頃と言えば築地で働く人にとっては遅い時間になるが、
それでも市場の活気は途絶える事は無い。
目の前をトラックが何台も通り過ぎ、
出入りする市場人の姿も活気を帯びている。
一瞬“あぁ、場内に入っちゃいけない空気なのかなぁ”とも思うのだが、
市場入口では警備の方が“はいどうぞ~”と市場内地図を配っているではありませんか!?


しかも外国人観光客にはちゃんと英語での対応…。こりゃ慣れてる。

そうなのだ、ここ築地で目立つのは外国人観光客の姿。
この日、都営地下鉄大江戸線「築地市場」駅を降りると、
既に観光を終えた外国人客すらいたほど…。凄い。
ここ築地は外国のガイドブックにも載るほど、メジャーな場所となっている。
一時はそのマナーの悪さが問題になっていたが、
現在は見学出来る場所も規制がかかり以前ほどではないそうだ。
しかしもちろん築地市場は観光地では無い。
あくまでも日本全国から集まる新鮮な海産物、生鮮品等が集まる、
働く男の神聖なる場所。(とは言い過ぎかも?)
ここは我々YAJIKITAも粛々と取材を進めねば、働く男達に失礼。
基本的に夜型の人間が多い放送業界において、
今回のYAJIKITAの布陣は珍しく朝型人間が揃った。

 

 

横山「いやぁ、朝日が眩しいね。朝日新聞の前だけに!うふふ。」
絶好調である。
仏の横山over50は最近はむしろ夜より朝の方が調子が良いらしい。
かく言う井門Pも朝生担当なだけに無意味に朝は得意。
作家の池田さんは初めてのYAJIKITAロケだけに、緊張の面持ち。
カメラの橋本君も築地場内は初めての経験…と言う事で興奮気味だ。
傍から見れば何の仕事をしている集団なのかさっぱり分からない一行。
*それはどの地方に行ってもそうなのだが…。
そんな我々は、今回ももちろん強力な助っ人をお呼びした。


東京都中央卸売市場 築地市場管理課の江尻正人さんであります。

 

 

 



 

 


江尻さんは昔からこの築地の表情を見てきた方。
昔の築地がいかに賑わっていたかを、嬉しそうにお話ししてくれた。

 

 

江尻「朝日新聞から正門を抜けて、この広場まで大体100mくらいなんです。
その間にターレやトラックや人が荷物を上げ下げしてますでしょ?」

 

井門「今日も物凄い混雑している様に感じます…が?」

 

江尻「ははは(笑)大体築地に荷や人が集まったピークは、
昭和最後~平成初期と言われています。」

 

井門「いわゆるバブルの時代ですよね?」

 

江尻「あの頃はあまりの混雑で、


この100m程を歩くのに1時間掛ったんですよ。」

 

 

これが東京の台所の凄さである。
あのリゾート地に匹敵する混雑ぶりが、早朝の時間に毎日繰り広げられていたのだ。
全世界から物が集まり、東京のあちらこちらに散っていく。
ここで働いていれば、そりゃ目利きの腕も養われるというものだ。
しかし江尻さんはそう言うものの、今日の混雑だってなかなかではないだろうか…。

 

 

江尻「例えばそうですね…最盛期はね、移動しようと片足を上げるでしょ?」

 

井門「はいはい。」

 

江尻「下ろす先があっという間に無くなってしまうんです。」

 

井門「え!?」

 

江尻「片足を上げると、そのスペースに荷物が置かれたり、
ターレが突っ込んできたりね、そりゃあもう陣取り合戦が凄まじかったんです。」

 

 

な…なるほど、そりゃ凄いわ(笑)
とは言っても築地場内の広さは途方もない訳で…。
なんせ昭和62年までは荷物を入れる為に貨物列車の引き込み線もあったぐらい。
その当時のホームの跡なんかもまだ残っているんですよ!

 

 

 



 

 


残念ながら場内の写真撮影は出来なかったのだが、
あの活気は実際に肌で感じると全然違う。
正直、ここまで凄いとは思わなかった。
しかも市場の活気がひと段落した時間帯なのにも関わらずだ。

 

 

井門「今の築地をご覧になってどんな事を思われますか?」

 

江尻「やはり昔に比べて、活気が無くなりました。
寂しくなったっていうのが実感ですかね。
でも豊洲に移転してもこの良さは残していきたいと思っています。」

 

 

 



 

 


江尻さんと別れた我々は、場内から場外をぶらり。
その場外に出てすぐの場所に、大きな鳥居を持つ神社があった。
名前を波除稲荷神社と言い、この前を往来する市場人達は必ず鳥居に一礼する場所だ。

 

 

 



 

 


こちらの御由緒はこうだ。
「今から350年程前、この築地一帯は一面の海だった。1657年、明暦の大火後、築地の埋め立て工事が行われたが、荒波の影響で工事は難航。その最中のある晩、光を放ち漂う御神体が見つかり、1659年、現在地に社殿を建て祀った。その後、波が収まり工事が順調に進んだことから、以降厄除けの神様として信仰を集めることとなった。」

 

なるほど、海の物を扱う築地という場所にはとても大切な神社なのだろう。
ところがここにはもっと築地っぽい物があるのです。

 

 

横山「ねぇ、中に面白い形の塚があるんだけど…。」

 

池田「そうなんです。社殿の横にずらっと並んでますよ!」

 

 

 

 

 


ここには築地ならではの供養塚が祀られていた。
扱う物への感謝の念と市場人達の想いが詰まった場所。
なるほど、目の前を通り過ぎる人達が必ず一礼していった理由が頷ける。
そこからさらにぶらりしていくと、日比谷線・築地駅の方面にあるのが、


築地の街を見守るようにそびえ立つ築地本願寺
関東大震災後に再建されたこの建築は、不思議な外観のインド様式の石造り。
これは東京大学教授の故・伊東忠太博士の設計によるものであります。
建物内も空想上の様々な生物のレリーフなどが飾られていて、
築地に摩訶不思議な色を落としている。

 

 

 

 

 


築地は面白いなぁ。
市場だけじゃないし、場外の商店街だけでもない。
すぐ近くは銀座だし、築地は東京の中でも何とも不思議な場所なのであります。
そんな事を思いながら場外の商店街をぶらり。






 

 

池田「そろそろお腹も空く頃じゃありませんか?
新鮮なお魚もいっぱい見た事ですし、おすし。」

 

井門「おすし?」

 

池田「あれ、何か勝手に口から出ちゃいました♪へへ。
やっぱり築地と言えばお寿司でしょう!?
老舗で良いお店があるんで、そこに行きましょう!」

 

 

この辺りが女性作家のキメ細やかさである。
取材時間を逆算し、お腹が空く頃合いにお寿司屋さんへの取材を入れる…。
ロケに行って取材時間が押して、
結局昼ごはん抜きになるミラ○ルスケジュールとは一味違う。

 

 

 



 

 


場外を歩けば、丼屋さんだったり玉子焼き屋さんだったりお寿司屋さんだったり、
右も左も胃袋を誘惑する店がいっぱいである。
なんせ井門もちょっと出来た待ち時間に(10分程)、
思わず串に刺さった玉子焼き(100円)の誘惑に負けましたもの。
知らない間に玉子焼き屋さんもそんなメニューを出してきたんですね。
串に刺さった玉子焼きは出汁が効いててふわふわで、
ちょろっとおろし醤油がかけられていて、もうウマーでした。

 

そんな場外で少し路地を入った場所にあるのが、
「創業四百年 紀之重 鮨」。
お店はカウンターのみの簡素な造りなのだが、
入った瞬間に不思議と“落ち着く雰囲気”を醸し出している。
お寿司屋さんなんだけど、緊張しなくて済む…と言いましょうか。
勿論店内にはお勧めのお品書が貼られていて、
どれもこれも一級感は漂っているのですが…。

 

 

武内「ははは(笑)ウチは店舗にお金かけてませんから!


肩ひじ張らずに本物を食べて貰いたいってのが信条。


その代わりネタお金をかけてます。
その分、ちょっと真似出来ない価格にはなってますよ!」

 

 

そう言って笑顔で我々を迎えてくれたのが、


紀之重の看板女将:武内正恵さんだ。
チャキチャキの明るさは店内をからっと明るくしてくれる。
この人懐っこさが、きっとお店の居心地を良くしているのかもしれない。

 

 

井門「もともとは仲卸なんですよね?」

 

武内「はい。なので常に良いネタは仕入れられるんです。
だったら鮨屋も自分達で…という事でお店を開いています。」

 

井門「自慢のネタは?」

 

武内「マグロなんかは生マグロを他店で真似出来ない価格で出してます。
高級な鮨屋なら一貫三千円くらいのものをランチの中に入れていたり…。」

 

井門「!?」

 

武内「うちの板長の心意気も入ってるんですよ(笑)」

 

 

気がつけば目の前にはもくもくとネタを仕込む板長の姿。
短く刈りあげた髪、鋭い眼光…これぞ職人という風情を醸し出している。


板長の名は柳博史さん

 

 

武内「本人は意外とお茶目なんですよ(笑)」

 

柳「(ウィンク)」

 

 

ウィンクされた―――!!!!
そうか、お店の居心地良い雰囲気はこの人も作っていたのですね(笑)
という訳で早速「紀之重」自慢のランチの握りをお願いする事に。

 

 

柳「ウチはネタの鮮度をそれぞれ保つ為、


ランチとは言え、一貫ずつ握ってお出ししています。


江戸前の鮨を味わって頂く為に、シャリも赤酢の酢飯。
ですからシャリにちょっと色が付いているでしょう?」

 

 

 



 

 

柳さん曰くもともと鮨は江戸時代のファストフード。
気の短い職人がパッと立ち寄ってパッと食べる物で、
大きさも一貫がお握りみたいな大きさだったそうな。

 

 

柳「関西からは熟れ鮨とか鮒鮨とか入ってくるでしょ?
でもあれは加工に時間がかかる。
気の短い江戸っ子には煮たり焼いたりのひと手間の方が、
時間も短く済むんで性に合ったんだと思います。」

 

 

蛤を煮たりアナゴを蒸したり…、
江戸前の魚を美味しく食べて貰う為の職人の工夫が、鮨の文化を醸成させた。
技術は人から人へ受け継がれ、YAJIKITAのPの口に運ばれようとしている(笑)

 

 

柳「ランチで付けている“あら汁”もどうぞ!
お野菜を沢山食べられる様にしているウチの名物です。」

 

 

 



 

 


パンッと手を叩き“それでは握っていきますよ”の合図で始まった魅惑のお鮨タイム。
皆さんには画像で少しだけ堪能して頂きましょう!

 

 

 

根室のサンマ三重のヒラメ

 

鹿児島錦江湾から直送ナミクダヒゲエビうまさに悶絶する井門

 

 

あっという間の10貫だった。
だけどそのどれもが今まで食べた事の無い様な、濃厚なネタ…。
口に入れた瞬間に口の中が驚くほどの衝撃なのだ。
しかもそのネタをひとつひとつ丁寧に、しかも簡潔に説明してくれる板長。
知らない内に、ちょっと魚の勉強も出来ちゃうんですよね。
あぁ…なんで仕事で来てしまったんだろう(笑)

 

 

武内「(笑)今度は夜来て下さいよ!一緒に呑みましょう!」

 

井門「ぜひお願いします!」

 

 

明るい女将と少しお茶目な板長。
そして間違いの無いネタの数々。
僕らの取材はランチタイムが始まる前に終わったのだが、既に店の外は行列していた。
夜も予約がいっぱいとの事で、もし電話をするのなら1週間前の予約が確実との事。
それでもここのお鮨は一度食べる価値ありです!

 

 

 



 

 


武内「そう言えばこの後はどこかお店行かれるんですか?」

 

池田「はい、あの長靴専門店の伊藤ウロコさんに…。」

 

武内「伊藤ウロコさん行くんですか?


あそこは築地エルメスよ!ねぇ、板長?」

 

柳「へい、間違いありやせん!」

 

 

イケメン板長の目もキラりと光る(笑)
老舗の多い築地の場内外、しっかりと横の繋がりも強いのだろう。
しかし築地のエルメスて…。
我々は再び場内に戻り、長靴を専門に扱う【伊藤ウロコ】さんにお邪魔した。

 

 

 



 

 

お話を伺ったのは専務取締役の伊藤嘉奈子さん
魚がし横丁は主に定食屋さんや小さな雑貨店などが並ぶ、場内の横丁商店街。
卸売市場の中は、朝9時から一般の方が入ることができますが、
この魚がし横丁は、朝5時半から散策する事が出来る。
なのでまだ早い時間から、有名な定食屋さんなどは行列する程なのであります。
*こちらもあまり観光客がワイワイする場所では無いと、個人的には思っています。
そんな中にあって、この伊藤ウロコさんは長靴専門店。

 

 

伊藤「ウチはもう100年以上店やってますからね!
色んな商品がありますけど、やっぱりオリジナルの長靴が人気ですよ!」

 

 

 



 

 


伊藤「築地市場は魚の脂で足元が滑るんですよ。
ですからゴム長靴が重宝されます。
働いている方が多く買っていかれますけど、お土産も沢山置いてますよ!」

 

 

 



 

 


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築地市場は人の熱気で市場全体が“生きて”いた。
そのエネルギーは凄いもんで、
数時間ロケで訪れたスタッフがちょっとヘロヘロになる程だったわけです。
それでもここに来れば、いまの日本に元気が無いという事が嘘の様に思えてしまう。
確かに最盛期程の熱狂は無いのかもしれない。
でも“今の日本は元気が無い”という事を否定したくなる何かを、
この市場はしっかりと見せつけてくれる。
築地は働く人達の熱気が作り上げた街。
東京駅から地下鉄でわずか15分ほどで、この熱気に出会えてしまうのだ。
それを思うと、つくづく東京は不思議な町なのであります。

 

東京発どこ行くツアー。

さぁ、次はどこ行く?